アイツがそこに居て
 自分がそこに居る。

 それを不変と信じていた頃があった。



 あるわけもないのに。さ。







『隣、居場所 〜ルッカ〜』







「あんたと2人ってのも久しぶりねー」

 のんびりと隣を歩きながら苦笑した。
 いつからか彼の隣も自分の隣も、たくさんの人が居る場所になった。
 それを悪いとは言わない。
 むしろ嬉しいし楽しい。
 ありがたいとも思う。
 人が居れば居るほど考えすぎることを止めることが出来るから。
 まぁ。たまには一人になりたい時もあるけど。
 そういう時は自分は結構勝手に動くので、別に今の生活に不満はない。

 一つの問題が片付くと、もう一つの問題が持ち上がる。
 それはもう面白いくらいに暇なく問題が起きる。
 不思議なことだ。
 けれど…それでもゆとりがあるという時もあるのは、もっと不思議なことだ。

 未来を変えるためには急がないといけない。
 けれど、万事うまくいくはずもない。
 常に先に進むことだけを考え続ければ効率も落ちる。
 こうして、冒険の途中に生まれたゆっくりとする時間というのはとても大事だ。

 出来た時間は三日。
 この間は進むことも戻ることも出来ない停滞時間。

 マールはとりあえず城に帰った。
 最近ようやく仲が戻った国王と話すこともあるだろう。

 エイラは古代へ。
 族長としての役割もあるだろうし、キーノにも会うのだろう。

 カエルと魔王は中世へ。
 カエルはサイラスの墓参りもあるだろうし、リーネ様にも会うのだろう。
 魔王はどうだろうか?…サラさんを探してさ迷うのかもしれない。 

 ロボは私のうち。
 今は父さんと話しでもしているのではないだろうか?
 私もちゃんと帰ったけど、また出てきた。
 したいことがあったから。

 そしてクロノ。
 彼はなぜかここに居る。
 家から出てきたらそこで待ち伏せされていた。
 理由を聞いても答えないとは、生意気になったものだ。

「それで、どこに行くの?」
「…あんた…だから何しに着いてきたのよ…」
「いいだろ別に」

 軽く笑って、クロノは肩をすくめる。
 だから何なんだ一体。

 一つため息をついて、私はシルバードに乗り込む。
 当然の顔をしてクロノも乗り込んだ。
 そういえば、これだけ長く旅をしてきて、彼と2人でこれに乗るのは初めてではないだろうか?

 いや―――…むしろ、彼とだけが…ない。

 マールと2人はよくある。
 結局は同じ年頃で、同じ時代の人間だから仲もいいし、気も合う。

 ロボともよくある。
 彼のメンテナンスには未来の技術が必要なこともあるから。

 カエルとも乗る。
 理由はない。多分用事があるときそこにいたから、護衛に連れて乗っただけ。

 魔王ともそうかもしれない。
 一人だと複数の敵には中々対応できないものだし、中世に行くときはやっぱり魔王は魔王だから便利。
 あんな奴だが案外付き合いはいいように思える。

 エイラとも乗る。
 彼女は一緒にいて楽しい。
 まるでお姉さんのように思える。
 意識しなくとも気が抜ける。

 それで、リーダー格のクロノとは…乗ったことはない。
 初めて気がついた。
 何で?
 幼馴染で弟のようで心を許せる存在だ。
 カエルや魔王がいるように、彼がいるときもあったはずだ。

 でも…ない。

 何故私は誘ったことがないのだろう?
 少し考え込んでしまった。
 多分手が止まっていた。
 クロノが不思議そうにこちらを見ている。
 2人きりでこの席に座って、クロノを見て、なんとなく…本当になんとなく

     …彼は男だったんだ…って思った。

 自分の思考が理解不能だ。
 本当に何を考えているんだか。
 馬鹿馬鹿しい。

「ルッカ?」
「…何でもないわ」

 そう。
 なんでもないのだ。

 シルバードを動かす。
 もうしっくりと手に馴染む操縦桿。
 時間を越えるわけではない。
 目的はこの時代。
 2005年4月9日
 私シルバードのことを思いっきりシルバーノア(アークザラッド1の戦艦)って書いてました(笑)
 これの時点では気付かなくて、クロノverでようやく気付きました(笑)
 アークの創作なんてしたことないのになぁ…uu
 アーク1の1000勝目指してひたすらplayしてたからでしょうか?
 それはそうと、一人称って苦手なんですけど、ルッカは書きやすいです。
 とにかくルッカの隣は誰だー!!って話?