『隣』
「不思議」
「…ああ?」
「だって、バルレルは悪魔で、ルウは人間なんだよ?」
首を傾げて、ルウは己とバルレルとを指差す。
訝しげに、眉を寄せた小悪魔。
「それなのに、一緒に居る」
「……別に、召喚師ならおかしくはねーだろ」
「でも、バルレルはルウが召喚したわけじゃないよ? ルウはバルレルと何も誓約してない」
「だから何なんだよ」
「だから、不思議だな、って思って」
「何が」
「バルレルが、ここにいる事」
「はぁぁっ?」
意味不明、と言わんばかりに、大げさに首を振る小さな子供の姿をした悪魔。
その正体は霊界サプレスで名を馳せた大悪魔、狂嵐の魔公子。
どうしてかな、と、ルウは思う。
かつてトリスに呼び出されたと言う大悪魔は、今はその誓約から離れた場所にいて、いつだって本当の姿に戻ることが出来るし、霊界に戻ることも出来るだろう。
それなのに、彼はここにいる。
トリスの隣ではなくて、ルウの隣、いつの間にかそこに落ち着いていて。
「やっぱり、変」
うなずく。
何度か口にしかけた言葉がある。何度も何度も口の中で飲み込んだ言葉がある。
―――君は、霊界に帰らないの?
今もまた、のどの先まで出てきた言葉を押しとどめた。
何回考えても、バルレルがここにいることが不自然で。そう、分かっているのに、それを口に出すことが出来ない。
不機嫌そうなしかめっ面の悪魔。
初めて会ったときは敵だと信じていた。自分に害をなすもので、危険な存在なのだと、そう思って。しばらくはその思いも消えなくて。
けれど…けれど、いつの間にか、彼と共にいることが当たり前になって、それがとても心地よいと感じる自分がいる。
彼がここにいるのは不自然で、おかしなことに違いないのに、口にすることが出来ないのは、きっとその所為だ。
口にしてしまったら、バルレルが帰ってしまうかもしれないから。
それが嫌だから、ルウは口を閉ざす。
一つ息を吸って、ルウは笑ってみる。
そこそこ上手く笑えた気がする。
「バルレルは、不思議」
「………ケッ。お前言ってること意味わかんねーっての。何だってんだよ、ああ?」
「なんでもないよ。なんでもないけど、バルレルが、ここにいるのは嬉しい」
それは本当だから。
うん、と一つうなずいて、小さな悪魔に笑った。
2007年7月7日
久しぶりにサモ2。そしてバルルウ。
時間軸が謎だけど、多分最終話後であろうと思う。
最近無性にサモ2したくて、中古屋を巡ってるのですが、求めているときに限ってありませんね。
だんだん2人がゲームからかけ離れてきた気がするので、余計にゲームしたいです。