コタツ 2
「ただいま〜!あー寒かった!コタツ〜」
学校から帰ってきた亜莉子は、靴を脱ぐなり上着も脱がないままコタツへ直行した。
足を入れるとすでにコタツは暖まっていて、冷え切った足先がじーん、として温まっていくのが分かる。
「…アリス。僕らのアリス…」
「……チェシャ猫?」
コタツの暖かさを堪能していた亜莉子はしばらくして、チェシャ猫が自分を呼ぶ声に気がついた。
が、周りを見渡してもチェシャ猫の姿はない。
「チェシャ猫、どこー?」
「ここ……」
もぞもぞとコタツ布団が動いて、灰色のフードの端っこが見える。
亜莉子はすかさずそれを掴んで、チェシャ猫を引っ張り出した。
掴んだチェシャ猫の頭は全体的に妙に熱を持っていて、顔色もなんだか赤い。
そして、床に下ろされたチェシャ猫はふうぅ、と苦しそうに息を吐いた。
「だいじょうぶ?チェシャ猫、気分でも悪いの…?」
「ダイジョウブ、ちょっと酸欠なだけ……」
そう言うと、またコタツへ戻ろうとする。亜莉子は慌ててそれを制した。
「ダメ!せめてもうちょっと冷えてから…!」
「寒いよ、アリス」
「寒くてもダメー!」
ぐいぐい手を押してくる猫の額を一生懸命押し返す。
亜莉子とチェシャ猫の攻防はその後の冬の間、毎日続くこととなるのであった。