すべては鍋のために
「あーっ、鍋うまかったなー!」
「本当。久しぶりの海賊鍋だったね」
「なんだか島のみんなを思い出したですよー」
村のはずれの1軒の宿。そこの料理上手の主人に作ってもらった海賊鍋をお腹いっぱい食べて、スバル、パナシェ、マルルゥの3人は宿屋の一室でくつろいでいた。
「あ、そうだ。アズリアさんに手紙を書かないと」
ごろごろとベッドに寝転んで疲れをいやしていたパナシェがばっと身を起こした。それを同じく寝転んでいたスバルが不思議そうに見上げる。
「アズリアさんに?なんでだよ」
「ほら、僕たち身元の説明するのにアズリアさんの名前出しちゃったでしょ?何もないとは思うけどいちおう断っとかないと…」
「えー面倒だなー。パナシェ、まかせた」
「まったくもぅ…」
「お手紙だったらマルルゥも書くですよー♪」
紙とペンの準備をしているパナシェの横に、マルルゥがやってきて嬉しそうに言った。
パナシェに自分の分の紙とペンを用意してもらい、身の丈ほどもあるペンを抱えて手紙を書き始める。
「今日おいしいお鍋を食べました、と…」
「……え、マルルゥその内容で出すの?」
「アズリア将軍!お手紙です」
敬礼をしながらそう告げた兵士の言葉に、大きな机に座って事務処理をこなしていたアズリアは顔を上げた。
「ごくろう。誰からだ?」
至極もっともなその質問に、兵士は封筒の裏の字を見てちょっと困った表情をした。
「スバル、パナシェ、マルルゥより…としか書いてありませんが」
「ああ、読み上げなくていい。……私的な手紙だ。もういいぞ、下がれ」
「はっ」
手紙を受け取ったアズリアは丁寧に手紙の封を切り、便箋のちょっとたどたどしい文字を微笑ましく思いながら文章を追っていく。
手紙の2枚目まで読み終えて、丁寧に便箋を畳んで封筒にしまったアズリアは、横の机で同じく事務処理をしていたギャレオに言った。
「…………鍋が食いたい」
「は?」
「久しぶりに鍋が食いたい!ギャレオ、鍋を食いに行くぞ!」
「はっ!………どちらの店まで?」
慣れた様子で応じるギャレオ。…じつはこういうことは今までにも何度かあった。
かの島で食べた海賊鍋を、アズリアはとても気に入ったらしく、1年に何度か食いたいと叫ぶのだ。だがしかしそこは多忙な2人、島まで食べに行くわけにもいかず手近な店で済ませていたのだが…。
「何を言っている!本場だ!」
「ま、まさか」
「明日から2週間の休暇をとる!ギャレオ、船を一隻チャーターしておけ」
「アズリア将軍…」
「もちろんギャレオ、お前も来るよな?」
「……お供します」
まさかアズリア一人であの島まで行かせるわけにもいくまい。
それにギャレオもあの島のシェフが作る鍋は気に入っているのだ。様子見がてら、島を訪ねるのも悪くないかもしれない。
そんなことを思いながら、ギャレオはどうやって船と休暇を明日までに用意するべきかを考えていた。
2007年5月3日
サモンナイト4の外伝の後あたり。
初めてのサモ4の2次です。……いや、キャラはサモ3しか出ていませんが(汗)
アズリアとギャレオは島から出た後もちょくちょく遊びにいってるといいな。
背景に鍋の写真を使いたかったけれど、どこにもなかった…(泣)
浅羽翠