細い面立ち。
 整った横顔。
 肩の上で揺れる真っ直ぐな紫の髪。
 いつもどこか睨みつける冷たい紅玉の瞳。
 まるで、成長が止まってしまったかのように、何も変わらない人。

「…変わらない、ね。貴方は」

 見上げた先の紅玉の瞳がゆるりとフェルトを捉える。
 目が合って、一瞬感じる違和感。

「…フェルト・グレイス。君は変わったな」

 すらりと伸びた身長は前よりずっとティエリアと近くて、長くゆるやかな桃色の髪は後ろでまとめていて、それが幼かった少女の印象をひどく大人に見せる。
 翡翠の瞳は昔よりもずっと物怖じせずにティエリアを見つめる。
 ひどく、真っ直ぐに。

「……貴方も、変わった」
「さっき変わらないと言わなかったか」
「…言った…けど」

 でも、目をちゃんとあわせて、気が付いた。
 ガンダムマイスターでもない自分達を見る瞳は、いつもひどく冷たく無機質で。それは、好きか嫌いかなんて次元の前に、人として存在しているか否かの問題。フェルト・グレイスという個人そのものに興味ないと言わんばかりの紅玉の瞳が、はっきりと翡翠の瞳を写したから…変わったのだと、気づく。
 外見じゃなくて、その、瞳が。

 少し、やわらかい。

「やっぱり、変わった」

 元々大きな瞳を更に大きくして、翡翠の瞳が嬉しそうに輝いた。
 その表情が、いつも無表情の"フェルト・グレイス"とはあまりにも違っていたから、何故だか直視できなくて視線を逸らしてしまった。

 もう一度、その表情が幻でないのだと、確認してしまったのだけど。