「何?」
自分と同じくらい無愛想だと思う幼馴染を見つめていると、いい加減気になったのか、機体を整備する手を止めて睨まれた。
「…何でもない」
「何でもないなら見るな」
すげなく言われて、はぁ、とため息をつく。
別に少しくらい見ていたからと言って減るものでもないだろうに。
ソレスタルビーイングの初任務で久しぶりに再会したというのに、ほとんど話していない。だから、少し時間が出来たときくらい話したいと思っても構わないと思う。…ここならハロも見れるし。
「ため息をつくと幸せが逃げるぞ」
「知ってる」
視線を手元からそらさずに言われた言葉にもう一つため息が出そうになったので、慌てて飲み込んだ。
というか、刹那に言われたくはない。
「それ、私が教えた」
「そう、だったか?」
「そう。…忘れたの?」
疑問の声に、整備する手を止め、眉を潜める。
どうやら全然覚えていないらしい。別に、構わないのだけど。
「…覚えていない」
「そう」
「………その」
「何?」
「…いや、悪い」
ぶっきらぼうな言葉に、驚いてマジマジと幼馴染の顔を見る。
既に何事もなかったかのように整備に戻っている。
けれど、その手の動きはどこか精彩に欠けていて。
「あ」
「…っ!」
フェルトの声と、刹那の息を呑む声は同時。
何故なら刹那の指先が軽いミスをしたことに気がついたから。
すぐに直せる程度の軽いミス、けれども普段の刹那なら決してしないようなミスだった。
深々と、ため息をもらす刹那。
「………ため息」
「ため息も出る」
「幸せが逃げる」
「もう逃げた」
それもそうだ。悔しそうに整備を再開する刹那に、小さく笑ってしまった。