今日のお客様 : ナルト&ヒナタ&シカマル&テマリ 様
コンビニは今日も静かです。
…あんまり静かなのもどうかと思いますけど、お客さんが途絶えてしまう時間帯ってどうしてもありますよねー。
で、一人で入ってくるお客さんとは一対一になっちゃいますので、お客さんもびみょーに居心地悪そうなんですよねー。
なんて、考えてたらピンポンです。
ピンポンという名の扉の開く音です。
ちらりと首を傾けて。
「ひぃっ…!!」
勢いよく戻しました。
………はっ。
おっ、思いっきりダメな声が出ていましたね。
これはもうコンビニ店員にあるまじきミスです。
平静を呼び戻さなければいけませんね。
はーい深呼吸してー。
平静、平静、平静。
すーはーすーはー。
「いっいらっひゃいまひぇー」
―――……っっ!
―――……っっ!?
―――……っっぁああああああああああっっ!!!!!!
かっ、噛んだぁ!!!!!!!!!!
「…なっさけねー」
ぷぷぷっ、とふき出しながら言われてしまいまして。
とりあえず穴を掘って土被って逃げたくなりました。
はい。意味不明ですね。
知ってます。
「ナルト君、失礼だよ?」
そのとおりです。
でもなのです。
そんなにまにま目が笑いながら言っても全然説得力ないです。
「………いらっしゃい、ませ」
「ああ。邪魔する」
「あーめんどくせー」
うぁおっ!!!
けっ、気配ありませんでしたよっ!?
気配!?
いえ、そんなもの分かりませんけどねっ!
いきなり隣に立たないで欲しいって話ですよね!ね!ね!?
いやいや、それ以前にお客様は立ち入り禁止なんですけど!?
っていうか誰ですか!?
なんだか明るい茶色の髪を4つに結んだかわいこちゃん(死語)
と
なんだか真っ黒黒髪を頭上で結んだ三白眼仏頂面のしかめっつら少年さん。
な、なんでコンビニに入って真っ先にレジの内側に入ってきちゃうんですか!?
新手の強盗ですか!?
その冗談笑えませんよ!!!
「あ、お前らずりー俺もそっち側入ったことねーぞ」
「入る場所じゃないよ、ナルト君」
ああもうとてもとてもとても、見たくなかったです。
お会いしたくなかったですよ。
「いっ、いらっしゃいませ?」
泣きそうになりながら、私はそのお久しぶりの2人を見つめたのでした。
ええと、ええとですね?
事のあらましはこうです。
かつて、とある銀行という名のこの場所で強盗事件があったのですよ。
そこで脅されて超ピンチの立場に立たされてしまったあか弱いアルバイト店員が、何を隠そう私なのです!!!!!!(ドヤあ!)
まぁ、それでどうなったのかと言いますとですね。
か弱い女子高生な私には勿論何もできなかったわけです。当然ですよね。
一般人ですからね。
一般中の一般人で、庶民たる庶民ですからね!!
これだけは自慢できる所持スキルですよ!
そして私は出会ってしまったのです。
あどけない顔の天使と物騒きわまりない悪魔の顔を持つ2人組に……っっ!!!(ガタガタ)
そのお2人さん。
そのお2人さんが何をしたかって言いいますと、ですね?
ナイフを持った超危険人物な強盗さん達数名、あっさりと、めちゃくちゃに簡単に、ノしちゃったわけなんです。
いやいやいや。
嘘じゃないですからね!?
嘘みたいな話だけど嘘じゃないんですからね!
あれから三日くらい嘘じゃないかって疑いましたし、今でも嘘だって思いたいですけど!
でも、でも、結局こうやってあの時の2人が目の前にいるってことは嘘じゃないってことですよね。
嘘であっても良かったですけどねー。
って人が回想してる間に何さらしてるんですかこの人たちは!!!!!!
勝手に入ってきて、勝手にそこいらの引き出し開けて、勝手にものあさくってます!!!
新手の強盗ですか!?!!!?
