今日のお客様 : 幾見めい・幾見たける 様






「いらっしゃいませー」

 日曜日の夜中、自動ドアをくぐってやってきたのはご近所でも有名ならぶらぶカップル!
 ……に、見せかけた仲良し双子さんです。
 私はらぶらぶエセツインズと呼んでいます。略してらぶエセです。だって双子なのに全く似ていないんですよ?兄弟としても通用しないくらい似ていないのです。

 それにしても珍しいですね、しっかり者の弟さんがコンビニに来るだなんて。
 スーパーの方が安いし新鮮だ!なんてコンビニの中で言う喧嘩売ってるとしか思えない主義の持ち主ですのに。
 何かあったんでしょうか?





 仲良く手をつないでやってきた、らぶエセさん達は入ったとたんバラバラの目的地へ。
 弟さんはお弁当の棚の前でなにやら考え込んでます。
 お姉さんは私の近くにあるお菓子の棚へ。

 らぶエセツインズのお姉さんの方はかなりの美人さんです。
 長くって柔らかそうな黒髪、きらきら輝く大きな瞳。小柄ですけど手足が長くて顔もちっちゃいっ!

 ……ふぅ〜(恍惚)

 癒されます…!しごと仕事でサハラ砂漠のごとく乾ききっていた心がどくどくと潤っていく気がいたします。
 弟さんも実は中々のびけー(美形)さん。ご近所でもおば様方に大人気!バレンタインは危険です!
 …あっ、いえいえ…!私はお姉さんに夢中ですから!やっぱり癒されるのは断然美少女さんなんですよね!!

 おお。季節限定のポッキーを選んだみたいですね。ハロウィンかぼちゃ味。かぼちゃです。かぼちゃ。パンプキンです。個人的にあまり好きくないパンプキンです。かぼちゃのポッキーなんておいしいんでしょうか?いや、おいしい筈がない。
 パッケージは真っ黒でお化けとかガイコツとか並んでてなんだか味と関係ない感じです。
 そんなおどろおどろしいポッキーを片手に、らぶエセのお姉さんはとことこと弟さんの方へ。

「ねー、るーくんこれ買ってー」

 くいくい、と服のすそをひっぱってのこの一言。
 か、かわいいっ!こ、これは原子爆弾なみの衝撃がっっ!!私がこれをされたら『いいです!いいですよっっ!!なんでもいくらでも買います!!むしろ貴女を買います!!!!いえ、買わせてくださいっっ!!!!!』なんて口走っちゃいそうな可愛らしさです。

 でもさすが双子、弟さんは慣れています。

「太るぞ、めー」

 ぐはぁっ!
 今えぐりました!私の心までしっかり抉り取る一言でした!辛辣です、女の敵です!

 さすがのお姉さんも、これにはしっかりダメージをくらったらしく青ざめながらお菓子を元の棚に戻します。
 ああ、雑誌の棚に行っちゃいました。
 ひどいです、弟!それでらぶエセの弟を名乗る資格があると思っているのですか!?いや、ない!(反語表現)





 なんのかんので買うものが決まったらしく弟さんはレジにやってきました。

 さすがしっかり者、コンビニ弁当といえども栄養のバランスを配慮したチョイスです。
 …ふ。所詮はコンビニ弁当…味付けの濃さからは逃げられませんがね。

「これで味噌汁をつければ完璧…」

 独り言は危ない人に見えますよ、弟さん。っていうか普通に怪しいですよ。味噌汁付けたら今日の塩分量完璧オーバーだと思いますが。っつか満足げなところ大変失礼ですが。

 …おや?
 お弁当の隙間からおどろおどろしいパッケージが見えます。
 これはもしかしなくてもハロウィンかぼちゃ味ポッキーじゃないでしょうか。
 でもお姉さんはたしかに元の棚に戻したはず…。

 ちらっと雑誌の棚を見るとお姉さんはまだいます。一歩も動いてない感じです。
 ということは…。ははぁん、いいとこあるじゃないですか。
 戻したお菓子をまたカゴに入れたのですね。

 それでこそらぶエセツインズの弟です。

 ダメージを与えておきながら結局買ってあげてるところが確信犯的な感じですがヤツは良いヤツです。
 ちょっと見直しましたよ、らぶエセ弟!

 私の心の中の拍手喝采を知るよしもなく、らぶエセ弟はお姉さんと仲良く手をつないでコンビニを出ていきました。

「ありがとうございましたー」



 家に帰ってからお菓子に気づいたお姉さんの嬉しそうな顔が目に浮かびます。弟は間違いなく腹の中が黒いのに。
 …らぶでエセな双子に幸いあれ。