011 同じ空の下 (WA1 ロディ×ジェーン)


 不安がないなんて言ったら嘘になる。
 寂しくないなんて言ったら嘘になる。

 けれど、それは、一緒に居ても同じこと。
 どうせ不安になるなら、ちゃんと自分のやるべきする事をする方がずっといい。
 寂しいとは思うけれど。
 この空の下のどこかにあいつは居て。
 この世界のどこかで、同じ空を見上げているのだから。

「そうでしょう? ロディ」

 空を見上げて、にっこりと笑った。
 お日様が昇って雲が流れて、風が気持ちいい。
 今日もいい天気。


 同じ空の下、ロディが天を仰ぎ見る。

「おい。どした? ロディ」
「あ…うん。ジェーンの声が、聞こえた気がしたんだ」

 気のせいなんだろうけど。
 でもきっと、彼女は空を仰いで笑っているのだろう。
 自分の好きな、お日様のような笑顔で。



 06/12/07
 















 012 安らぐ場所 (NARUTOスレ ヒナタ+テマリ)


『楽しそうだな』

 音声にはならない声で、そう言われた。目線も、表情もそのままに、答える。

『楽しいもの』

 相手もまた、動かない。
 視線を送る場所は同じ。
 同じ年頃の、子供たち。
 ぐるぐると走ったり笑ったり転がったり。

 自然、顔が綻んでしまう。

『嘘みたいだ』
『…貴女も、嘘みたいに楽しそうよ』

 自分だけじゃない。相手だってひどく嬉しそうに笑ってる。もっとも、普段の彼女を知っていなければ分かりにくいくらいのものだったけれど。

『否定、しなかったんだってな』
『そちらこそ』
『…私たちは、怖がりすぎていたのだと思うか?』
『……そうじゃ、ないと思う。私たちじゃない。ただ、皆が強かったんだ』

 どれだけ、自分たちの姿が違っても。
 これまで騙していたのだと知れても。
 目の前で人を殺してみても。

 それでも、なお、受け入れてくれた人達。

『…ありがたいな』
『…ええ』

 もう一度、穏やかな笑顔を顔にのせて、ようやく2人は向き合った。
 互いに昔から知っている相手なのに、けれど、違う。

 黒い髪。白い瞳。
 彼女はこんなに綺麗な、柔らかい笑顔をしなかった。

 金の髪。緑の瞳。
 彼女はこんなに静かに、穏やかに笑わなかった。

「テマリ!! ヒナタ!! 早く行くってばよ!!」
「何やってるじゃん! 置いていくぞー」
「早くきなさいよー!」

 心から安らげる場所が、ここに出来た。

「行こうか」
「ええ」

 笑って、2人、走り出す。
 子供たちの居る場所へ。



 06/12/08
 















 013 心音 (クロノトリガー クロノ×ルッカ)


 音が、する。
 とくん、とくん―――。
 命の音。

「…生きてる―――」

 ほっとする。
 さっきまで笑って話をしていたのだから、生きているのは、当たり前のことなんだけど。
 けれども。
 静かに眠るその姿を見ると、急に不安になることがある。

 一度、止まってしまったその心臓。

「ルッカ」
「―――っ! …何? クロノ。起きてたの?」
「うん。起きた」
「…そ」

 生きている。
 心臓の音は遠くて聞こえないけれど。
 ちゃんと話して、動いている。

 それだけのことなのに。
 ほっとして息をつく。

 不意に、クロノが手を伸ばして、ルッカの腕を掴んだ。 
 そのまま軽く引き寄せて、腕の中に取り込む。

「………クロノ?」
「うん」

 心臓の音が聞こえる。
 規則正しく、少しだけ早く。

「生きてるよ。―――生きてるから」
「…―――ええ」

 生きている。
 一度失われた魂はちゃんとここにある。

 もう、二度と失わない。
 失わせたりしない。

 クロノの服を、強く、強く、握り締めた。



 06/12/09
 














 014 手紙 (NARUTO スレヒナ独白)


『一生のうちで、手紙を書くのは、きっとこれが最初で最後だと思う。
 この手紙を見て、貴方たちは怒るだろうか? それとも嘆くだろうか?

