本日のお客様:苗床 かのこ、椿 初流、花井 桃香、夏草 透太 様
私の名前は清冬立夏(せいとうりっか)。
毎度おなじみ、コンビニ店員の立夏さんです。
さて、今私の目の前では4人の高校生グループが買い物をしています。
女2人、男2人。ほわほわ天然系美少女ちゃんとマニア受けする感じの黒髪おかっぱ眼鏡ちゃん。眼鏡ちゃんの眼鏡がかなり度が強いやつと見ました。外せばかなり目が大きく見えるはずだとお姉さんは踏んでますよお嬢さん。
あとの男2人は正直興味もありませんが、美人さんたちですね。黒髪俺様系と茶髪王子様系とでも言えばいいんでしょーか。
制服がバラバラなので同じ学校じゃないようですが、仲は良いみたいですこの4人。これから、誰かの家で集まって遊ぶらしく、お菓子やらジュースやら選んでいます。
先ほどから注目するべきはなんて言ったって黒髪おかっぱお嬢さんです!
さっきから、なんでそんなにメジャーじゃないお菓子を選ぶのか…!!ポテチの『生姜味』とかならまだしも(いやそれだって、微妙な印象ですが)『にくじゃが味』とかえ、ポテチってじゃがいもじゃん?とか思いません?ゲテモノ代表『くさや風味』をカゴに入れたときには思わず凝視しちゃいましたよ!
「かのちゃん、お菓子きめた〜?」
おお、天然系美少女ちゃんの登場です。彼女の周りにお花が飛んでいる幻影が見えます。ほわほわなお花でもバラみたいなお花でもどっちでも似合いそうですね。さすがは美少女。
「うん、決めたよー。桃ちゃんは?」
「私も。ほら」
……と言いつつポッキーの箱をおかっぱお嬢さんに見せるその姿はそのままポッキーのCMになりそうです。
そしてその笑顔。信頼する者だけに見せるようなその笑顔はCMを見るものの心をがっちりキャッチすることでしょう。恐るべしポッキー美少女。
「お前ら、決まったか?」
あ、美人さん達2人が合流です。それぞれ1.5リットルペットボトルをキャップ部分持ってぶら下げてます。アレ、握力強くないとキツイ持ち方ですよね。さすが男の子。
黒髪俺様系の彼はもう片方の手にいちごミルクの紙パック、そして『まずい!超炭酸』と書いてある缶ジュースも持ってました。どれが誰のなのか、非常に気になるところではあります……いちごミルクはポッキー美少女のでしょうか、雰囲気的に。そしてそれぞれ1人分だと考えると、4人のうち2人は1.5リットルものジュースを1人で飲んじゃう計算になるわけですが。ますます気になります。ドレが誰の?
そしてしゃべりながらさりげなくポッキー美少女とおかっぱお嬢さんの間に割って入る俺様系。あ、ポッキー美少女が不満そうな顔をしてます。え、三角関係?お姉さんわくわくしちゃうよ?
渦中と思しきお嬢さんはきょとんとしています。…天然なのはこっちか?
ちょっと、矢印の方向がアヤシイのが1つあるようですが確かに三角関係。ああ、見続けたい。
そんな、私の願いがかなうはずもなく。
仲良し4人組はそれぞれお会計をしてお店を出て行くのでした。
「ありがとうございましたー」
お辞儀をしながらお見送り。……と、黒髪おかっぱお嬢さんが戻ってきました。まっすぐこちらへやってきます。
「おねえさん」
「はい、なんでしょう?」
「人を観察するときは、もっとバレないようにしなきゃダメですよ」
自分でも完璧と自負している営業スマイル。それをお嬢さんはじっと見つめて爆弾を落としてくださいました。
何事もなかったかのように楽しげに、3人のもとに戻っていくお嬢さんの後姿を見送りつつ、私はバクバクする心臓を手で押さえました。
……なんで、分かったんでしょうかねぇ?