041 始まりの予感(NARUTO男の子化あり テマリ×ヒナタ) 風影の一家が木の葉へ来た。 風影と、8つになる娘と、7つの息子。もう一人の子供は病気だとか何とか。 日向にも、挨拶に来た。 緊張にがちがちに固まって、挨拶をする。 握手して、頭を下げる。 緊張で倒れそうだ。 「ヒナタ、さん」 「はっ、はい…っ」 名を呼ばれて、慌てて顔を上げると、風影の娘と目が合った。初めて真正面からぶつかった瞳は、濃い緑色で、ひどく大人びて見えた。 あれ? ふと感じた違和感に首を傾げた。 「日向一族の庭はとても美しいと聞きました。案内しては頂けませんか?」 優しげな面持ちでそう問われ、隣に居た父親を見上げると、父はただ静かに頷いた。風影も頷いて、7つの息子の方は首を振った。 「私は遠慮しておきます。お2人だけで行ってください」 彼の辞退の言葉に、風影の娘…テマリとか言ったか…彼女は何も言わずにヒナタを見て、にこりと笑って頭を下げる。下げられた方は恐縮して、おずおずと頷いた。 庭を案内、と言っても、ヒナタが話すことはほとんどなかった。ただ、庭を回るだけで、時折テマリが止まるので、それについて足を止めるだけ。何を見ているのだろうか、とヒナタが首を傾げていると、決まって「あれはなんと言う花ですか?」などと疑問がとんだ。言葉少なにヒナタが応えると、テマリは嬉しそうに笑って「ありがとうございます」と返す。 半分辺りまで来て、テマリが急に振り返った。 驚いて、足を止めると、急な動作に身体がついていかずにつんのめる。 「大丈夫ですか?」 テマリに身体を支えられて、自分が転んだ、ということに気付いた。 「ごっ…ごめんなさい…っっ!!」 「いえ。構いませんよ」 慌ててテマリを見上げると、彼女はにこりと笑っていた。笑っているのに、笑っていないな、と思った。花について聞いたりして、嬉しそうだった少女とはまるで別人のようだ。テマリは何でもなさそうに周囲に視線をめぐらせ、小さく、息をついたようだった。 「て、てまり…さん?」 「ああ。いえ。ただ…」 手招きをするので、テマリに顔を寄せた。その耳に唇が近づいて、そっと囁く。 「あまりにも可愛いから、砂のお嫁さんに迎えたいなと思いまして」 内緒話をするように、こっそりと囁かれた言葉に、ヒナタは目を白黒させて首を傾げる。徐々に顔に血が上って、全身が熱くなった。くすくすと耳元で笑うテマリの息がくすぐったい。 全身赤く染めた少女を可愛く思いながら、テマリは内心息をついた。 ちょっと、いや、かなり、周囲の護衛陣がうざい。 今下手な動きをとると全身串刺しにされそうだ。幾つも感じる視線を黙殺し、ヒナタに笑顔を向けた。 「そろそろ行きましょうか」 「は、はい」 ヒナタはテマリを見上げて、こくこくと頷いた。とてもかっこいい人だ。一人頷いて、思う。 とてもかっこいいのに、どうして、女の子の振りをしているんだろう。 首を傾げて、けれど言葉にはしない。 宝物のように胸の奥にその疑問をしまって、テマリに向かって微笑んだ。 何かが始まりそうな気がする。 そんな気持ちを抱いて。 07/01/10 禁断のテマヒナ。 ヒナタが転んで、テマリがそれを受け止めた瞬間、日向護衛陣の気配が殺気だったのだろうなと思われ。 ← 042 初恋(オリジナル) 「初恋って、実らないものなんだよ」 不意に、何の拍子にか、彼はそう呟いて。 私はそれを聞いてしまった。 彼は私の視線に気付くと、にっこりと笑って歩き去ってしまった。 心臓がばくばくと鳴っている。 凄く、格好よくて、いつも自信に溢れていて、頭も良くて運動も出来て。 眉目秀麗文武両道。 学校中の人気を集める彼が、さっきの瞬間だけはひどく悲しげに、寂しげに見えて、意味も分からずに、胸が苦しくなった。 彼ならどんな人だって振り向くだろう。 彼ならどんな人だって好きになるだろう。 それ、なのに、その彼があんなことを言うなんて―――。 それから、目が彼を追うようになった。 