「っていうか、たっ、立ち入り禁止なんですけど!?」
「すまない、つい」
「わりーわりー、つい」
「いや、いやいやいや、ついじゃないですよ!!!!!!!」
「興味あるじゃないか。コンビニの裏側的な感じで」
「興味があってもしないでください!!!!」
「まぁそう固いこというなよ。めんどくせーな」
「なっ!!!!!」
めんどくさい?!
面倒くさいときたもんだ!!!!!!
「ストップ」
うっかり思いっきり怒鳴りそうになった私。
目の前にチョコレートひとつ。世にいうチ○ルってヤツです。毎回謎の新味を突き付けてくるチャレンジャーなヤツです。
持っている小さな手の平。
チ○ルが離れていくと口元だけ笑った人質さん。
「そいつ、めんどくせーっての口癖なんだよ。悪気ねーの」
けらけらと笑う金色さん。
なんで、怒鳴ろうとしたのが分かったんでしょうか?
何はともあれ冷静沈着なコンビニ店員に戻った私としましては、ゆっくり深呼吸です。
「あーで、俺ら買い物来たんだっけ?」
めんどくせーとか言いやがりましためんどいさんが、言います。というかあなたがめんどくさいです。
「あと面白い店員の観察にきたんだろ」
4つかわさんが言います。あ、4つに結んでいるかわいこちゃんの略です。
「そーそー面白いだろ?」
「面白いよね」
「面白くないです!!!!!!!!!」
………涙目で私が叫んだの、当然ですよね?
「これ、うまいのか?」
「見るからにまずそーだろそんなん」
どうやら真剣にお菓子を見繕っている様子の4つかわさんとめんどいさん。
なんだかこっちのお2人は、人質さんと金色さんより奇妙に大人な雰囲気をかもしだしております。
や、年はなんかあんまりかわらなそうなんですけどね?
雰囲気が。
なんか、年寄りくさいって言うか…。
「見ろよヒナタ、コイツ凄くね?」
自分の持っている雑誌を人質さんに見せる金色さん…………ってまてえええええええええ!!!!!!!
そっっそれは!!!!!!!!!!!
なんていうかもうご立派な、発禁!!!!
つまりは18歳未満お断りっていう、ご立派な本ではないですか!!!!
「なんっつーか、胸と腰と尻が全部同じくらい?」
「私、興味ないから」
おおう、ちらりともしない徹底完全無視の人質さん!!!!
かっこいい! なんかかっこいいです!!!
そんな人質さんが立ち読みしているのは、料理本ですね。
『和食徹底攻略!!!!』
なんていう、やったら分厚い完全マニュアルでございます。
コンビニ向きじゃないんですけどねー。
てか、あれ、重くないんでしょうか…???
「ナルトーヒナター帰るぞー」
「は?? マジで? 早くね?」
「ナルト、これ買って」
「はぁ!?!??!?!」
「何、和食徹底攻略? んなもんイラねーだろ。読むだけめんどいだけだっつの」
「シカマルうるさい。いいの欲しいんだから」
なんか。
あの、おっそろしいお2人さんが、なんでかすごく可愛い感じです。
やっぱり子供なんですね。
うふふふふふ。
なんだかほんわかしてしまいました。
わきゃわきゃやってる3人の頭をポンポンポンと叩いて、4つかわさん。
「いいから帰るよ。そろそろ時間がないだろ」
仕方ない、というように、ごくごく自然に人質さんが持つ本…いやもう辞書の域ですよねアレ、を取り上げて、持っている買い物籠の中に入れました。
「あーずりー!!!」
「やった! テマリ大好き!」
「お前らうるせー…ったく。どこのガキだよ」
ピッピッピと、バーコードを通して、袋に詰めてハイ出来上がりです。
私、結構この袋詰めの作業が好きだったりするんですよ。
「ありがとうございましたー」
もう満面の笑顔で挨拶しました。
もう二度とこないで下さいね。心臓に悪いです。
「そうそうねーちゃん、また来るから」
「楽しみにしててね」
「お前らも好きだなー」
「あんまり面倒事起こすなよ」
金色さん。
人質さん。
めんどいさん。
4つかわさん。
それぞれ自動ドアを通り抜ける際のセリフでした。
いや。
ちょ。
………
………………。
……………………………………。
塩、撒いてもいいですかね???(滝汗)