今日のお客様 : クルツ&マオ 様





「お嬢ちゃん、トイレ貸してね」
彼は店にはいるなり、私にウインクしながら私の前をさっさと通り過ぎていきました。
「い、いらっしゃいませ!どうぞー!」
慌てて返事をかえします。
はぁ…。金髪碧眼、長い足。なんだか外国人モデルのような方です。
……にしても、妙に早足でしたね。切羽詰まっていたのでしょうか。

お客さんってなぜか、トイレに行くのに絶対走らないのですよ。どんなに切羽詰まっていても早足で頑張っている姿を見るとなんだか……そう、微笑ましいです。断じて笑っちゃいませんですよ?


ぼーっと過ぎ去っていた方向を眺めていますと、自動ドアが開く音がして新たなお客さんが入ってらっしゃいました。
「いらっしゃいませー」
新たなお客さんは、ちょっと猫目ぎみなスタイル抜群の美人さんです。
はぁ〜、いったい何を食べたらあんなにスタイルが良くなれるんでしょう…。
ウエストはきゅっとしまっていて、胸は適度な大きさがあって。むぅ…、うらやましいです。
ついついじぃーっと見つめていると、視線を感じたのでしょうか、猫目美人さんがこっちをちらっと見て笑いました。
は、恥ずかしい〜!!
猫目美人さんは雑誌コーナーで立ち読みを始めます。なんだか時間つぶしって感じです。
ちらちらと外を気にしているところを見ると、待ち合わせでしょうか?も、もしや…デート…とか?
いいなぁ、いいなぁ。
……私もあんな美人さんと一回でいいからデートしてみたいものです。



美人さんっているだけでなんだか場が華やぎます。
立ち読みしてる後姿も素敵です。
あ、トイレに行った金髪モデルさんが出てきましたよ。
妙にすっきりした顔をして手をジーンズで拭いてます。ハンカチ使いましょうよ、金髪モデルさん。
あーらら。真っ先に18禁コーナーへ歩いていきましたよ。
目を輝かして…。本当にうれしそうに雑誌を手に取ってます。
……欲望に忠実なんですね。ちょっとカッコいいと思ってただけに、ショックです。
あ、猫目さんににらまれてます。
そういう猫目さんは普通のファッション雑誌を手に持ってます。
……あのプロポーションだったら何でも似合うんでしょうねぇ。いいなぁ。



突然、猫目さんが雑誌を棚に戻して出入り口に歩き始めました。
ドリンクコーナーの扉を開けて顔を突っ込んでいた金髪モデルさんがそれに気付いて猫目さんを見ました。
「姐さん!?」
「クルツ、ターゲットが動いた!行くよ!!」
猫目さんはそれだけをいい捨ててコンビニを出て行きます。
漢らしいです。素敵です。
クルツと呼ばれた金髪モデルさんは慌ててコーラを2本ひっぱりだしてレジの方に持ってきました。
ポケットから小銭をざらっと出してカウンターに置きました。
「おつりはいらないからね」
そう言ってさっさと出ていっちゃいました。
「あ、ありがとうございましたー!!」


…ターゲットって、2人は探偵だったりするんでしょうか?
むしろ知り合いだったのにお互いに知らないフリをしていたのが不思議でならないです。
何か意味あったんでしょうか…?
そんなことを考えながら金髪モデルさんが残していった小銭を数えました。
3回、数えました。
う〜ん……やっぱり。金髪モデルさん、ちょっと足りないですよ?