『白馬の王子様』







   〜バルレル〜

 少女は見つけました。
 とっても古めかしい、けれども綺麗な綺麗な装飾をした、薄っぺらな本を。
 それは、昔々の小さな童話。
 普段は『田舎者の貴女へ』『甘いもの好きには堪らない!甘い物全集!』などといった大分物語性に欠けた本を好んで読んでいる少女ですが、その綺麗な装飾に惹かれてふらふらと手に取りました。
 物語は、白馬の王子様と綺麗なお姫様が前に現れて、お姫様の苦境を救うお話。
 読み終えて、少女は小さな吐息を漏らします。
 そのこげ茶色の甘い甘いチョコレート色の瞳を輝かせて、薄っぺらな本を両腕に抱きかかえます。

「白馬の王子様…!」

 夢見る子供のように。恋に恋する乙女のように。
 きらきらと瞳を輝かせました。
 夢見る少女ならきっと抱くでしょう。自分を迎えに来る白馬の王子様の夢を。
 少女の王子様はいつ現れるのでしょうか。




「白馬の王子だぁ!?」

 思いっきり顔を顰めたバルレルに、ルウはむっとして小さな悪魔を睨みつけた。胸にかき抱いているのはあの薄っぺらな本。

「そうだよっ。いつかルウを迎えに来てくれるんだから」

 あんまり上機嫌で、いきなり現れた悪魔にも本の内容を話した途端にこの始末。なんだかすっごく馬鹿にされたような…実際にされているのだろうが…そんな気がして、それが悔しくて噛み付くようにして言い放つ。
 必死で白馬の王子様の素敵ぶりを説明するルウに、バルレルは軽く笑った。それはどう見ても友好的なものではなかったが。

「いーか?その白馬の王子様とやらはな?寝ている女にいきなりキスかますような男だぜ?」
「うっ…で、でもそれは…っっ」

 お姫様には呪いがかけられていたんだから…それに王子様がお姫様に恋しちゃったんだから…。

「よーするに、襲って欲しいってことだろ?」
「なっっ……!?」

 ケケケ、と悪魔らしく笑ったバルレルの魔力がふわりと膨れたと思ったら、一瞬後にはルウの体を大きな腕が包み込んでいた。

「女の了承はいらねーみたいだな?白馬の王子様とやらは」

 何するのよっ!と叫ぼうとしたルウの唇を思いっきり塞いで、最早遠慮なく降り注ぐ唇。どこか頭の芯が痺れていくような甘い感覚に思考が奪われる。
 ほんの少し残った冷静な思考のどこかで、バルレルに話すんじゃなかった!と後悔するも後の祭り。ある意味自業自得なのかもしれないが、そんな人の夢を一瞬にして打ち砕かないでもいいではないか。
 そんな恨みを込めた一瞥を送ってやると、霊界サプレスの偉大なる狂嵐の魔公子様サマはにやりと凄みのある笑みを浮かべてやり過ごすばかり。

 少女の白馬の王子様はどうしようもなく乱暴で強引で、人の話なんて全く聞いていない色欲魔人だったのでした。
2006年6月3日

うーん…バルレル…そこ図書か…ん…。
ドマイナーでも私の妄想の中にしか存在しなくても大好きです。バルルウ。

「よーするに、襲って欲しいってことだろ?」
白馬の王子様ネタを考えた時、バルレルのこの台詞が真っ先に浮かんだりしました(笑)

イオスverもちょっとしてみたい…。イオルウ…。
なんだこのマジドマイナー…。

ぶっちゃけルウが愛されてれば結構なんでもいけそうとか、思ったり、思わなかったり(笑)