授業中とか、友達と話しているときとか、部活に励んでいるときとか。 今までは気にならなかった小さなことが気になって、彼に関することがひどく大事に感じた。 何をしているのか気になって、彼のことを考えると決まって心臓が早くなる。 あまり気付きたくなくて、あまり認めたくなくて。 けれどもそれは、実らないはずの、初恋であることを知っていた。 嫌だな、と思う。 今まで自分の好きなことに使っていた時間が、彼のことで無為に過ごすようになって、あまり揺れ幅の大きくなかったはずの感情が毎日必死で動いてる。 自分が自分じゃないみたいで、嫌。 どうすればいい? どうしたらいつもの自分に戻れる? 考えて、考えて、答えを知る。 初恋は実らない。 ―――実らない。 だから、告白しよう。 振られてしまおう。 これ以上自分が自分でなくなる前に。 ―――それだけの話なんだから。 07/01/11 ← 043 ぬくもり(クロノトリガー現代パラレル クロノ×ルッカ) 「ただいまー」 返る声がないのを知っているのに、どうしてか必ずそう口にしてしまうのは、もう習慣というしかないだろう。ずっしりと肩にくいこんだ革紐を外す。放られた鞄が重い音を立てた。 一人暮らしをはじめたのは随分と昔のことだが、未だに家に誰も居ないというのは落ち着かない。四六時中家に居た研究者の父親と、それを支える母親が居たからだろう。どこか空虚に感じる部屋の中、疲れた身体を癒すために、ふらふらとベッドに直行する。 いつものようにベッドに飛び込もうと思ったギリギリのところで、違和感に気付いた。 何故か布団が乱れている。それもぽっこりと盛り上がっているのが分かる。 眉をしかめ、そろりと、近づく。 近づいて。 絶句した。 「…………………」 一瞬で力が抜けて、ベッドの上にバフンと飛び込む。ぐぇ、とか言った気がしたが気にしない。 「ルッカー? おーい。痛かったんだけど」 クロノの声を無視して、ごそごそと布団にもぐりこんだ。普段は冷たいだけの場所が、今はクロノが寝ていて、物凄く温かい。その気持ちよさに、自然口元が緩む。 何でクロノがそこに寝ていたのか、とか、何をしに来たのか、とか今はどうでもいい。 この温かなぬくもりがあまりにも気持ちよくて、もう布団から抜け出せない。 「ルッカ?」 クロノの声も既に遠く、ルッカは恋人よりもぬくもりを優先して眠りについた。 07/01/14 ← 044 君の、となり(NARUTOスレ カカシ+ヒナタ) 木の葉にある小さな丘の上に、真っ黒な髪の少女が座っていた。肩先までの黒髪は、艶やかな光沢を放っていた。まだ幼い少女の目は、真っ白だった。本来あるべき場所に瞳孔がなく、ただ、宝石を埋め込んだかのように、辺りを反射するだけの白い瞳。それは、まるで鏡のように全てを映し出す。 少女の膝の上にはおよそ似つかわしくない分厚い書物があって、細い指がページをめくる。 本のページが半分ほどめくられた頃、ふと、少女の上に影が差す。 眉を潜めた少女が顔を上げれば、そこには片目を隠した銀の髪を持つ男の姿があった。 少女は一つため息をついて、手に持っていた栞を本に挟む。差し出された手の平を、綺麗に無視してから立ち上がる。 「気配を消して近づくのは止めて」 向き直ってから、少女はおもむろに口を開いた。少女と言えば聞こえはいいが、実際のところまだ12の子供にしては、ひどく冷淡で感情の薄い声だった。男を冷たくねめつけた瞳は、その特徴故かひどく感情が読みにくい。 「うーん。でも、気配を消さない忍なんて、役に立ちはしないでしょ?」 「そういう問題じゃないわ」 「それに、これも修行の一環と思えばいいでしょ。俺の本気で消した気配を読めるようになったら、ヒナタちゃん大したものだよ〜」 「ちゃん付けも止めて」 「お師匠様に向かって冷たいねぇ。ヒナタは」 肩を竦めた男に、ヒナタ首を振った。冷たいのは、決してヒナタではない。ヒナタはただ男の態度を反射しているだけ。決して心を開こうとせず、感情をあらわにしようとしない男の態度を。 