大晦日の夜





 年が終わろうとする日の夜。
 ガードルードたち悪魔が住む空家では、いつもと変わらぬ夜が過ごされていた。

 ガードルードはソファーに寝そべって本を読み、
 プッペンは床に画用紙を広げて絵を描き、
 マリオットは椅子に腰掛けて編み物をしていた。


 その場にサハラの姿はない。

 悪魔たちは知っていた。彼女はとても家族を大切にしていることを。
 だから年が終わろうとするこの夜を、家族と共に過ごすことを選ぶであろうと。

 そう、思っていた。





 ふと、ガードルードが視線を家の外へ向けた。
 持っていた本に栞をはさみ、立ち上がって玄関へ。

「どうかしたのか、ガードルード」

 編み物の目を数えていたマリオットが言った。プッペンも、突然立ち上がったガードルードに不思議そうな視線を向けている。

「ああ、ちょっとな」

 そんな彼らに肩越しに手を振って、彼は寒風吹きすさぶ外へと踏み出した。






 真っ暗な道をてくてく歩く、人影が2つ。

「寒いよお兄ちゃん!」

「黙って歩け。あいつらにコレ持っていくって言い出したのはお前だろう」

「……今気づいたんだけど!」

「何だ」

「私たち2人とも両手ふさがってるのにどうやって門とか戸とか開けよう!?」

「叫べ」

「近所迷惑だよ!?」

「………どうやら、迎えが来たようだ」



 兄の言葉に目を向ければ、背の高い鉄門の向こうにたたずむ銀色の悪魔が見えた。
 2人に軽く手を振って、彼は門を開けてこちら側にやってくる。

「ガードルード」

「どうしたんだ、こんな夜遅くに」

 不思議そうな声に、サハラは両手に持ったお重を得意げに持ち上げて見せた。

「お節を届けにきたのよ。お兄ちゃんが持ってるのは、お雑煮ね」

 見ればなるほど、ちょっぴり不機嫌そうなサハラの兄は大きな鍋を両手で持っている。

「どうしてまた?」

「お母さん達に、外国から留学してる友達のことを話したらね」
「お節もお雑煮もないだろうからもって行けといわれたんだ」

 にこにこしながら話すサハラの言葉を、彼女の兄が引き取って言った。

「なんでまた…」

 そう言いながらサハラの兄を見たガードルードに、さらに不機嫌そうな顔になった彼は答えた。

「夜中に女の子を1人で出歩かせるのが心配だから着いてきたに決まっているだろう」
「荷物持ちも兼ねてね」

 笑顔で兄を荷物持ちと言い切った少女は、銀色の悪魔に満面の笑みを向けた。

「お邪魔してもいい?ガードルード。皆でカウントダウンパーティーしましょうよ」

 もちろん、彼に否やの言葉はない。

 サハラの荷物を引き受けると、門を肩で押し開けて2人を招く。

 家の中から、2匹の悪魔の歓声が聞こえるのももう少し。





2007年1月14日

サハラの兄をどうしても書きたくて書いたお話ww
一人暮らししてても、正月とかには里帰りしてるといいなぁと。
んでもってサハラとガードルードの関係にやきもきしてるといい(笑)
不機嫌なのはきっとそのせいww

浅羽翠