 私は、今日、この里を抜ける。

 15年。
 木の葉の里に生まれ、育ち、日向宗家の者として生きた。
 また、暗部としても生き、毎日のように人を殺してきた。

 そんな人間が、今更安息を望んではいけないのかもしれないが。

 私は、もう、人を殺したくはない。
 忍としては生きたくない。
 誰よりも多く人を殺し続けた人間が、こんなことを言うのはひどく滑稽かもしれない。

 けれど。
 私は人を守り、誰かと笑い、誰かの共にありたい。
 奪うのではなく、守りたい。

 里の全てを守り、近しい誰かを犠牲にするわけではなく。
 ほんの少しの誰かを守り、生きていきたい。

 里を守るなんて、私の手には大きすぎて、零れ落ちてしまう。
 この両手で守れるだけでいい。
 顔も知らない誰かを守るより、大事な誰かを守って生きたい。

 だから、私はもうここへは戻らない。

 抜け忍として生きれるだけの力は身に付けたから、逃げて、逃げて、逃げ続ける。

 父上、ハナビ、ネジ兄さん、ごめんなさい。
 7班、8班、10班の皆、ごめんなさい。
 火影様、ご迷惑をおかけします。

 追い忍は、容赦しません。
 追っ手を出すならいくらでも迎え撃ちます。
 里の貴重な守り手を減らすこと、くれぐれも無きようお願いします。

 以後会うこともないとは思いますが、お元気で。

 さようなら。


                                     日向ヒナタ』



 06/12/10

 















 015 風に吹かれて (NARUTO現代パラレル カカシ×テマリ)


「寒い」
「冬だからねぇ〜」
「風が強い」
「どうにもなんないしねぇ〜」

 ぶちぶちと言いながら少女は両手を伸ばす。目の前の、いたるもので着膨れた暖かそうな男に。

「なに? テマリちゃん」
「マフラー寄越せ」

 端的で分かりやすい言葉に、瞬きを2回。
 少女の格好は学校帰りそのものといったセーラー服。
 首も足もどこもかしこも寒そうだ。
 そう思って、一番上に着てる大きいコートをひょいとあける。

「………なんのつもりだ」

 細く形の良い柳眉が跳ねた。どこか引きつった、挑戦的な笑みが唇にのる。

「あれ〜分かるでしょ?」
「………」

 少女は思いっきり眉間にしわを寄せた。
 ほわほわっとした男の顔は全く動じない。

 ムカつく。
 寒い。
 コート。
 温かい。

 一段と強い風が、ごう、と吹いて、全身に鳥肌が立つ。
 素肌の部分がたまらなく寒い。

 寒い。

 …………………。

 少女は無言で男のコートの中に収まる。
 腕を回すと、いつもより2・3回りも大きさが違う。一体どれだけ厚着をしているんだこの男は。
 コートごと少女を抱きしめて、男は楽しそうに笑った。
 少女の身体はどこもかしこも冷え切っている。

「寒い」
「うん。温かいね〜」

 突風が吹いて2人の髪と服とをさらう。
 寒さに揃って身震いして。

「家に帰る」
「えーもうっ? 折角のデートなのにー」
「寒い。凍える。凍え死ぬ」

 問答無用と切り捨て、少女は男の首に手を伸ばし、長く巻かれたマフラーを引っ張る。
 ぐぇ、と男の声がしたが気にしない。
 可能な限り背伸びをして、マフラーを男の首から奪い取る。奪い取ったそのマフラーを自分の首に巻き、男の腕を振り払う。

「行くぞ」
「はいはい。お嬢様は我がままなもんでしょ」

 風に吹かれて、マフラーがたなびいた。
 男の言葉に、面白そうに笑って少女は踵を返した。
 寒い寒い風の中、少女と男の姿が消えいった。



 06/12/11
 現代パラレルで、教師カカシと生徒テマリの物語なんていいかも…っ!(笑)

 














 016 夕焼け (NARUTOスレ いの独白)


 夕焼けは嫌いだ。
 赤く世界が染まって、やがて闇の帳に覆い隠される。
 その、中途半端な移り変わりの時期。

「世界は血みどろで〜」

 赤く、より赤く。

「生きる人間は血にまみれ〜」

 やがて、全てはどす黒く。

「…ほんっと、汚いったら」

 手を上げる。
 暗部、と呼ばれる人間の身に付ける暗黒の衣装。
 じっとりと濡れる感触が気持ち悪い。

 夕焼けは、似てる。

 この汚い世界に。
 このどうしようもない世界に。

 この世界に生きる、自分自身に。


 だから、夕焼けなんて嫌いだ。



 06/12/12
 どれだけ私の脳内はスレ全開なんだろう。夕焼け大好きなのに。

 














 017 昼間の森 (NARUTO シカマル×テマリ)


「よく晴れている」
「だな」

 頷いて、手元の本へ視線を戻す。
 隣の女は反対に、空を仰ぎ見る。
 空は見えないが、木々の隙間から零れ落ちる光がまるで宝石の様。風で、揺らめいて、きらきらと輝く。

