雛人形





「これで準備は完璧だ!」
 玄関ホールに豪華に飾られた八段雛飾りの前で、ケインは満足げに言った。
「女性達の反応が楽しみだ」




〜散葉の反応〜
 ある日、散葉がケイン邸を尋ねると玄関ホールに小さな階段のようなものが置いてあった。
 近づいてみると、両手に乗るくらいの小さな人形が所狭しと並んでいる。
「わぁ、かわいい…!」
 手にとって見てみると、その人形は細かいところまで精緻に作りこまれたものであることが分かった。
「きーちゃんにも見せてあげたいなぁ」
 そう呟いて散葉はケイン邸を走り出ていった。
 キサラを呼びにいったようだ。




〜小桃の反応〜
「わ、高そうな人形!」
 目を丸くして人形近づいた小桃は人形の顔を見てちょっと引いた。
「…ちょっと、リアルすぎて怖いな」
 そして人形をじっと見つめ、やがてぶつぶつと呟き始めた。
「人形のくせにいいもん着てんな…私が着てるのよりもいい生地使ってんじゃないか、これ?売ったらいくらに…いやいや、これは隊長の家のものだからそんなことしちゃ……」
 やがて動かなくなった。




〜プリノの反応〜
「わぁ、かわいい。雛人形ですね!」
 お雛様を手にとって嬉しそうに目を細める。
「懐かしいなぁ…。小さい頃お兄ちゃんが良く飾ってくれたっけ…」
 人形の髪を撫でながらそう呟いていると、どこかで力加減を間違えたのだろうか、首がぽろっと取れた。
「!!!」
 反射的にキュっとはめ込む。
 ふぅ、とため息。
「私の家の雛人形も全部首が取れるんでしたっけ…よかった、はめ込めば直るやつで」




 夜、皆が集められて。
「これは雛人形と言う異国の人形でね、春に女の子の成長を願って飾るものなんだよ」
 玄関ホールで得意げに説明するケイン。
「美しいだろう?わが屋敷には女児はいないが、今年は3人も女の子がいるので飾ってみたのだよ」
 どうだい?と聞かれて散葉は、
「うん、とってもきれいでかわいいよ」
 と笑顔で答え、ケインは嬉しそうに頷いた。

「で、隊長。願って飾ってその後何をするんですか」
「ああ、皆で宴会をしてからしまうのさ」
「そういうのではなかったと思うのですけど…」
 ぽつり、そう言ったキャロルの言葉は誰にも聞かれることはなく。
「今日は宴の準備をしてある。皆で存分に楽しむといい」
「「わーい」」



 と、いう訳で。
 その日雛人形が飾られているのとは別室でひなまつりの宴が行われたケイン邸であった。
 邸の明かりは夜遅くまで消えることはなかったという。






2007年3月3日

 いやただ単に女性3人の反応が書きたかっただけですが。
 プリノは雛人形知っていることにしたけど(お金持ちだから持ってそうだけど)そもそもdearの世界に雛人形なんてあるのか?って思う(笑)


浅羽翠
背景提供:Harmony様