2010年1月
 クロノトリガー クロノ←ルッカ




 手を握りたいな、って思った。
 目の前で揺れるのはたこで硬くなったごつごつとした手のひら。
 昔は私と大して変わらなかったくせに、いつのまにかおっきくなって、筋張った、男の手になっていた。

「―――」

 手を握っていい?
 そう言おうと思ったのに、視界に入った金色の眩しい髪に躊躇した。
 どうしてだろうか。分からない。

 昔はもっと簡単につなげたのに。
 だって、昔は、
 部屋に閉じこもる私を無理やり連れ出して海岸に行った。
 変な冒険に付き合わされて、弟分のやんちゃぶりに大人たちから一緒に怒られた。
 だから、色んな発明をしてその実験に付き合わせた。
 嫌がる弟分を無理やり捕まえて、遊んで、手をつないで、転げあって、笑いあって。

 そんな、スキンシップがいつから出来なくなったのだろう。
 大きくなったら距離が出来て。
 新しい仲間が出来た分、彼との距離が開いた。

 じっと、揺れる手のひらを見つめる。
 じわじわと心が揺れる。
 けど隣には、金色の髪の笑顔の眩しい彼女がいるから。


 ―――ああ、もしかして私は彼に恋していたのだろうか、と気がついた。
(今更になって気づいたって何も出来やしないのに)