男は軽く笑って、ヒナタの頭を撫ぜる。その行為だけは、たとえ感情が篭ってなかろうと好きだったから、ヒナタは何も言わなかった。 「それで、何しにきたの?」 「んーー。任務」 手に持っていた紙をひらひらさせて、男は笑う。ヒナタはその様を見上げて、口布の下は息で湿気がこもらないのだろうかと考える。男の言う任務とは、ヒナタが表で属する下忍任務でないことが分かっていた。男が持ってきたのなら、それは、火影勅命の任務、暗殺戦術特殊部隊第5班に関するものだ。 ぞんざいに扱われる任務書を男から奪い取り、目を通す。 「行こっか?」 「ええ」 たとえ愛情なんてなくても、ヒナタにとっての居場所は、この男の隣にしかない。 男はそれを知っている。 知っていて、決して愛情を向けようとはしない。信頼すらそこにはない。 あるのはただ隣を歩く権利のみ。 それでもヒナタは男の隣を歩き続ける。 07/1/15 初挑戦カカヒナと思いきや+にしかなりませんでした。 ← 045 一緒に(NARUTOスレ 砂3姉弟) 怖かった。 恐ろしかった。 「来るな!!」 拒絶の言葉。 否定の言葉。 嬉しかった。 ありがたかった。 「「一緒に行こう」」 ただ、一言の、肯定の言葉。 「テマリ、カンクロウ」 呼べば、ちゃんと振り返って自分の目を見てくれる。 それだけのことがひどく嬉しくて、くすぐったい。 けれど同時に、不安にもなる。 姉の瞳も兄の瞳もひどく優しくて、それがすごく嬉しくて、それなのに、理由もない不安に突き動かされるときがある。 「後悔は、していないか」 彼らは、彼らのように本当に強き力を持つ忍なれば、今ある立場よりももっと華々しく、もっと上に上っていける。風影の娘、息子、というだけでなく、もっと、もっと、上の場所に。本来なら彼らのような実力者が、忍者アカデミーを卒業するのにほとんど時間はいらない。生まれた時より忍になることを義務付けられてきた2人は、幼くして徹底した教育を施されている。けれど彼らは普通の子供たちのように、時間をかけてアカデミーを卒業し、その後一度も任務を受けていない。少なくとも、紙に書かれたような単純な任務は。風影が彼らにある程度の自主性を与えているのは、我愛羅に対応出来るのは彼らだけ、という理由に他ならない。 だから2人の立ち位置はひどく曖昧だ。アカデミーでは両者共にトップの成績を誇っていたが、スリーマンセルも組まず任務もしない姿を見て、怪我の後遺症があるだとか、風影の贔屓とか、実際はただの役立たずなのだとか、里の者は言いたい放題である。それを悔しく思うのは我愛羅だけで、2人はいつもそれを聞き流すだけ。 突然の言葉に、2人はきょとんとしてお互いの顔を見合わせた。自分たちだけでなければ見ることの出来ない、この2人の本当の顔を、ひどく愛しく思う。 「何に大して?」 「俺ら、後悔するような生き方はしていないじゃん?」 心底不思議そうに我愛羅と目線の高さを合わせる2人。 我愛羅は苦笑して、首を振った。 彼らはいつも前しか見ていなくて、後ろを振り返るような生き方はしていない。後ろを見る必要がないと切り捨てているわけではなく、歩いてきた道を自分の足で踏みしめ、全てを貪欲に求めてきたという自負があるからだ。己の生き方を幼くして決定付け、それに沿って、まるでそれが当たり前のように彼らは生きてきた。 その真っ直ぐさが我愛羅にはうらやましく、同時に誇らしい。 いつも思考の果てにたどり着く。 彼らが一緒に歩いてくれてどれだけ自分が救われているのか、ということに。 「ありがとう」 「何が?」 「何がじゃん?」 2人同時の言葉に、笑った。 おまけ。 幼い頃、砂の里で迷子になって一人さまよった。迎えに来たのは、何故かぼろぼろの姿のテマリとカンクロウで、2人は同時に我愛羅に手を差し伸べた。 「「一緒に行こう」」 唱和に、きょとんとして、2人を見上げると、傷だらけの顔でひどく楽しそうに笑っているのが見えた。ここ最近塞ぎこんでいた2人しては珍しくて、眉を潜める。