『無駄な抵抗』
どこにいてもよく目立つ金の色を見つけて、あれ?って思った。
近くに行けば行く程、予感は確信に変わる。
ロディが近づいていくと、それに気付いた金色を持つ女の子は、「げっ」とでも言いたげな、中途半端な口の形になって、頬杖をついていた腕が力なく落ちる。
明らかに驚愕に染められた顔は、ロディのよく知るものだ。
「やっぱりジェーンだ」
店番をする少女の目の前に立って、ロディはにっこりと笑った。
少女もにっこりと笑う。まるで意地の様に。
「どちら様でしょう?」
「ジェーン?」
「お客様、商品はあちらとなっておりますが」
「ジェーン?」
首を傾げて、物言いたげに見つめてくるロディに、少女はたじろいだ。ロディから視線を外して、必死に気を逸らしている。
「ジェーン?」
「………誰のことでしょう?」
必死にロディの方を見ないように努め、少女はなおも認めない。
だが、彼女の必死の抵抗もむなしかった。
ロディはすでに彼女をジェーンだと認識している。
手遅れだった。しかも嫌な事は重なるものだ。
「ジェーンちゃん。これ片付けといてくれる?」
奥から出てきた老人の言葉に、ジェーンの片頬が引きつった。
固まっている少女の後姿を見て、老人は首を傾げるが、ロディの姿を見つけて破顔する。
「ロディ。もう学校は終わったのかい?」
「うん。おじいちゃん。店の方、僕も手伝うよ」
「んなっ!!!!!ろ、ろ、ろ、ロディ!あんた知り合いなの!?」
ようやく硬直から抜け出したジェーンが悲鳴のような声を上げた。
よほど衝撃だったのだろう。大きな瞳が2人を交互に凝視する。
「おや。知り合いかい?それは良かった。ジェーンちゃん。さっき言っていた私の孫のロディだよ」
「ま、まままままさかっっうっそ…!でしょう…」
ははは、と気が抜けた笑い声を出すジェーンに、2人そろって首を傾げる。
「あ。もしかしておじいちゃんが朝言っていた手伝いってジェーンのこと?」
「そうじゃよ?古馴染みに頼まれての」
「へぇ、そうなんだ。そっか、よろしく。ジェーン」
「………………………………よろしく」
激しく脱力した様子のジェーンに、やはり2人は仲良く首を傾げた。
「何で最初否定したの?」
「…うちの学校バイト禁止だからに決まってるじゃない。ばれたら終わりなんだから!」
ジェーンの言葉に、そういえばそうだった、と思って、次ににっこりと笑った。
「でも、ジェーンと一緒に働けて、嬉しい」
少女が、真っ赤になって絶句したのは言うまでもない。
2005年9月4日
久々にロディジェ。
何だか見てくれる人がいるかどうか謎(笑)
なんかもう恥ずかしかったり。