本日のお客様: ジン様
新しいバイトさんが入りました。
この子がまためちゃくちゃ可愛らしいのです!
顔自体は普通の顔立ち、というか愛嬌のある小動物を思わせるくりくりした大きな目をしています。なんだか先がとっても楽しみな感じなのです。絶対美人さんになりますよー。
今はまだあどけなさが残りすぎて子供っぽい印象なのです。
ダークブラウンの髪を高く結い上げて、可愛らしい簪を挿しています。
小さな手の平の貝殻のような爪には可愛らしい花のネイルアート。
薄く色つきのリップクリームを塗った唇は小さいけど少し肉厚な感じです。
身体はぽっきりと折れてしまいそうに細くって小さいのです。
それからそれから、声がまた可愛らしいのですっ!
「立夏さん、よろしくお願いします!」
なんて、もう、もう…かわいいっっ!!!
とにかく元気ではきはきしゃべる。色んなことに気が付くし頑張りやさん。
仕事もどんどん覚えちゃってもう教えることなんてないくらいです。
でもこの子、高校生で冬休みの間だけなのらしいです。えー
休憩も終わりなのでそそくさとレジに向かいます。
ありゃ?
フウちゃんなんだか話し込んじゃってて気づいてないですね。
商品を入れ替えながら話し込んだままなのです。
ナンパでしょうか?
だとしたら実に許せない事態です。
フウちゃんと話してる輩は後姿はすっと背の伸びた好青年感を出しております。
竹刀と剣道着の入った袋を肩に下げているのもポイントが高いですね。
だがしかしです。
その髪型だけは気に食いません。
男の癖にサラサラヘアーの黒髪ポニテ、だなんてっ!
レジに入ったので男の人の顔が見えたのです。
なんていうか…色白さんです。いっそ青い気もしますけど、いい男です。切れ長瞳の眼鏡男子さんです。
どうやらフウちゃんとは知り合いのようですね。
「…だめっ」
あ、フウちゃんの声です。
眼鏡男子さんの袖口を掴んで、必死に訴えています。
ど、どうしたんでしょうか??
「絶対絶対だめ。ムゲンに教えたら絶交なんだからねっ!」
「…フウ」
「だってムゲンの馬鹿、いっつもバイトの邪魔ばっかりして…」
「………」
眼鏡男子さん、無言です。
ていうか、きっと元々あまり喋らない人なんでしょうね。
というか、聞こえないだけかもです。
あんまりはきはき喋る人じゃないみたいですねー。
口は動いているのにフウちゃんの声しか聞こえません。
…というか、こんなマジマジと観察してちゃダメですね。
仕事しましょう仕事。
「ジンに教えたのは特別なんだからねっ!」
………っっ、む、無理です!!
ごめんなさいフウちゃん!
お姉さん気になって仕方ありません!!!!
なんですかなんですか!?
彼氏さんなんですか!?
フウちゃんの彼氏さんなんですか!?
ああもう若干嬉しそうですよ眼鏡男子さん!
表情ほとんど変わらないけどなんとなく嬉しそうです!
これはもうガチって事なんですか!?
そういうことなんですか!?
一つため息をついた眼鏡男子さん。
フウちゃんの頭をいい子いい子して、去っていきました。
その背を見送るフウちゃんの顔は真っ赤です。
………ガチなんですね(泣)
「ありがとうございましたー」
見送る私の声に、フウちゃんが我に返って大慌てで仕事に戻ったのはきっと仕方ないことなのです。
…それにしても、何者なんでしょうね、ムゲンさんとやら。