本日のお客様:梶文乃さま、梶鉄兵くん、尾白一馬さま
私の名前は清冬立夏(せいとうりっか)18歳。このコンビニでバイトしてる高校3年生です。
突然ですが、趣味は人間観察です。
……誤解のないよーに言っときますけどね、ストーカーとかそういう犯罪行為に手は染めてないですからねっ!?
ただ、このコンビニにやってくるお客さんを観察して、このひとはどういう人なんだろうなぁ〜とか、考え(妄想し)て楽しむのが好きってだけです。そこっ、引かないように!
……さて。今私はちょっとそわそわしてます。
原因は先ほど入ってきた私と同じ高校生くらいの少女と、幼稚園ぐらいの男の子。
仲良く手をつないで入ってきた2人は、今はそれぞれ別の棚のところにいます。高校生の少女は、雑誌コーナでティーンズ向けの雑誌を読んでます。背中まである、柔らかそうな茶色の髪をポニーテールにして、髪飾りをつけてます。背が高くて、すらっとした美人さん!ジーンズのショートパンツ、黒いレギンスがすっごく似合ってます。ちょっと気が強そうな感じが、『お姉さん!』とか『姉御!』ってかんじ。
幼稚園くらいの男の子は、お菓子コーナー。あの年頃って食玩とか好きですよねぇ。私も小さいころはまってました。くりっとした大きな目で、きらきらしながらお菓子を見てる様子は思わず攫いたくなっちゃうくらいカワイイ。目元が『姉御』さんとそっくりだから、親戚か何かかなぁ?姉弟にしては、歳が離れてるような気がします。
「てっぺー、先生来たよ」
いつの間にか、雑誌コーナーから離れていた姉御さんが男の子のところに来てました。
手には、お茶のペットボトルが2本、ジュースが1本。ジュースは男の子のだとして、お茶が2本てことはあともう1人いるんですね?
駐車場を窺うと、さっきまでなかった車が1台停まっててそこから男の人が降りてくるところでした。
「なに、てっぺーそれ欲しいの?お姉ちゃんが買ってあげるよ」
目線を『てっぺー』さんの視線に合わせるようにしゃがんで、そう言う姉御さんはまさに『素敵なお姉さん』って感じです。自分で言ってる『お姉ちゃん』が、果たして血が繋がってることを指した言葉なのか、そうでないのか非常に気になるところではありますが。
男の子が見てるのは『リーゼントくん』なるキャラクターの食玩。……こんな小さい頃から不良に憧れている彼の、将来が非常に心配になりました。
「2人とも、行きますよ〜?」
2人を迎えに来たらしい、車の男性がやってきててっぺーさんを覗き込みました。男性は、短い茶色の髪に眼鏡をかけて、優しそうな目をしてました。
「先生、ちょっと待って今買い物しちゃうから」
慌てたように言う姉御さん。てっぺーさんからお菓子を取るとレジへとやってきました。
「いらっしゃいませ」
私は笑顔でご挨拶。今までまじまじと観察してたなんて悟らせません。それがプロってもんです。
「はい、てっぺー!」
飲み物とお菓子を袋に入れて、姉御ちゃんに渡すと姉御ちゃんはすぐにてっぺーちゃんにそれを渡す姉御ちゃん。ああ、素敵な姉弟って感じです。…でも、私が知ってる姉弟ってもっとドライだったような気もするので、やっぱり親戚のお姉ちゃんでしょうか?
そして、最後にやってきた優しそうな眼鏡さんは2人の親戚のおじさん…よりもうちょっと若い感じだったのでお兄さん?でも女の子は先生って呼んでましたよね…。親戚のお兄さんに家庭教師か何かしてもらってたとか?てっぺーちゃんはあの男性の子供とか。
「ありがとうございましたー」
車に乗り込んでいく仲良さそうな3人を見送りながら、彼らの関係が気になって仕方がない私なのでした。