...ナルヒナ


 人生にはどうしても迷ってはいけない時があると思う。
 それは、きっとこんな時に違いない。

「生きるか死ぬか、選択肢は2つ。10秒あげるよ」

 突然の言葉に、ヒナタは目の前の刀の切っ先を凝視した。
 つぅ、と視線を上げると、少しだけ大人びた憧れ人の姿。
 月を背に立つその姿はとても綺麗。たとえ、全身に血を浴びて恐ろしく酷薄な笑みを浮かべていたとしても。
 ヒナタの答えはとても早かった。

「生きる、よ」
「じゃあ記憶は貰う」

 うずまきナルトと呼ばれる金の髪の少年は恐るべき速さで、刀をしまい、ヒナタとの距離を詰めた。
 記憶を消そうと指を伸ばし…

「いや」

 それよりも、ヒナタは早かった。
 まさにコンマの世界で切り返された言葉に、ナルトはきょとんと首を傾げた。

「何で?」
「忘れたく、ないの」
「だからどうして」
「もっと見ていたいから」
「何を?」
「―――貴方を」

 真剣なまなざしを注がれて、ナルトは戸惑った。自分にとって砂よりも小さな存在だった人間が、日向ヒナタという確固たる姿をとって、ナルトの目の前に現れた。

「何、それ」
「それに…」
「それに?」
「絶対に、忘れてなんてやらない」

 言い切ったヒナタに、ナルトは、噴き出した。
 何を言い出すのだ、この少女は。
 月の光がきらきらと2人を照らした。

「私、本気だよ。ナルト君」
「…この、俺を"ナルト"って呼ぶんだ」

 それには少し驚いた。
 今のナルトはナルトであってナルトでないようなものだから。

「ナルト君でしかないもの」

 けれど当たり前のようにこの少女は言った。
 なるほど日向の瞳は真実を照らす。
 なんとなく、愉快な気持ちになったので、少女の要望をかなえることにした。
 たまには例外もいいだろう。

「いいよヒナタ。記憶は消さない。その代わり…」
「私の所為で貴方の真実がばれたのなら、私を殺してもいいよ」
「………ま、そういうこった」

 言おうとしていたことに先手を打たれたので、ナルトは苦笑した。
 いつの間にかヒナタの口調はとても滑らかになっていた。

「大分、性格が違うんじゃね?」
「そうでもないよ。私は私だもの」

 いつもおどおどと人の視線を気にしているのも自分。
 今こうして、真っ直ぐにナルトを見つめているのも自分。

「ナルト君と、同じように」
「…ま、そうだな」

 何となく。
 何となくではあるけれど、彼女の為に自分は、今の姿を里人たちに晒してしまう気がした。
 それは、きっと。
 砂粒以下の存在でしかなかった人間という存在が、初めて形をとってナルトの前に現れたから。
 だから、彼女はナルトの特別になるのだろう。

 その感覚は、とてもとても面白かった―――。

 だから、ナルトは笑った。
 初めて、心の底から笑った。

...モドル?












...サス→いの→サクラ→イタチ→ヒナタ→ナルト


「サスケ君」
「………」

 自分を呼ぶ声に、サスケは無言で答えた。
 視線を結び合う事もないけど、声の主は必ず自分の隣に現れることを知っている。
 特に、今日は。
 声の主は隣ではなく目の前に現れた。
 以前よりも更に短くなったショートの蜂蜜色の細い髪が緩やかにゆれる。

「何だ」
「サクラと付き合いはじめた、って聞いたわ」

 絶対に消える事のない冷たき炎を瞳に宿して、真白い面は能面のように笑みを浮かべている。

「ああ。そうだ」
「…なんでよ」
「付き合いたい、って言ったから」
「ふざけないで!」
「本気さ」
「嘘よ…!知っているくせに、サクラの目が本当はあんたなんて見ていない!あの子は…あの人の面影をあんたに重ねているだけなのよ!?」

 すでにいつもの自分の話し方さえ忘れてしまったのか、語尾を延ばすこともない。
 真っ直ぐに、サスケの瞳を睨み付ける。
 くく、と僅かに笑ったサスケに、一瞬にして頭に血が上ったのか、下忍の速度を越えた速さで殴りかかってきた。
 それを余裕すら持って処理する。
 しっかりと掴まれた手首をそのままに、放たれた足もまた、難なく避ける。
 挙句、片手首をとんでもない力で握られ、引き寄せられる。
 単純な力の差に、軽い体が浮き、気がつけば両手が封じられている。
 ち、と舌打ちをして、見上げざま睨み付けてくる少女に、サスケは限りなく冷たく笑った。

「だから?」

 それがどうした?と。
 視界に顔が入りきらないほどに近い状態で、吐息を感じるような近さで、サスケはささやいた。
 ぎり、と少女の歯がなった。

「ふざけんな」
「付き合いたい、って言ったのはサクラだ。俺はそれに答えただけ。お前に何か言われる筋合いはないと思うが?」
「…あんたは、サクラを幸せにはしない。サクラを見てなんかいない」
「それで?」
「…サクラを、悲しませる奴は絶対に許さない。私が、許さない」

 サスケが笑う。
 少女、山中いのはサスケを睨み続ける。
 その瞳に己の姿がうつり続けるのならば、たとえそれが憎悪であっても構わない。

「俺を身代わりにして、サクラは逃げた。サクラを見ないイタチから。それのどこが悪い?あんたが口を出す事じゃないさ」
「っっ!あんたが…!あんたがサクラを好きなら何も言わない!サクラを大事に思ってくれるなら…!」
「…俺をサクラから引き離したいなら、お前が俺のものになればいい。それだけの話だろう?」
「…な、んですって…!?」

 かすれた声に、笑った。

「俺をサクラから引き離してみろよ。サクラが大事ならな」

 思いつきに、更に笑う。サクラが大事ならこの自分からサクラを引き離してみろ。お前が俺のものになればそれは叶うぞ?
 いのは僅かな躊躇いを見せた後、悔しそうにショートの髪を振った。
 もともとほんの少ししかない距離を、いのが背伸びをしてつめた。
 唇と唇が触れ合って、瞳はサスケの肩越しに見えるナルトとサクラの姿を捉えていた。勿論、サスケも気付いていたのだろう。
 サクラの姿が消えて、ナルトがそれを追って姿を消すまで、2人は互いの口を貪り続けた。




  最後に1つ、頬の鳴る音が響いた。

...モドル?




















