031 染まる(NARUTOスレ ナルト×ヒナタ) 刀を抜く。 今日もまた、血を浴びる為に。血を吸う為に。 どうして。 ―――任務だから。 理由なんて、それだけ。 感情を殺せばいい。 血に慣れて、罵声に慣れて、命を奪うことに慣れて、傷つけることも、傷つくことも慣れて。 ほら、もう何も感じない。 血に塗れて。 血に染まって。 「ヒナタ」 「………なに?」 「一緒に染まれば、怖くないよ」 だから、そんなに苦しまないで。 優しさなんていらないのに。 血に染まる私を、温かな光が照らしてくれた。 06/12/29 ← 032 欠片(オリジナル) 欠片が必要なんだ、って知っていた。 それがいつからかは知らないけど、ただ、気づいたときには、知っていた。 欠片が何なのかは知らない。 けれど自分には何かが足りないのを知っている。 それが何かも分からないけど。 どこかに、ある。 どこかに自分の欠片が存在する。 それだけ、確信している。 誰にも話したことはない。 誰にも話したくない。 完全だと昔は思っていた。 けれど不完全であることを知ってしまった。 完全のままでいたいから、欠片が欲しい。 自分の欠片。 どこにあるのか。 誰が持っているのか。 誰、なのか。 「―――狐雨」 遠くから聞こえた女の言葉に、思わず体の動きが止まった。 全身が縛られてしまったかのように、足がすくみ、遠くの光景から目が離せない。 その女が手を振って、それに振り返る幾人かの少女。 その中の、一人。 息が、止まった。 瞳孔が開く。嫌な汗が背を伝っていく。 少女らが楽しげに笑いあい、同じ方向に集団で歩いていく。 その中の一人が、小さく振り返った。 何かを探すように、不思議そうに、視線を巡らせ………止まった。 遠く、遠く離れたそこから、自分の姿はほとんど見えないだろう。 けれど、確かに、目が合っているのを感じた。 視線が絡み合い、何の偶然か、全くの同時に口を開き…両者共に言葉を形作ることはなかった。 少女は先ほどの女に引っ張られ、笑った。 全身の緊張が溶ける。 ようやく時間が動き出したように感じた。 深く、搾り出すように息を吐いた。 確信、する。 ―――アレが、欠片だ。 06/12/30 いつか書きたい足りない少女と少年のお話。 ← 033 残酷な言葉(NARUTO現代パラレル テマリ) 「好きだ」 何の拍子にか、告白された。 なんとなく、気付いていた。向こうがそういう風に思っていることを。 深く、息を吸った。 これから言う言葉が、彼にとってどれだけ残酷なものかを知っている。 彼の目はひどく真剣だったし、その手が小さく震えているのも分かった。応えたい、とも、思う。 けれど。 「付き合っているヤツがいるんだ」 彼のことが好きだとか、嫌いだとか、そういうの以前に、自分には付き合っている人間がいて、彼とは付き合えない。 はっきり言って嫌いじゃない。好きか嫌いか聞かれれば勿論好きな部類だし、友人として付き合っていて楽しい相手だ。 けれど、それじゃ彼は納得できないだろうし、どうしようもないことも知っている。 「悪い」 「…いや。こっちこそ、わ、悪かったな。変なこと言ってっ」 気持ちは嬉しい。そう思っていることを伝えたい。けれど少しでも期待させるような言葉はもっと残酷だ。 だからただ、いつものように分かれ道で別れた。会話は、勿論弾まなかったし、お互いの顔はぎこちなかったけれど。明日はもう少し、マシな顔を出来るといい。 残酷な言葉おまけ カカシ×テマリ 「何、暗い顔してんの?」 目の前に出てきた顔に、小さなため息をついた。 何でこんなヤツと付き合っているんだか。 「…お前より顔の良いヤツも性格の良いヤツも、幾らでもいるのにな」 「俺より好きなヤツがいないからでしょ?」 平然と言われて、僅かに瞠目した。大きなため息をついて、男の頭をはたく。 「いたっ」 恨みがましく見てくる男を睨みつけた。 