...ヴォルクス→シスカ



(あの女…なんという名だったかな―――)

 不意に、思い出した存在。今目の前にある鮮血色よりも尚鮮烈な色彩に思いを馳せ、くっと口角を持ち上げた。
 時々思い出す。
 同じ空の下にいる筈の人物。

 名前なんかよりも、顔の良し悪しなんかよりも、とにかく鮮明な赤。
 彼女の流す赤は何よりも鮮やかで、華やかで。

「ヴォル君? どーしちゃったのよー一体。止まっちゃってるのよ?」
「あ? ああ思い出した」
「へっ?! 何が?」
「……さぁな」

 血が見たくなった。
 目の前にあるのよりも、ずっと、赤い、赤い、鮮烈で強烈な真紅を。


...モドル?