Eigon&Melna
見習いの心構え
私の名前はメルナ・フォーリス。15歳。男の子のような短い髪と格好をしているけど、れっきとした女のコだ。
私は魔法の師匠と2人旅をしている。
この、立って歩いているのも信じられないくらいよぼよぼのおじいちゃんが私の師匠エイゴン・ザレイウェン。86歳。世の平均寿命を軽く越えた国宝ものの魔法使いだ。
誰よりも天国に近いであろう師匠との旅はなかなかにスリリングで、心臓が止まるような思いをすることも少なくない。
例えば、朝。
旅をしているんだからどうしたって野宿をしなきゃならない時というのはある。
そして、師匠を起こすのはいつだって弟子の役目だ。
まぁ、いつもは師匠が老人らしく先に起きているんだけれど、たまにそうじゃないときがある。
恐怖の朝だ。
「師匠!生きてますか!?」
うかつに揺さぶってはいけない。心臓発作がおきるから。
師匠ほどの年にもなると、天からの迎えはいとも簡単にやってくる。まるで狙ってるんじゃないだろうかと思うほど頻繁に。
声をかけても師匠が動かなければ、耳を師匠の顔に近づけて呼吸の確認。
大丈夫、今日も生きてる。
生存を確認すると、荷物を引っ張り出して朝食の準備。
おいしそうなにおいがあれば、人間は自然と目を覚ますものだ。
火の魔法を使って焚き火を熾す。
師匠を起こすのにはスープがいい。あまり噛まないですむから。
出来上がったおいしそうなスープを師匠の鼻先に近づけて、手扇でにおいを送ると、それまでぴくりともしなかった師匠が目を開けた。
「おお、今日の朝食はスープか。うまそうじゃのう」
「おはようございます」
開口一番、のんきにもそうのたもうた師匠に挨拶をすると、私は壊れそうなほどドキドキしている胸に手をあてて安堵の溜め息をついた。
大丈夫、今日も生きてる。
朝、起きる時が一番危ないのだ。
師匠を起こす時は細心の注意が必要。
弟子の心構え。
それは師匠を死なせないこと。
2006年1月3日
天国に一番近い師匠。相方との爆笑会話で生まれた存在です(笑)
こういう馬鹿な会話ばっかりしておりますww
『魔法を使って50のお題』に挑戦しようと考えた話ですが、魔法ほとんど使ってない…
シリーズものになると思います。
天の迎えに狙われている師匠とその弟子を、よろしくお願いいたしますww