コタツ 3



 今日こそは。

 今日こそは!

 だんっ!と亜莉子は『それ』の前に足音高く立ちふさがった。
 
 天気予報では今日は快晴。
 窓から見える青空も、雲ひとつない青。吹く風もどこか暖かい。
 今日しかない、と亜莉子は決意していた。
 今日逃したら今度はいつ、こんな機会が来るか分からない。
 『それ』はまだまだ必需品だけれども、一冬ずっと使いっぱなしではさすがに抵抗があるのだ。
 だから。

「チェシャ猫、今日はコタツ禁止ー!」

「ナンデ?」

 ころ、とコタツに入ろうとしていた生首が振り返る。
 それをがしっ、と掴んで亜莉子はチェシャ猫がコタツに入るのを阻止した。
 彼と目の高さまで持ち上げてその決意を伝える。

「今日こそはコタツ布団、干すから」
「まだ寒いよ、アリス」
「まだ寒いわね、でも一冬ずっと干さないっていうのも嫌なのよ」
「でも」
「干すから!!」
「…ぐぇ」
「あっ、ごめん!」

 人間、決意すると自然と手に力が入ってしまうもの。
 命の危険を感じたらしいチェシャ猫は、その日一日大人しく引っ込んでくれたのだった。