「………フェルト?」
「……うん。もうすぐ、だね」
「ああ…。もうすぐだ」
「…緊張、しないの?」
「してる。かなり」
「…全然分からない」
「ほら」
そう言うと、刹那はフェルトの手を掴んで心臓の上、丁度鎖骨の上辺りにのせる。
薄いシャツ越しの体温は高く、普段規則正しい筈の音は激しく脈打っていた。
もっとも、その欠片ほども刹那の表情には出ていないのだが。
「私も」
言って、フェルトは刹那の腕を自らの心臓の上に導く。
その行為に、刹那は一瞬焦り、僅かに腕を引きそうになったが、不思議そうに首を傾げるフェルトに小さなため息をついた。妙に発育のいい膨らみには触れぬよう、慎重に心臓の上を指先で触る。
彼女の心臓もまた、ドクドクと早いリズムを刻んでいた。
「緊張…するね」
「ああ…」
トクトクトクトク―――。
「無茶、しないでね」
「…ああ」
「…刹那は、無茶をするから…少し、心配」
「そんなものしなくていい」
「…でも」
「約束する。無茶はしない」
「…本当?」
「ああ」
いつもどおりの表情で、頷く刹那
「…分かった。信じる」
ふわりと笑ったフェルトに、刹那はただいつものように頷いて見せた。