Eigon&Melna
秘密
私の名前はメルナ・フォーリス。15歳。黒い髪、橙色の目で、よく男の子に間違われるけれど、愛嬌のある顔立ちは自分でも気に入ってる。
私の隣に座ってるのが私の師匠、エイゴン・ザレイウェン。86歳。見た目は単なる好々爺だけど、実は伝説にもなってるすごい魔法使いだ。
誰よりも天国に近いであろう師匠との旅はなかなかにスリリングで、心臓が止まるような思いをすることも少なくない。
私達は、空を飛んで旅をしている。大きめの敷布に2人で乗って、荷物を乗せて、それを浮かせる魔法を使っているのは師匠だ。
山道を師匠と荷物を持って上るのと、師匠に魔法を使わせて上るのと、どっちが師匠の体にかかる負担が大きいのかは分からないが、少なくともよぼよぼの老人が大量の荷物を背負って歩く姿はこっちの心臓に悪い。
…いつ、骨が折れるんじゃないかと思えて。
昼食兼休憩を終えて、さぁそろそろ出発しようかというとき、師匠が言った。
「メルナ、おまえさんもそろそろ浮遊の魔法を練習してみんかのぅ?」
「…えっ?」
ちょっと血の気が引いた私の顔は、今絶対、こわばってるに違いない。
「そっちの方がわしも楽ができるからのぅ」
愉快そうに「ひょっひょっひょっ」と笑った師匠は、敷布の真ん中を私にゆずって隅っこに座った。
……落としたら、死ぬ。
背中を冷たい汗が滑り落ちる。
浮遊の魔法は方法も知ってるし、練習もしたことがあるが、それは石とかの小さい物のみ。
いきなり師匠込みな敷布なんて操れるわけがない。
横を見ると、こんな提案をした師匠がお茶が入ったカップを持ってのほほんとしていた。
…そんなに端に座らないで欲しい。もし、バランスを崩しでもして……
……落としたら、死ぬ。
エイゴンが死んだら私は路頭に迷う。
絶対に失敗するわけにはいかなかった。
絶対に、落とすわけには。
…落とすわけには?
そう、要は落とさなければいいのだ!
私は自分の考えに拍手を贈りたくなった。
早速、魔法を実行するために集中する。
敷布を地面から5cmくらい浮かせる。アラジンもびっくりの超低空飛行だ。
ついでに、進むスピードも人が歩くくらいに調節する。
これなら、未熟な私でも十分操れるし、万が一、師匠が落ちても怪我くらいですむだろう。
私は自分の安全第一の行動に満足したが、師匠はそうでもなかったようだ。
「ほっほっほっ、メルナは慎重じゃのう。スリルが足りんぞ、スリルが。
もうちょっとスピードを上げんさい」
――誰のためだ。
私はその時、師匠を思いっきり高い所から突き落としたくなった。
…こう思うことは、実はときどきある。
もちろん、そのことは師匠には秘密だ。
2006年2月3日
メルナ、ものすごくストレスが溜まっております(笑)
まぁ、あんな生活じゃ無理もありませんがww
先の話を考える度に、メルナがかわいそうになってくる今日この頃でございますw