※注意!
「キサラ」は浅羽のパソコンでは漢字が出ないのでカタカナで表示しています。
あしからずご了承くださいませ。
ラブラブ大作戦?
新緑が萌え、大地にはっきりとした影が落ちるほどに日差しはつよく。それでも、時折吹く風は涼しく、さわやか。
そんな並木道をキサラは散葉と一緒にのんびりと歩いていた。
たわいもない話をして一緒に笑う、穏やかなひととき。
キサラはこのうえもない幸せを感じていた。
2人が談笑しながら歩いている並木道の後方。
ガサガサと茂みがゆれ、キャロル、紅、プリノの3人が顔を出した。
出歯亀である。
もっとも積極的に覗いているのはキャロルだけ。紅はキャロルの出歯亀をやめさせようとして付いてきた。そしてプリノは2人の言い争いを止めようとしてついて来た…はずなのだが。
いつの間にか3人とも夢中になって覗いていた。
「ああっ!なんであそこで手のひとつもにぎらないんだっ!もどかしい…」
「人の恋路をとやかく言う趣味はないが悠長すぎるぞ…やる気はあるのか!?」
「キサラさんはともかく散葉さんがキサラさんをどう思っているかが気になりますね…」
2人に聞こえないことをいいことに言いたい放題である。
と、突然キャロルが右手に持ったものを前に突き出した。
「2人の距離を縮める――そんなときにはコレ!」
その手に握られていたのは…
「蛇だな…」
「ヘビですね…」
紅とプリノの呆れたような視線のなか、キャロルは握りこぶしで力説した。
「そう!これを2人の足元に投げる!すると!!『きゃぁ!』と、驚いてキサラさんに抱きつく散葉さん!『大丈夫かい…?』気遣いつつ抱き寄せるキサラさん!次第に2人の距離は縮まって………名づけて!《びっくりドッキリ大作戦!》」
どうでも良いがキャロルの右手に握られたヘビの首が絞まっている。
「ベタですね……」
プリノが呆れた顔をしてつぶやいた。紅は腰の刀に手をかける。
「やめんかっっ!!」
ごいんと後頭部をどつかれたキャロルは前のめりに倒れた。さすが男、どんな時でも前のめり。しかしその勢いで手からヘビが離れて飛んでいく……
「きゃぁ♪」
散葉から発せられたのはキャロルの予想と寸分違わぬ、しかし込められた感情は全く違う悲鳴だった。
かたずを飲んで見守る3人を尻目に、散葉はひょいとヘビを拾い上げる。ためらいのないその動きといい、ヘビのあごを的確におさえる掴み方といい、まさにプロだった。
「きーちゃん、きーちゃん♪ヘビがおるよー」
嬉しそうに捕まえたヘビを(注:まだ生きています)キサラに見せる。
「チルハ、危ないよ。」
「だいじょうぶー。山でくらしてた時はよく食べたんよー。かばやきにするとおいしいの」
心配そうなキサラの注意もどこ吹く風で、散葉はヘビを握った手をぶんぶん振り回した。
つくづく可哀そうなヘビである。
と、石にでも足をとられたのか、その身体がぐらりと傾いた。
「チルハ!!」
キサラがとっさに抱きとめる。しかし、よろけた拍子に散葉はヘビから手を離してしまっていた。
キャロルに絞められ、散葉に振り回された可哀そうなヘビは目を回し、手近なものにかみ付いた。
「……っ!」「きーちゃん!かまれたの!?」
顔をしかめて腕を押さえたキサラに散葉が駆け寄って顔をのぞきこむ。なりゆきを見守っていた3人も慌てて飛び出してきた。
「きーちゃん!傷を見せて!」
キサラの腕をとり、袖をまくって傷口を確認した散葉は―――いきなり傷口に口付けた。
「…!!チルハ!何やって…!?」
突然の事に真っ赤になるキサラ。しかし散葉は腕から顔をあげてきっぱりと言った。
「毒があるかも分からんもの!!ちゃんと吸いださな…!」
再び口付けようとする散葉にキサラは慌てた。
「大丈夫だから…」
「ダメ!」
「…や、本当に大丈夫だから」
「ダメったらダメ!ちゃんとするの!」
2人の押し問答は見守る3人そっちのけで日が暮れるまでつづいた。
…早く医者に行けよ。
後日。
ヘビにかまれた痕と共に腕についた赤いあとを見るたびに、顔を赤くするキサラがいたとかいなかったとか…
2005年5月3日
キサチル以前です。
一番砂吐きそうだったのがキャロルのセリフ(笑)
私のなかではこれが精一杯です。
読んでいただき、ありがとうございましたvv
浅羽翠