それでなくても、ほとんど自分に近づこうとしなかった者達だ。何故、彼らがこんな顔をして、あんな事を言うのか分からない。自分がいない方が都合がいいだろうに。 テマリは何とはなしに我愛羅の頭に手を伸ばし、我愛羅が振り払うよりも先に砂がそれを拒んだ。けれどテマリは気にしなかった。 つい2週間ほど前までなかった我愛羅の額の"愛"という文字をなぞるように、砂に拒まれても、手を差し伸べる。拒まれるたびに傷が増えて、それと同じだけ血が流れた。 「くだらない大人の理由に付き合うのはやめた。やっぱこういうのは嫌だ。性に合わない」 「そうじゃん。我愛羅に近づくなーなんて、うざいし何があるのか知らなかったから従ってたけど、やっぱムカつくし、弟に近づいて怒られるなんてやっぱおかしいじゃんよ!」 「そうだそうだ。もっと言ってやれカンクロウ。ああもう腹がたつ!」 「俺たちだって我愛羅と遊びたいじゃん。せっかく楽しみにしてた弟が生まれたのに、会うなーとか、近づくなーとか、話すなーとか、そんなのあり得なすぎじゃん!」 「全くだ! 我愛羅とご飯食べたり話したり本読んだり散歩したり…私の計画していた失敗しない子育て一ヶ月プランをどうしてくれるんだ…っ!!」 「ちょ、待つじゃんよテマリ…。それ初耳じゃん?」 「お前みたいなバカになったら困るからな!」 ふふん、と胸をそらしたテマリに、カンクロウが口を膨らませた。むっとした顔で、どん、とテマリの背中を押して、そのまま我愛羅の背中にすがりつく。オートの砂すらも追いつかないような速さで。 「テマリに育てられて我愛羅がバカになったら困るじゃん!!」 「な、なんだとお前…っっ!!!」 顔を真っ赤にさせたテマリが、思いっきりカンクロウをにらみつける。盾にされている我愛羅まで身が竦んでしまう。目を白黒させている我愛羅に気づいたのか、テマリは深く息を吸って、呼吸を整えた。奇妙にやさしくて、真摯な瞳でテマリは我愛羅に向き直った。 「我愛羅。お前は、謝罪など要らないかもしれない。必要ないと、言うのかも知れない。それは、仕方がないことだと思う。私たちは愚かで、大事なことに気付いていなかった。もっとも、何が正しくて、何が正しくないのかなんて分からない。それでも、すまなかった、と、言わせて欲しい」 「都合のいい話じゃん。昨日までほとんど会いにも来なかった姉と兄だけど、俺たちは、お前が好きじゃん。もう過去には戻れない。だから、昨日までの我愛羅は守れない。だけど今日からの我愛羅は守りたいじゃん。何も出来なかったから、我愛羅が一番苦しいときに何も出来なかったから、ずっと、ずっと、一緒に居て、守り続けたいじゃん…」 幼いながらも、彼らは自分の意思を貫き通す、真っ直ぐな人間であった。否、それは幼さ故か―――。頑固なまでの意思が、長年押さえつけられていた鬱憤を爆発させ、こうして一人の人間として我愛羅と向き合う。 呆然としたまま、我愛羅は首を振った。 そんなの嘘だ。詭弁に決まっていると、自分に言い聞かせる。つい、2週間前に夜叉丸に裏切られた。同時に父親にも裏切られた。もう信じられるのは自分だけ。 「「我愛羅」」 視線の先の姉と兄は、とても満足げで、とても楽しそうで、どうしてか、泣きたくなった。 「私たちは、ずっと付きまとうから」 「覚悟してろじゃん」 にひ、と笑った2人の笑顔は、ひどくまぶしかった。 里の人間は、幼いからといってテマリを、カンクロウを、頭ごなしに従えさせるべきではなかった。 何故、我愛羅と話してはいけないのか。 何故、我愛羅と遊んではいけないのか。 それを説明するものは誰一人おらず、ただ、それはいけない、と叱り続けてきた。最初から説明していれば、違ったのかもしれない。彼らとて、幼心に得体の知れぬものへの恐怖があっただろう。けれど彼らは、押さえつけられすぎて育った反抗の芽と、生来の頑固な意思とが結びつき、意地となり、我愛羅の持つ特殊なチャクラと砂への嫌悪を易々と飛び越えた。一度飛び越えてしまえばもう怖いものなしだ。 