...キバヒナ


「嫌いか?」
「当たり前」
「別に、俺は嫌いじゃないぜ?」
「そんなの聞いてない」
「俺が言いたいの」
「うるさい」
「好きだよ」
「止めて。私はあんたの好きな女じゃないわ」
「だから、日向ヒナタも今のお前も、俺は好きだって」
「…うるさい。私は、嫌い。あんたなんて」
「でも、犬塚キバ、は好きだろ?」
「………」
「沈黙は肯定とみなします」
「……やっぱり嫌いよ。あんたも、犬塚キバも」
「それなら好きにさせるまで」
「うざい」
「うわー、傷つくね。な、赤丸」
「赤丸も、こんな男嫌よね?」
「…あ、赤丸、裏切んなよ!」
「ほら、ね。赤丸、行こう。こんなご主人ほっといて」
「あ。こら! 赤丸! ずりーぞお前!」
「絶対に嫌い。好きになんてならない。あんたもキバも」
「絶対に好きになるって」
「ならない。ついてこないで」
「っても任務同じじゃん」
「こんな任務、私と赤丸で充分」
「S級なんだぜ? 一応」
「それが?」
「…ったくよぉ。ほっとけねぇんだよ。表も裏も」
「お人好し」
「おうよ」

...モドル?




















...パラレル吸血鬼ナルテマ

「テマリ?」

 少年の呼ぶ声に、少女は、その細い身体をびくりと震わせた。
 今の今まで隣で笑っていた人物の変容に、ナルトは首を傾げて、テマリを見上げる。自分で自分を抱きかかえるようにして、テマリは顔を伏せる。カチカチと自分の鳴らす歯の音がやかましい。
 やばい。
 やばい。

「テマリ?」

 2度目の声。
 不思議そうにナルトは首を傾げて、ひょい、とテマリを下から覗き込んだ。
 無防備な、金の髪…その隙間から覗いた、男にしては滑らかな、白いうなじ…。
 どくん、と心臓が早鐘を打つ。
 全身が膨張し、血が騒ぐ感覚。
 じわり、と、唾液が湧き出る。
 身体中が獲物を求めて騒ぎ出す。
 だめ、だ…。

 ちかちかする視界で、ナルトの心配そうに見上げる瞳を捕らえて、頭の片隅が警告を放った。
 何のために、ここにいる?
 どれだけの間ここに居る事が出来た?
 彼を失ってしまえば…もう、自分は…。

「な、る…と」

 逃げろ、と言いたかった。
 けれども愛しい少年の名は、暴走する身体にストッパーをかけることも出来なかった。先程木の枝に引っ掛けて出来た、頬の切り傷。
 自分の枷を外した、なんとも耐え難いこの芳香。
 禁断の果実。
 これを手に入れてしまえば…自分は、多くを失うのだと。



      す  まない

                 ごめん



    ナ ル ト





 テマリの身体が歓喜に包まれるのに、さほど時間は掛からなかった。
 ず、とすすったナルトの血は、余りにも美味かった。
 信じられない、と言う顔のナルトにかまう事など出来なかった。

 もはや本能。

 生き血をすする、この何事にも耐え難き、欲求。
 甘い甘い、誘惑。


 それなのに。

 どうして、涙なんて―――。










 少女が少年のうなじから口を放したとき、既に少年に息はなかった…。

...モドル?




















...ヤマト隊長の呟き。微アンチ新生7班


 あーーあーあーあーあ。
 勘弁してくれよおーー。

 あのカカシ先輩の班で、あの4代目の落とし子で、あの5代目の直弟子で、あの根からの回し者だっつーから、相当期待してやってきてみれば…。

 なんだ?このお遊戯会は?

 お前ら遊びじゃねーんだぞ?
 これは任務なんだぞ?

 サンドイッチ持ってうきうっきピクニック〜じゃねぇんだぞ?

 チンポチンポ言ってんじゃねーよ。しつけぇ。
 サスケサスケ言ってんじゃねーよ。うぜえ。

 すーこーしーは、まともかと思っていたピンク頭もある意味一番うぜぇ。

 あーあ。

 なんで、里出て少ししかたってねーのにいきなりチャクラ使わされてんだか。

 カカシ先輩。マジ尊敬っすよ。
 暴れ馬2匹。よく手綱取れましたね?

 正直このままこいつら気絶させて運びてぇ。
 したら静かになるんだけどな。楽だし。
 それだと俺が任務違反だしな。

 あーもう面倒くせえ。

 とりあえず風呂にでもはいっとけってんだ。


 ………っつーか、ヒナタ先輩の同期だってからすっげ期待してたのに。

 マジで同じ年なんすか?
 あーありえねーーー。

 もーー帰りてぇーーーー…。


 あああああーーーー!!


 カカシせんぱーい戻ってきてくださーい!!!!

...モドル?