「見てたなっ」 「見てましたよっ」 「開き直るなこの馬鹿!」 「えーだってテマリちゃん。告白現場に踏み込んだりなんてしたら修羅場突入しちゃうでしょ?」 「そういう問題じゃないだろ!?」 「テマリちゃん浮気したらどうしようーとか思っちゃうでしょ!?」 「思うな馬鹿!!」 2人、睨み合う。 その勢いで、顔と顔の距離が一気に近づく。 近づきすぎて。 ごん、と額がぶつかった。 「「いたっっ!!!!!」」 互いに額を押さえて蹲った。 あんまりにも痛くて涙が出てくる。目の前で星が散った気がした。 しばらく蹲って。そのまま言う。 「痛いな」 「痛いよ」 「浮気するなよ、カカシ」 「テマリちゃんもね」 ようやく立ち上がって、先に立ち上がっていた男を見上げる。 笑って、笑いあって、手を繋いだ。 好きな人は多くいるけれど、付き合っているヤツはこいつだけ。 自分を好きと言ってもらえるのは嬉しいけど、今はこいつが好きだから。 私は残酷な言葉を吐き続けよう。 06/12/31 おまけの方が長かった。 ← 034 禁断(オリジナル 魔法使いの旅路 エルディオン&フォルス) 手に入れることのかなわぬ禁断の果実。 それが何だって構わない。 いつからそれを望んでしまったのか。 気付いたときには、もう遅かったのかも知れない。 欲しいと、望んでしまったから。 貪欲に。 強く。強く。 強欲に。 欲しいと望んだ。 いつか、必ずこの手にする。 そう、誓ったから。 「師匠ー?」 「…あー?」 「かなりぼーっとしてるっすね?」 「してねぇよ」 「んじゃかなり機嫌悪いっすねぇ」 「まーお前みたいな落ちこぼれを弟子なんかして機嫌悪いのは確かだけどな」 「ししょー………かなり、諦め悪いっすね。もう3年すよ? 俺が師匠の弟子になってから」 「弟子と認めたのは1年前だ」 冷たく言い放って、エルディオン・フォーリスはフォルス・ティレクトを置いて歩き始めた。何事もなかったかのように、フォルスはエルディオンの後を追う。大体1、2メートルの距離を置いて。 空を見上げて、ポケットに手を突っ込んで、ただ呑気に歩く。 「やっぱ機嫌悪いじゃーん」 耳に、フォルスの小さな呟き声を拾って、大きな息をついた。 勝手についてこられて既に3年。弟子として認めて…と言うか認めさせられて1年。 禁断の果実を手に入れるとき、この子供が手元にいたとしたのなら。 そのときは…。 空を仰いで、ただ、瞳を閉じた。 時の流れるままに、ただ、流れよう。 初めて旅に出たときと同じように。 流れ、流れ、流れ続ける。 07/1/1 ← 035 連鎖(オリジナル) 終わりは始まりを示し、始まりはまた終わり、終わりから始まる。 途絶えることのないその連鎖は、どこかで一度断ち切らなければいけないのだろう。 それを、分かっていたとしても、断ち切ることは難しい。 今から自分がすることが、また新たな憎しみを生み、嘆き、苦しむことになる。 けれど。 諦めることが出来ない。 それが出来たらどんなにいいだろうか、と考えるのに。 出来ない。 この連鎖を断ち切れない。 人の命を奪う、ということはひどく重いことだ。 相手の人間の人生全てを奪い、同時に、他者との絆を切り落とすこと。 相手に関わる全てを奪い取ること。 その重さを知りながら、この手に拳銃を握る。 元々女の手には重い物ではあるが、いつもより遥かに重く感じる。 引き金を、引こう。 それがどんな連鎖を生んでも構わない。 06/1/2 拳銃が結構好きなんです。 ← 036 仮面(緑のアルダ 『か弱く、ずるく、卑怯に』の大分後の話 ルダート←アルダ) 仮面のようだな、と感じたことがある。 表面だけ取り繕って、その裏では何を考えているのか分からない。 馬鹿みたいに必死になって体裁を保って、裏では陰口ばかり。 滑稽な仮面を、彼らは被っている。 「仮面、みたいですね」 「…え?」 「ルダート王子は、いつもいつも笑ってて、本心なんて見せてくれないでしょう?」 