我愛羅の部屋の前で姉と弟はばったりと会った。 ばったり会って、お互いのそのやけにすっきりとした顔に笑って、我愛羅の部屋に突入し、我愛羅が居ないと知ると風影邸を飛び出した。その最中に風影の命で至る者達が止めに来て、けれど彼らが本格的に戦闘隊形に入る前に睡眠剤をばら撒いて逃げた。忍との攻防や、いろいろぶつかったり転んだりで泥が付いたり血が流れたりの散々の状況だったが、我愛羅を見つけた瞬間全部吹き飛んだ。 言いたい言葉は一つだけ。 なんて、いろいろ言うことにはなるんだろうけど。 それでも。 一番に言う言葉は決まっている。 「「一緒に行こう」」 06/01/16 仲のいい3人が大好き。 ← 046 紅水晶(NARUTO現代パラレル カカシ+テマリ。カカヒナ) 「て、てま、テマリーっっ!!!!!」 白昼堂々道のど真ん中で後ろからがばっと抱きつかれ、テマリは大きなため息をついた。 突然の事にも動揺は見当たらない。いかにも慣れていると言わんばかりに、抱き付いてきた男を張り倒す。テマリよりも一回りもでかい男で、ひどく珍しい銀の髪は整った容姿を更に引き立てていた。 「カカシ。落ち着け」 「お、落ち着けるわけないでしょ!? 一大事でしょ!? 大ピンチでしょ!?」 「じゃ黙れ。相談なんて聞かないぞ」 その一言に、カカシは固まって、はたはたと大量の涙を流す。大の男が恥も外見もなく大粒の涙をこぼす様は、ひどく滑稽なものだったが、テマリは全く動じない。 テマリはカカシをずりずり引きずりながら、カカシの部屋の前まで行く。カカシに鍵を催促して、ドアを開けた。一人暮らしをしているテマリとカカシはアパートのお隣さんだ。勝手に部屋の中をあさくって、テマリはお茶を沸かす。どこからかお茶菓子も取り出して、準備完了だ。 「で、なんだ?」 「ひ、ヒナちゃんが話ししてくくれないのーーー! なんで!? なんで!?」 「…まーた女心の分からないことでもしたんじゃないのか?」 ヒナちゃんこと日向ヒナタは、テマリの昔ながらの幼馴染で、年は違えど大事な親友である。その親友と付き合っているのがカカシだ。ヒナタの事で毎回毎回大騒ぎして、テマリに泣き付いてくるので最早こういう事態は慣れっこだった。 「何にもしてないよ!?」 「本当に? 何も? 全然?」 「えーーー……あっ。ひ、ヒナちゃんに上げた誕生日プレゼント気に入らなかったのかなー…」 自身なさげに首を傾げるカカシをせっついて、何を送ったのか聞き出す。カカシはパソコンの前に行くと、ネットで一つの画像を開いた。 「紅水晶…ローズクォーツ、か」 「綺麗でしょ? ヒナちゃんみたいでしょ!? ヒナちゃんの方が可愛いでしょ!?」 「………ほんっと、お前、ヒナタと付き合い始めてから人が変わったな…」 「え?」 「幸せそうだ。良かったな」 「幸せに決まってるでしょ? ヒナちゃんはね、俺の中で一番綺麗で、一番可愛くて、一番好きなんだよ」 ほわほわと笑うカカシにテマリは苦笑する。昔は本当にこんな顔はしなかった。笑っては居たが、目が笑って居ないことも多かったし、基本的に感情が薄かった。 テマリは一時期カカシと付き合っていて、当たり前のように別れた。性格の不一致云々以前の問題で、カカシにとっては遊びのような物だったし、テマリにとってもどうでもよかったから、今もこうして友人をやっている。 「単に、ヒナタは恥ずかしいだけだと思うけどな」 「えっ、ええ!? テマリ判るの!?」 「ま、大体」 「何!? 何!? 何!?」 「だから、このローズクォーツ」 指で示して、頷く。ヒナタは超が付くほど恥ずかしがりやだから、カカシと顔を合わせる事が恥ずかしいのだろう。 紅水晶の宝石言葉。『愛を伝える』 これを誕生日に送られては、なまじ口で言われるより恥ずかしい。 カカシの選んだ紅水晶はペンダントに加工されていて、そういった身に直接付けるものだから余計照れくさいのだろう。 「えっ? こ、この宝石駄目!? いけなかった!?」 「ってわけじゃないけどな。まぁ、自分で考えな。