「昼の森は……いいな」

 女の言葉に、ちらりと視線を上げて、その横顔を伺うと、満足げに笑っている様子が見て取れた。普段は大人を感じさせる女性であるが、今はひどく幼く見える。

「…昼も、夜も一緒だろ」

 自分の口からこぼれた言葉が予想外にとげとげしく、驚いた。なんに対してのとげなのか、それすらも分からない。
 返事が返ってくるとは思っていなかったのか、女はひどく驚いたように振り返った。視線が合う。
 自分がいつもどおりの表情であるのかどうか、少し自信がなかった。

「…そうでもないさ」

 また、女は空を見上げて、小さく笑う。

 ふと、気付く。
 これは嫉妬だ。

 自分以外のものに心を奪われている彼女に対しての、つまらない、独占欲。

「昼は優しいよ。夜はただ冷たいだけだ。どこまでもどこまでも、人に厳しく、冷たい。光も届かない」

 ただ、夜の森は仕事がしやすい。
 暗殺なり、殲滅なり、潜入なり…それが忍の本分だろう。
 既に上忍となった彼女が、ただの一人でそういった任務に就いたりしているのを知っている。
 下忍や中忍の頃とは違う、もっと密やかで、感情の入る余地などない場所。

 奈良シカマル、という個が入る余地などない場所。

 急に、女の姿が遠ざかったように見えた。
 隣に居て空を見上げて、笑っているその姿が。ぼやけて、白くかすんで小さくなる。
 だから、その腕を掴んで。

「シカマル?」
「………なんでもねーよ」

 腕の中に閉じ込めて。きつく、抱きしめた。
 小さな音を立てて、本が膝上から落ちる。

 中忍でしかない、砂の忍でもない自分には、彼女と同じ立場に立つことは出来ない。
 しかも木の葉ではある程度の年にならなければ、暗殺任務等の危険度の高い任務は回りにくい。一人での任務など持ってのほかだ。
 対して、砂では慢性の忍不足が手伝って幼い頃から危険度の高い任務に就く。ある程度の実力がつけばいやおうなしに一人での任務も回される。忍の数が絶対的に足りないため、リスクの高さを問うては居られない。
 砂と木の葉という里では、任務に対する姿勢からして違うのだ。

 だから、彼女と自分が同じものを見ることは、一生ないのだろう。
 昼間の森を優しいと思うことは、一生ない。

 つまらない独占欲から、彼女の瞳を手のひらでふさぎ、薄く色づいた唇を奪った。
 彼女を奪う昼間の森よりも、冷たい夜の森の方がずっといい。



 06/12/13

 














 018 親友 (NARUTOスレ サスケ×ヒナタ)


「親友って、なんだろうな」

 ふと、落とされた言葉に、ヒナタは軽く絶句した。
 普段そう言ったことを絶対に口にしない人物なだけに、気持ち悪い。

「何、気持ち悪い事言ってるの?」

 感じたとおりに素直に言うと、眉間のしわが増える。ふてくされたような顔で、サスケは外を見た。
 人通りの多い道。人ごみの中、あるはずのない金色の髪を探して、軽く視線を這わせる。

「…ナルト君のこと?」
「………」

 沈黙は分かりやすい肯定だった。
 ヒナタは一人頷いて、サスケの横に並ぶ。
 2人共に、今は下忍の格好ではない。サスケは全く違う男に変化しているし、ヒナタも同じ。年も、髪も、瞳の色も、何もかも違う。そうでなければ、サスケがこの里に居るはずはないし、ヒナタと隣に並べるはずもない。

 ついこの前里抜けをしたばかりなのだから。
 多くの犠牲を払って。

「強くなったよね、ナルト君」

 小さく笑って、そう告げれば、サスケの口元が軽くほころんだ。
 金色の髪の彼は、友達だと、親友だとサスケを言った。

 演技でしかない、この"うちはサスケ"を。

「サスケ君は、殺せなかったよね。ナルト君を。………それが答えでしょう?」

 殺す機会は幾らでもあって。
 けれど結局は殺さなかった。

 "うちはサスケ"もまた、うずまきナルトを親友として捉えている。
 遠回りの思考を得て、そう結論付ける。

 ふわりと笑ったヒナタの手を引いて、唇を落とす。
 自分よりも、自分に詳しい彼女は、ひどく優しくて、ひどく愛しい。

 3年後、どういった形での再会になるのか分からない。けれど、木の葉の里を抜けた自分を連れ戻す、という形にはなるだろう。自分はそのときどうするだろうか。
 暗部として生きてはいても、ナルトの中の九尾には勝てる気がしなかった。
 うちはイタチにも勝てる気はしなかった。

