スイカ 1



 亜莉子はふと、足を止めた。
 学校から家への帰り道にある八百屋さん。そこの店先に、少し早いスイカが並んでいたのだ。
 まだ時期には早いからか、小ぶりで形も少し細長い。でも、そんなところが、

「そっくり…」

 鞄を置いて、亜莉子はそのスイカを両手で持ち上げてみた。ずしりとした重さが手に伝わって、それが思っていたよりも重いことに気づく。

「実物よりも少し、重いかな」
 呟いて次に、いつものように腕に抱えてみる。
「あ、けっこう落ち着くかも…」

 これ、欲しいな。
 そう思って値段を見ると、さすがに普段のスイカよりも高めだった。でも、似てると思ってしまった以上、手元にないとなんだか落ち着かないし、他の人に買われるのなんてもっと嫌だ。
「メロンよりは、安いしね」

 亜莉子はそのスイカを買うことにした。



 3日後、嫉妬したチェシャ猫がスイカを体当たりで割ってしまうまで、なぜかスイカを膝に乗せて勉強に集中する亜莉子の姿が見られたという。