「待っているの?」
「………」
フェルトの言葉にティエリア・アーデは無言で答える。
ティエリア黙して語らず、視線すらあわせない。
フェルトも殊更それを求めない。
ただ、見上げる。
2人並んで、見上げる。
暗闇の中で薄っすらと光る機体を。
「…この子は待ってる」
自分を動かす者を。
自分を扱いこなせる人物を。
待っている。
完成した、その日から。
「……私も、待ってる」
「………」
いつまでも、いつまでも。
ずっと、待っている。
彼が、現れるその日を。
ずっと、ずっと。
「……ああ。待っている」
初めて返った言葉に、フェルトはそっと視線をティエリアの横顔に移す。
彫刻のように整った横顔はずっと遠くを見ているようで、少し、寂しくなった。
だけど、きっと気持ちは一緒。
待っている私と、待っている貴方。
それから、この機体。
皆が待ってる。
皆が待ってる。
だから、早く帰ってきて―――。