言われて、少し愕然とした。言った相手は可愛らしくむくれていて、単に嫌なのだろう。本心を見せようとはしないルダートのことが。 けれどルダートとしてはそんなつもりなかったし、まさかそんな風に思われているとは夢にも思わなかったので、彼女の言葉にただ呆然とするしかなかった。 仮面、なんて、被っていたつもりはない。 あんな滑稽な仮面を、知らず知らずに自分も被っていたのだろうか? 「そ…んな、ことは、ないと思うんだけどな」 「そんなことあります。いつもいつもはぐらかして、ちゃんと答えてくれないじゃないですか」 「…うーん。そう言われても困るけど…」 「困ってる顔してませんよ?」 ずばっ、と言われてしまって、ルダートは心底困ってしまう。 そんなつもりない。ちゃんと困ってる。 それを伝える術もなくて、困ったなぁ、と頭を抱えた。 「えーっと。それは占い師の洞察眼?」 「…違います」 じゃあ何?と聞こうと思ったら相手の方がむくれて先に行ってしまった。 「アルダ・ココ? 怒っているのかい?」 「…怒ってません。悔しいだけです」 「…何が?」 心底分からなくて、アルダ・ココの前に回りこんでその表情を伺う。アルダ・ココは、顔を真っ赤にさせて、眦を吊り上げた。 全身で怒っているのがよく分かる。 自分が、たとえば誰かに怒ったとしても、こうはならないだろう。 怒り、という感情そのものを外に出すということは、王族として許されることじゃない。誰にでも感情のままに接していれば、信頼と信用を失うし、政治面でのマイナスにもなる。だからその感情は抑えなければならないと、自分に律してはいた。それが笑顔、という形で外に出ていたのだろう。 もしかしたら自分は本当に仮面を被っていたのだろうか。 そんなつもりはないのだけれども。 「好きな人のことなら分かるんですよ」 聞こえないように、アルダ・ココは呟いて、また、ルダートを置いて歩き始めた。 占いなんていらない。 好きな人のことなら、占いなんて使わなくたって色んなことが分かるのだから。 06/1/4 ← 037 壊れた時計(オリジナル) 「おい、居るか」 足の踏み場もない、という言葉を実現している部屋の中で、家の主を探す。今日はどこに隠れているのか。そう思うと同時、本の中からぴょっこりと金色の頭が生えた。自分から姿を現すなんて、このものぐさなヤツにしては珍しいことだ。 「なんだい君か。この僕に何の用だい? 今は忙しいから後にして欲しいんだけど」 「忙しい?」 「そう、急がしいんだ。この僕が。ああ君、そこら辺はまだ踏んではいけないよ」 「何で?」 「そっちはまだ探していないからさ」 探す、という言葉に、足元を見る。ごちゃごちゃに散乱した本や文房具で埋め尽くされている。 「探しているのは?」 「ああもう煩い動物だね人間と言うのは。時計だよ時計。薄汚れた懐中時計さ」 人間である自分を創ったのは目の前のこいつだし、今現在自分よりも明らかにぺらぺら喋っているのもこいつだ。そう思いはしつつ、座り込み、薄汚れた懐中時計を探してやる。 本を退ければまた本が現れる。ちっとも床が見えてこないことに辟易しながら、ひたすらごみやらなんやらをかき分ける。 「なんの時計なんだよ」 「"天秤"の命さ。時計が止まれば"天秤"の命が終わる。星が終わる」 一瞬で、青ざめた。 「ちょっ!!!! ちょっと待てお前っっ!!!! なんでそんな大事なもん失くしてるんだよっっ!!!!」 「ああもう煩いね。だから探してるんじゃないか。"鳥篭"と"天秤"は同じ時期の作品だから一緒にしてると思ったんだよ」 「それで一緒にしてなかったんだろっ!!! お前それでも神様かよっっ!!!!!!!!!」 「煩い煩い煩い。神様の定義なんて誰が決めたんだい!? 神様は僕しかいないんだから僕が神様に決まっているだろう!」 「そういう問題じゃねーってのっっ!!!!」 「ええい煩い。