遊ぶ
亜莉子の高校の友達が、猫を飼うことになった。
ちゃんと、四本足で立つ猫だ。
その友達が買い物に行くというので、亜莉子も店についていくことになった。
「結構いろいろあるのね…」
そこにあるのは猫用の餌、トイレ用品、おやつにおもちゃ。
多種多様な商品が所狭しと棚に並べられている。
そこにあるのは猫のためのものがほとんどだったが、犬用の売り場はもっと大きかった。
「亜莉子も猫飼ってるんでしょ?こういうの買ったりしないの?」
「うーん、買ったことはないなぁ…」
なにしろ、首だけの猫だ。
首だけになってから何かを食べたりしているところを見たことがないし、そんなことを考えたこともなかった。
「せっかくだから、おやつとか買っていってあげたら?喜ぶかもよ」
「うーん…」
亜莉子は迷いながら、おやつが並んでいる棚を見た。かまぼこを薄くけずったもの、鰹節みたいなもの、乾燥させた肉やらにぼしやら。
チェシャ猫のことだから、おやつをあげたら喜んでくれるだろう。喜んではくれるだろうけれど。
………食道がないしなぁ。
そこに尽きるのであった。
結局、亜莉子は鮮やかな黄色の鳥の羽がついた猫じゃらしを買った。
どうしても、餌とかおやつとかは選べなかったのだ。
帰ったらさっそくチェシャ猫と遊んでみよう、と亜莉子はうきうきしながら家路についた。
翌朝。
亜莉子の部屋の床には、遊びすぎてなぜか血だらけになったチェシャ猫が、満足げなにんまり顔で転がっていたという。