『興味対象』



 習慣となっているバイク磨きをしながら、ふと視線を上げた。
 視線の先で銃火器をいじる女…いや、少女。
 それらの道具を使うことのない自分には、何をやっているのかは全くわからない。
 何の因果か、旅先でまた出会い、今度は敵としてではなく、かといって仲間でもなく、中途半端な位置で、今ここに居る。
 自分に常に引っ付いているあの小さなエディルジェレイドは、少女の仲間である者達に付いて買い物へと行った。
 どうやらあの青い髪のエディルレイドがお気に入りのようだ。

「おい」

 と呼べば、少女は一度顔を上げるが、まるで何事もなかったかのように視線を戻す。

「おい」

 もう一度、今度は語気を強めて呼ぶが、顔を上げるどころか微動だにしない。

「………」
「………………」

 ただただ無言。
 静かな空間。
 ちっ―――と、思いっきり舌打ちをして、ヴォルクスは重い腰を上げた。

 静かなる怒気を引っさげて近づいてくるヴォルクスに、さすがに表情を変えて少女は視線を上げる。
 味方でもなく敵でもない。
 それは、すなわち、いつどっちに転ぶか分からないという事だ。
 何ですか。と、問う少女の目の前に立って、見下ろす。

「おい」
「………あーーーーー!!!もうっっ!一体何なんですか!?そもそも私は"おい"って名前ではありませんよ!!!!」

 根負けしたかのように少女が叫び、ヴォルクスを睨みつける。
 これだけ鋭い赤の瞳をもつのは、ヴォルクスの知る限りこの少女しかいない。
 わずかに唇を歪め、落とすように、言った。

「シスカ」
「っっ!!!!」

 初めて聞く男の口からでた自分の名前に、シスカは不覚にも硬直してしまった。
 この男が自分の…と言っても偽名ではあるが、名前を呼ぶなんて明日は雨でも降るのだろうか?
 目を見開いたその様を、面白がるように見て、その、小柄な身体を全て覆い隠すようにして引き寄せる。
 例えシスカが格闘術に優れてはいても、相手は自分よりも何倍も大きく、そして同じほどに格闘術に優れていたのでは不意を付かない限りどうしようもない。

「なっっ!!!何を―――!!!!」

 言葉を飲み込むように唇を奪って、舌を入れる。
 自分のそれよりも小さな舌を、探し出して絡める。
 くちゅ、と音がして、舌と舌が絡み合い2人を繋げた。

「―――っ…ふぁ!…ちょ…と待って…ください!!!!」

 必死に背を逸らし、顔を遠ざけるシスカだが、それすらも楽しむようにヴォルクスは角度を変えて追いかける。
 髪をさらりと指に巻きつけて、硬質な髪の感触を2・3楽しみ、ひどく長い指をシスカの頭に這わせ、固定させる。

「―――っふ…」

 しっかりと固定されて、よりいっそう深くなった口付けに、シスカは言葉を漏らす事も出来ずにただただ呼吸を求める。
 頬を緩やかに赤く染め、わずかながらに潤んだ瞳に、少女、ではなく女を感じるのだ。
 存在の全てを己のものにするように、彼女の身体を自分の身体で覆いつくす。

「俺の、モノになれ」

 その声に、反論しようとしたシスカの口を直もふさぐ。
 身体全体を覆い包まれ、口全体を塞がれ、まるで、一つの存在であるかのように、同じ場所に立つ。
 息苦しさからか、次第に力の抜けてきたシスカの身体に、ヴォルクスは満足そうに少女の肢体を離す。

 シスカの力の抜けた身体は、自分の身体すら支える事も出来ず、へたりと座り込んだ。
 荒い息をついて涙目でヴォルクスを見上げる少女。
 文句を言おうとして、けれども怒りが大きすぎて言葉に詰まる。

「どうした」

 しれっとした男のその言い方に、パクパクと口を開け閉めする少女は全くもって面白い。
 未だ熱を保つ身体に、何とか力をいれて、自分の銃火器を探すが、その行為はヴォルクスにとって予想済みだったのか、先程調整中だったそれらは、いつの間にか遠くに離れている。
 それに気付いてもう一度少女が男を見上げれば、ひどく面白そうに男の顔は歪んでいて。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

 シスカは物も言えずに真っ赤に頬を染めたままヴォルクスに殴りかかった。
 それもまた予想済みだったのか、面白そうに顔を歪めたままに余裕の動作で避ける。

「避けないでください!!!!!!」

 無茶な事を言い出すシスカに、今度はクックック、と、声を出して笑い始めた。

「っっ!!!!!!」

 馬鹿にされた、と思ったのか、更に飛んでくる拳や蹴りを避け続けながら、ヴォルクスは笑う。
 ひどく、珍しい事。


 面白い女。


 エディルレイド以外で初めて興味を持ったもの。
 そう、ほんの少しでも"興味"という感情を抱かせた女。
 暇つぶしにくらいなら、なりそうだ。



 他のメンバーが帰ってくるまで、そうやって彼らは殴り合いを続けたのだった。
2005年11月3日

ヴォル君とシスカ…一回りくらい年が離れてるんですね…。
びっくりです。
それを知っても熱が冷めない自分に。
私は基本的に年の差カップルが好きって訳ではなく、むしろ、5歳以上の差があるとあまり好きではないんですよね。
読むのはいいし、好きなカプもあるけど、自分で書きたいと思うわけでもない。
その自分が…!
始めてかも…一回りの年の差でも最高にこのカプが好き。
エレジェ(紅)の一押しカップル。ちなみに他の好きカプはクーシス。クーレンも普通に好き。
シスカカプなら結構なんでも…でも実はローシスはそんなにuu

っつか、蒼の方でヴォル君見てときめきまくり(笑)

空空汐