いいから早く時計を見つけるんだよ君。"天秤"の世界を救いたいならね」 必死になって物をかき分ける。重要なことの説明が遅いのは単に自分のミスの誤魔化したいだけだろう。神様としてはひどくふざけた存在であるけれど、一応創造主である責任だけは理解しているようだから。 やばいやばい、と思いながら机の上に乗る神様の想像物を見下ろす。過去色々な形をした世界が生まれて、時に滅び、時に再生し、長い永い時を刻んでいる。その中で"鳥篭"と"天秤"は新しい方に入る世界だ。 "鳥篭"、は名前の通り鳥篭の形をしている。鳥篭の中に海と大陸があって、鉄柱の合間から水が零れ落ちる。その水は受け皿に落ち続け、たまり続けるのだが、何故かあふれ出すことはない。受け皿の中には色んなものが落ちてくる。海の中の生物とか、手紙の入った小瓶とか、新大陸を目指している船とか、色々。そして鳥篭であるからには、籠に入るのは鳥である。鳥、と言っても、本当の鳥じゃない。人間+鳥。人間のような形をしたものに、大きな様々な種類の翼が生えており、鳥篭の住民は世界を縦横に飛び回っている。籠の中の鳥、と言う言葉が正にその通りであるのだと知る者はいない。 "天秤"、もまた名前の通りだ。2つの秤がバランスをとって存在している。常に釣り合っている秤の上、水があり、大陸がある。釣り合いが取れなくなったときどうなるのか、まだ知らない。今のところ常に同じように釣り合っているから。天秤の住民は人間と獣。獣と言っても2種類あり、知性を持つ獣と知性を持たない獣がいる。右の天秤は人間と知性を持たぬ獣の世界。左の天秤は知性を持つ獣と持たない獣の世界。時折翼を持つ知性ある獣が天秤の境目を越えて、右の天秤に現れるらしい。 世界は、常に不安定だ。"鳥篭"も"天秤"も、完全な世界の形ではないのだろう。けれど神様は創った世界を自ら壊すような真似はしないし、世界のことはその世界の住民に決めさせている。それが神様のやり方。 「………っ。君っ!! 君の右斜め上!!」 「はぁっ?」 神様の言葉に右斜め上を見上げて、危ういバランスの上に懐中時計が引っかかっているのを見つける。棚の、柱がささくれたような、僅かなとっかかりに引っかかり、その下に積みあがった本とか何やらがそれを上手く隠していた。 慌てて時計を手に取り、青ざめる。 「ちょ、こ、これっ!!! こ、壊れてないか!?!?!」 「…何だって?」 懐中時計のガラスが思いっきり割れている。焦って時計と"天秤"を見比べた。 「いや、セーフだ」 神様の言葉に、思わず時計を凝視する。表面上は壊れているようにしか見えない。神様が時計に手をかざして、何か言ったら、時計の形が全て戻る。時計としての形に。先ほどまでのような壊れかけた状態ではなく、まるで新品そのもののような懐中時計。 「おお。さすが神様」 「敬いたまえ」 「いや、失くした時点でどうかっていう話なんだけど」 「…ええい煩い人間だね!」 神様の手が光って、自分の方を向いた。一度だけ、見覚えのあるそれに、ぎょっとしてあとずさる。 「ちょ、おま…っ。止め…っっ」 「神様に対して生意気な君は反省してきなさい」 「っつーーかそれかなり自分勝手ぇええええええええっっ!!!!!」 ぱしゅん、と光が弾けて、一瞬後には収束する。 部屋の中にはもう神様しかいない。神様は手に持つ懐中時計に笑って、"天秤"の横に置いた。 「"天秤"の世界が大丈夫かどうか、その目で確認してくるんだね」 くすくすと笑って、"天秤"と、"天秤"の中にいる筈の人間を思った。 06/1/6 "鳥篭"と"天秤"の世界観を書きたかった。 補足説明で、人間の人は今回と同じように神様に飛ばされて"鳥篭"の方に居た事があって、そのときは"鳥篭"に飛ばされたショックで記憶喪失になってて、うろうろしていたっつー過去があります。 神様とこの人間のいる場所については特に考えてなかったり。 今思うと聖剣LOMのアーティファクトとかと似てるかな。 ← 038 囚われの鳥(NARUTOスレ テマリ+??) 「テマリ様」 声が響く。広い屋敷の中、幾度も、幾度も、繰り返し。 (―――呼んでいる) 「うん。いいの」 テマリは小さく笑って、空を見上げる。どこまでも広がる、青い空。 「私も、カンクロウも、我愛羅も、ここに囚われている。こんなにも空は広いのに」 (囚われの鳥、か) 「うん。そう。…そうだね」 暗部になって知ったこと。 世界は、とにかく広い。カンクロウも、我愛羅も知らない。世界の広さを。 その広さを、教えたいと思う。こんな陰湿で、じめじめとした身動きも出来ないような空間に居る必要なんてない。世界は広くて、行くべき場所はどこにでもある。 ただ、その方法を知らないだけ。ここから抜け出す術を知らなくて、抜け出すきっかけも見出せないだけ。 手を、空にかざす。 暗部時に比べて、あまりにも小さく、細く、頼りない手の平。 こんな手では、誰も救えない。 誰も幸せになれない。 「幸せになる方法。自由になる方法。生き延びる方法。世界を知る方法。まだまだ知りたいことは多い」 (焦っても意味はない) 「うん。知ってる。けど、早いなら早いほどいい。そうだろう?」 (囚われているからこそ、出来る事もある) 「…うん。それも、知っている」 それでも。 早く、早く、早く。 そう思ってしまうのは、自分のわがまま。 まだ分からない。これから先、自分が、自分の弟たちがどうなるのか。 どうすればいいのか、分からない。 知りたいことが多すぎて、手に余る。 力さえ手に入れば、と思っていた自分が情けない。 力だけで全てうまくいくはずがないのに。 小さな手のひら。もっと小さな弟たち。 全部、掴んでいられるように、と願う。 「囚われの鳥は何を考えるのだろうね」 (鳥でなければ分からぬ) 正論だ。 思わず吹き出した。 笑って、空を見上げ、足をばたつかせる。空は広くて、世界も広くて、けれど自分の居る場所はあまりにも狭い。 だから満足なんて出来ない。 鳥のように悠々と羽ばたき、世界をまわれたら楽しいだろう。 一つ、頷いて、今の今まで座っていた屋根の上から飛び降りた。風を切る感覚とか、一瞬の浮遊感とか、もっと長く味わえたら気持ちがいいだろう。 「では、鳥に生まれなかった不幸を嘆こうか!」 (余は人間に生まれなかった不幸を嘆こうか) 「思ってもいないくせに!」 (お主もな) くくっ、と笑って、走った。自分を呼び続ける世話役の元に。 06/1/7 前々からしたいなーって思っている設定。 この設定実はサイト唯一のカンテン表記になっている元カンクロウ誕生日部屋の"来訪者"と同じもの。なんで、カンクロも我愛羅も後でスレるのです。 ← 039 侵食(サムライチャンプルー ムゲン×フウ 十二禁的な?) 昼下がり、ご飯を満足行くまで食べつくし、満腹になったフウはうとうとと畳の上に寝転がる。窓から入る日の光がぽかぽかと暖かく、フウの睡眠欲に拍車をかけた。 「何、寝てんだよてめーは」 声に、ほんの少しだけ目を開く。ぼんやりと長身の影が映って、けれどすぐにまた閉じた。ぼんやりとした思考の中で、気持ちよくまどろむ。 ふと、喉下をなでられた。ごろごろと、猫の子をあやすように。くすぐったくて、目を閉じたまま寝返りを打つことでそれから逃げる。ムゲンが居るであろう方向かに背を向けて、身体を小さく丸める。 指先は一旦引いて、それに安心して、また睡魔に身を預けた。 肩が、引っ張られた。丸まっていた体が仰向けになって、音がするほどに強く畳に押し付けられる。肩口を掴むムゲンの指先が強くくいこんだ。ぽかんとするよりも先に、深く、深く、唇を奪われる。喉奥まで舌が這い回り、小さな舌を絡め取った。口内中を蹂躙され、呼吸もままならずに、抗議の意を込めて自分に圧し掛かる身体に拳を当てた。細身ながらも頑強なムゲンの身体は、小さな抵抗を物ともせず、それすら楽しむように、深く口付けながら、空いた片方の手が着物の襟元を探る。