リィスとティアとレキ
「セシエのお茶ってさー、なんで俺たちが淹れると苦くなるんだろうなー」
いつもの休憩の時間。リイスは幸せそうにケーキを頬張っていた。
目の前のテーブルには小国セシエのお茶。ティアが淹れたものだ。
今まで誰もおいしく淹れることができずに戸棚の奥で眠っていたこのお茶も、ティアがやってきてからは度々お茶の時間に登場するようになっていた。
「こちらの国のお茶とは淹れ方が違いますからね…」
レキにもお茶が入ったカップを渡したティアが、席に戻ってきた。ポットの中身を確認して、お茶の葉を全部捨てる。
リイスがそれを見て呟く。
「こっちのお茶は淹れる度にお茶の葉を捨てたりなんかしないもんなー」
「でも、こうしないと次淹れる時、風味が落ちちゃうんですよ」
自分が淹れたお茶をひとくち、満足げに頷いたティアが言う。
「お茶の葉の量、お湯の温度から蒸らし時間。全部に気をつかってあげないと美味しくなってくれないんです、セシエのお茶は」
「そんな繊細な人間がウチの職場にいるわけないじゃないか!なあレキ」
「もちろん、その代表格はあなたですけどね、リイス」
即座にやり返されたリイスに、あははと皆が笑った。
「私は、こちらのお茶も好きですよ」
呟いて、両手で包み込んだカップを覗き込むと、ゆらゆらと揺れる琥珀色のお茶。
その水面には、幸せそうに微笑むティアの顔が映っていた。