絶対に怒ってるとかじゃないから」 くくっと笑って、お茶を飲む。うんうん言って頭を悩ませているカカシは非常に面白い。本当に性格が変わった。面白い。 こんな姿を見せるようになったのを、ヒナタに感謝したいくらいだった。 06/01/20 もともとカカシとテマリは付きあってて、今はテマリはシカと付きあってて、カカシはヒナと付き合ってる。そういう微妙に際どい4人もいいな。ヒナとシカは結構やきもきしてると思う。年上の彼氏彼女だし。 ← 047 踊りましょう(NARUTO カカシ×テマリ) 優雅に手を差し伸べられて、言葉に詰まった。 「な、何?」 「分からないのか?」 にやり、と笑う様は、その優雅な動きとはだいぶかけ離れていて、けれど素直に綺麗だと思った。 「今日は木の葉の祭りだろう? 音楽も鳴り響きいい感じにアルコールも入ってる。皆して歌え騒げ踊れの大騒ぎだ。ちょっとぐらい砂の使者が木の葉の忍と踊ってもいいだろう?」 女に恥をかかせる気か? と続けられ、唖然とする。 目の前の少女は、自分よりもはるかに年下で、けれど、その優雅な所作とか、普段と違う柔らかいドレスに包まれた体は立派な淑女のように見えた。正直、一目みた時は誰だか分からなかった。話しかけられても、しばらく気づかなかった。ただ、そのガラス細工のように繊細で、儚く見える整った美貌の少女が、低めの声が飾り気のない言葉で話すのは妙に不釣合いに見えた。 もっとも、彼女が誰なのか、を分かってしまえば、そのドレス姿に違和感を覚えたわけだけど。 「髪も、かな」 「何が?」 「違和感。髪型が違うだけで全然印象が違うでしょ」 「そうか? …そうかもしれないな。子供の時からずっと髪型だからな。縛ってないと違和感があるのは私も一緒だ」 いつもあるべき場所にない、肩先まで流された髪に触れて、少女は笑う。いつもと全く一緒の笑顔なのに、いつもと全然違うように見えるのは、髪形も衣服も違うから。 「…砂のお姫様」 「…ああ」 「踊りましょう?」 「勿論」 くすくすと笑いあって、普段ならあり得ない近さで手を合わせる。少女が顔を上げれば、男のあごにぶつかりそうな近さ。男が見下ろせば、すぐにつむじが見えるその近さ。 普段髪を4つに縛り、暗い色の忍装束を好んで付ける砂の忍はいなくて。 普段黒い布で口元を隠し、額宛てで片目を隠す木の葉の忍はいなくて。 ただの男と女は祭りの夜を心から楽しんだのだった。 07/01/20 ← 048 お願い(ガンダムSEED ディアッカ×カガリ) 「何だそれ?」 カガリは身を乗り出して、ディアッカの持つ雑誌を覗き込んだ。と、同時にパンと音がして、雑誌が閉じる。雑誌のページに鼻を挟まれそうになって、慌てて逃げた。 「何をする!」 「何を、って言われても。人が見てるもん覗いといて偉そうな言い草だねぇ」 「別に構わないだろうが!」 「構うって。俺が読めないじゃん」 そうディアッカが肩を竦めて、余裕綽々のその態度に無性に腹が立ったカガリは、彼の持つ雑誌を奪い取ろうとするが、身長差に阻まれかなわない。ディアッカは肩上に雑誌を持ちあげて、カガリの跳ねる様を見ていたが、何かを思いついたのか、口の端がにんまりと持ち上がった。 カガリの目の前に指を突き出し、その動きを止める。 「なっ、何だ…」 「ああ駄目駄目。頼み方がなっちゃいないねぇお姫様」 「何だと!?」 「頼むときは、"お願いします"だろう? 姫さん」 「な、何を言って」 「"お願いします"」 自分よりも遥かに高いところから見下ろされて、妙に凄みのあるディアッカの表情に、視線をさ迷わせた。顔を上げると、ディアッカの顔がニヤニヤと笑っている。それが無性に腹が立って、睨みつけた。 「お?」 「お、お願いします!!」 「何を?」 「はぁっ!?」 打てば響くように返って来た言葉は、カガリの考えていたものでなくて、目を白黒させる少女にディアッカは笑う。 「何を、頼みたいんだって? 姫さん」 「…お、お前…っ!」 「ん?」 