 木の葉の全てを捨てて、ただ一人、この暗部仲間の少女だけが残った。
 彼女以外に失うものはなく、彼女以外に欲しているのは復讐に必要な力のみだ。

 それでもまだ、うずまきナルトを親友だと、結論付ける自分がいる。

 悪くない気分だ、そう思って、ヒナタの身体を抱きめた。



 06/12/14

 














 019 昼寝 (NARUTOスレ 砂3姉弟+サソリ)


 砂色の髪が、ふわりと揺れた。
 少女は瞳を細め、前方を見据える。
 その目に映る光景は、ひどく微笑ましいもの。

「全く、それでも忍か?」

 苦笑すると、赤い髪の男が軽く目を開き、口元だけで笑う。
 人差し指を口の前に立てて、静かに、と伝えられる。

 大木の下、どっしりと座り込み、本を読む男の足元で、無防備に眠る2人の忍。
 共に里きっての実力者であり、表と裏と、2つの名を持つ弟達だ。
 けれど、今こうして穏やかに眠る様子を見ると、とてもそんな風には見えない。まるでどこにでもいる、小さな子供のように無邪気に、健やかに、寝息を立てていた。

 任務まみれで、毎日昼夜問わず働き続けている姿より、ずっといい。

 忍としては、似つかわしくない様子なのかもしれないけど。
 笑いながら、弟2人の寝顔を見守る。
 
 久しぶりにとれた全員一緒の休日なのだから、昼寝をするのもいいだろう。

 可愛い可愛い弟達の寝顔を見守りながら、テマリは優しく微笑んだ。




 06/12/15

 














 020 おやすみ (WAF ロディ×ジェーン)


 星を見上げていた。
 夜空にひどく明るく輝く星たちを。
 けれど、ふと気配がして、後ろを振り返る。
 認めた星よりも明るいオレンジに目を細めた。

「ロディ…眠らないの?」

 寒そうに肩を震わせて、不思議そうに聞いてくる。

「ジェーンこそ」
「…あんたが何やってるのか気になっただけよっ」

 呆れたように言って、横に並ぶ。
 その薄い肩をどうやったら温められるのか、考えて、途方にくれた。
 夜風に晒されていた自分の手は冷たいから、触ってはいけない。いつも来ているジャケットも手元にはないし、毛布なんて持っているはずがない。
 どうしようかな、と思って、ジェーンを見る。

「…なっ、何よ」

 じっ、と見つめられて居心地が悪くなったのか、少女はほんの少し後ずさった。

「寒くない?」
「寒いわよっ。当たり前でしょう?」

 じゃあ何で毛布も持たずに、何も上に羽織らずに、こんなところまで来たの?
 首を傾げて。

 ―――心配、してくれた?

 もしかしたら、そうなのかもしれない。
 彼女は凄く優しい人だから。
 とても厳しくて、現実的で、意地っ張りで、けれど優しいから。

「ジェーンは……変わってるね」
「はぁっ!?」
「すごく不思議」
「何が?」
「どうして、君が"カラミティ"なんだろうね。こんなに優しいのに」
「………」

 一瞬で、頬を赤く染めた少女は、本当に可愛らしい。
 こんなに小さくて、細くて、華奢な彼女のどこが"疫病神"だというのだろう。
 最初にそう言った人は絶対におかしい。

「………もうっ。寝るわよっ!!」
「うん。寝よう」

 彼女がこれ以上冷えてしまわないうちに。
 星を見ていた意味なんて、ないから。ただ、眠れなかっただけ。
 見張り番のザックと話す気にもなれずに、少し離れた場所で空を見上げたら、沢山の星があって、思ったよりも綺麗なその光景に見とれていただけ。
 けれど、そんなものより、ずっと大事な君が居るから。
 寝てしまおう。早く。
 出来ることならば、彼女のぬくもりを感じながら。

「おやすみ」

 今ならよく眠れそうな気がする。




 06/12/16
 WAFって書いたけどFはやったことないです。ジェーンも仲間になるみたいだから、一緒に旅してるときはF設定って気持ちで書いてます。
 
















 011〜020まで。
 少しでも楽しんでいただけたでしょうか?
 もしそうであるなら幸いです。
 宜しければ拍手でも一言メッセージででも、気に入ったところを書いていただけると嬉しいです。
 励みになります。

 サイトの文字とか、表とか、真ん中寄せするタグは<CENTER></CENTER>を使ってるんですけど、これってもう非推奨のタグらしいですね。ショックです。ビルダーめ…。やっぱり世の中CSSデザイン…スタイルシートデザインに移り変わっているっていうことですね。
 でも難しいし分からないからしばらくはこのままいきます。