「私の、家族ですから」
そう微笑んで、彼女は敵だった人に背を向けた。
それを刹那は偶然耳にして、背を壁に預ける。
「家族か」
それは確かにそうなのだろう。
幼い頃からソレスタルビーイングに所属する彼女は、その他の世界を知らないし、それ以外に大切なものも持っていない。
特にこの船に乗り込んでからは、希薄だった人との繋がりが深まっている。
それは良い。
確かに良い事に違いない。
人と接する事が苦手で、いつも無愛想だった彼女があんな柔らかい笑顔を見せるようになったのだ。それを喜ばないでどうするのだ。
………。
まぁ、家族っていうのは異性の対象ではないじゃないか、と。
そう思ってしまっただけだ。