『無邪気』






「ルウのそれ、さ」

　それ、とミントはルウの帽子を示す。
　多分、彼女の目当ては帽子の下に隠されたデュープリズムの欠片のこと。

「これ？」

　と言って、軽く帽子をあげれば、額に輝く宝石一つ。
　有り得ない場所に有り得ない物があるのを、平気で見せることが出来るのは、今ここに、たった２人しかいないから。
　ここは小さな村の小さな宿の一室。

「そそ。それってすっごい綺麗だよね〜〜」
「そう？」
「ね、触ってもいい？」
「え？」

　と、ミントの顔を見つめれば、興味しんしんに輝いた澄んだ赤の瞳。

「触らせなさいって！！」
「うわあっ！」

　ミントに押し倒されたルウは、顔を赤くさせて、自分の上に座す少女から、限りない忍耐と労力で注意を逸らした。
　無邪気な彼女が可愛いと思うと同じくらい憎たらしいと思う今日の昼下がり―――。