鎖骨の上を辿られ、襟元が崩れていくのを感じた。 真っ白になった頭の中で、息苦しさだけが先行し、喉元が変に動いた。まだ口は解放されない。 息が上手く出来ず、抵抗もままならず、侵食される。身体中の、全てを。 ようやく意識がはっきりしてきた頃、ささやかなお返しと言わんばかりに、ムゲンの背中に思いっきり爪を立てた。 06/12/27 寝込みを襲う獣 ← 040 鎮魂歌(オリジナル) 火が燃え上がる。 人の背ほどもある炎は煌煌と辺りを照らし、女の横顔を赤く染めた。炎の間近、女は瞳を閉じたままに腕を上げる。しん、と静まり返った空間に、笛の音が加わった。 石造りの舞台の上、女は静かに目を開く。切れ長の瞳は人間味を感じさせず、整った容貌もまた冷たい印象を与えた。 誰よりも火に近く、誰よりも熱い場所で、女はもう一度目を閉じた。 『もう、いい。これだけ生きたから、もういい』 蘇る声に、唇を噛む。気持ちは、分からないでもない。元々身体も弱く、病気ばかりで床から起き上がることも出来ない存在にとっては、死んだ方が楽、ということもあるだろう。 目を開いて炎を見据える。 ―――よく、ない。 いい筈がないのだ。 腕を大きく広げた。装飾品が一切ない代わり、幾重にも布を重ねた衣服が風を受け、まるで生き物のように舞う。 女は、笛の音に合わせ、真紅に彩られた唇を開いた。 高く、高く、声が響き渡る。 高音の響きは笛の音に重なり、空気を振動させた。 炎の光を浴びながら、女は歌う。 全ての思いを、全ての祈りを、調べにのせた。 『お前は生きて』 生きる。 だから、生きて。 神よ、何故貴方はこんなにも不平等なのか。 2つの魂を同じ腹に与えながら、何故、こんなにも差を与えたのか。 男と女。 健康で風邪一つ引くことのない、生命力に満ち溢れた、強い霊力を持つ最高の巫女である妹と、身体が悪く病弱で、動くことすら間々ならない兄。 誰よりも大切なのは違いないのに、あまりにも遠い。 謡い終えると同時、笛の音が止んだ。炎の中に身にまとう布の一部を投げ捨てる。 炎はよりいっそう燃え上がり、女はそれを背に舞台を降りた。 神に仕える巫女。 それを神子。 ―――神の子、とも言うのならば。 ならば神よ、子である私の願いを叶えて欲しい。 私はこれから先一生貴方に仕えよう。 私はこれから先一生貴方の為に霊力を使い続けよう。 だから。 今だけは、ただ一人の肉親である彼の為に歌うことをお許しください。 彼に活力を与え、再生の力を分け与え下さい。 そのための鎮魂歌を、お許しください。 炎が燃え上がり、人々がそれを取り囲んだ。手に持つ布を巻いた木々に火を移し、舞台に上がる。舞台の中央に膝まづくもう一人の巫女。装飾品で全身を飾った体が炎に照らされて、それに応えるように踊り始める。舞台の中央で踊る巫女を一瞥し、女はその人垣から遠ざかった。兄の元に向かうために。 ―――鎮魂祭の終わりは近い。 06/1/9 大辞林 第二版 (三省堂) たましずめ-のまつり ―しづめ― 【鎮魂祭】< (1)遊離した、また遊離しようとする魂を鎮め、肉体につなぎ止める祭儀。ちんこんさい。 (2)天皇や皇后などの魂に活力を与え再生する呪術を行い、寿命の長久を祈る儀式。陰暦一一月の中の寅の日に宮中で行われた。みたましずめ。みたまふり。おほむたまふり。ちんこんさい。 ← 031〜040まで。 少しでも楽しんでいただけたでしょうか? 宜しければ拍手でも一言メッセージででも、気に入ったところを書いていただけると嬉しいです。 とても励みになります。 絵を描くのは好きなんだけど、描けば描くほど自分の未熟さを思い知り、描きたくなくなる今日この頃。いわゆるスランプです。描くと描きたくなくなるって嫌やわー。 小説もどうしてもっと上手く書けないのかなって思います。これは期間限定じゃなく毎回毎回年中思ってますね。 |