至極楽しそうに、けれど声には出さずに笑うディアッカを思いっきりにらみ付けて、その胸倉をつかむ。ディアッカの方が身長が高いのでそれも一苦労だ。 「お前の、その、持っている雑誌を、見せろ、と言っているのだ! この馬鹿者っ!!」 「何か忘れてない?」 「お、ね、が、い、し、ま、す!」 刻み付けるように、区切って言い切ると、ディアッカの胸倉を掴んでいたはずの手があっさりと外されて、思いっきり抱きしめられる。 「はい、正解」 笑い声が近くて、顔が先ほどまでの怒りとはまた別の感情で赤くなっていることが、自分で分かった。無性に恥ずかしくて、苛立たしくて、顔を上げることが出来なくて。 この馬鹿、と男の腕の中でカガリはののしった。 06/01/22 種と種死の他のガンダムとのクロスにハマってます。あと他キャラが主人公な捏造設定とか。 ディアカガいいと思うんだけど。クソマイナーなんですけど。ノイカガディアカガが溜まらんのだ。イザフレとかイザカガがあるくらいなんだから、ディアカガはもっと増えるべきだと思う。ノイカガも。 ← 049 指輪(WA1現代パラレル ロディ×ジェーン) 「それ、欲しいの?」 突然後ろから言われて、びくりと体が動く。聞きなれた耳に優しい声だけど、心臓に悪いことに違いはない。それ、と示されたのはビーズで出来た小さな指輪。そんなに高いものじゃないけれど、あまり豊かでない我が家を思って買うのを躊躇していたものだった。 「欲しいわ。…いつか」 いつかがいつなのかは分からないが、小さなため息を落としてジェーンは振り返った。予想通りの、静かで優しい瞳がそこにあった。 「買わないの?」 「悪い?」 「悪くはないけど。…ジェーンが買わないなら、僕が買おうかな」 楽しそうに、にこりと笑って、ジェーンがその意図を聞くよりも早く、ロディは指輪をカウンターへ持っていく。その彼にしてはひどく早い決断に唖然として見守った。 「はい」 そう、差し出される。買ったばかりの小さな指輪。 「な、んで?」 「理由が必要?」 「当たり前よ。私、あんたに何もしてないわ」 断言すると、ロディが困ったように微笑んだ。 「好きだから。ジェーンの笑った顔」 07/01/23 ← 050 声を聞かせて(NARUTOスレ シカマル→ヒナタ) 「お前さー」 突然振ってきたシカマルの声に、ヒナタは静かに顔を上げた。手にもつ刀を鞘の中へしまう。何?と視線で促すと、シカマルはつまらなそうに頭をかいた。 「全然しゃべんないのな。下忍んときもだけど、暗部んときも」 「………」 冷たく笑うことでそれに答える。別に話すことなんてない。話す、という行為を意識することはない。だから極端に口数が少なく、話すことはほとんどない。下忍時の性格を大人しいことにしておいて良かった、といつも思う。話すことが嫌いなわけではないが、必要でないことはしたくないし面倒で億劫だ。 「めんどくせーヤツ」 つまらなそうに言い捨てて、シカマルは大きなため息を付いた。 「俺は、お前の声が聞きたいんだよ」 小さな呟きをヒナタが拾うことはなくて、シカマルはもう一つため息をついた。 07/01/24 ← 041〜050まで。 少しでも楽しんでいただけたでしょうか? 宜しければ拍手でも一言メッセージででも、気に入ったところを書いていただけると嬉しいです。 とても励みになります。 なんかカカシ出現率が高いですね。昔はスレ世界の情けないヘタレか、変態のカカシ先生(しかも扱いひどい)がすごい嫌で、カプとしてはあまり書く事なかったんですけど、最近結構いいなと思ってます。某様のカカヒナが影響大です。 あとあとディアカガっていいと思うんだよ。不真面目軍人なディアと生真面目暴走お姫様なカガリで、口喧嘩ばっかだけど、信頼関係築いてるといい。暴走するお姫様をディアが「はいはいそうですねーカガリ様の言う通りですよー」とか言いながらいなしている(むしろ火を注いでいるのか…)といい。アンケでディアカガをって方すごく嬉しかったです。涙ちょちょ切れそうです。 |