Eigon&Melna
 魔法使いの学園生活





 私の名前はメルナ・フォーリス。
 つい最近師匠と一緒にこの国にやってきた。精霊魔法が得意な女の子だ。
 …女の子なのに、なぜだか男の子の制服を渡された。

 私の前を歩いているのが私の師匠。エイゴン・ザレイウェン、86歳。
 なんだかこの国の王様と知り合いだったようで、その縁でこの魔法学園の臨時の講師を依頼された。有名な魔法使い、らしい。



 そう、今私たちがいるのは魔法学園。
 魔法使いを目指す少年少女たちが集う学び舎だ。



「気がすすまんのぅ…」
 講義をする教室の扉の前まできて、師匠がそうぼやいた。

 …じつは、この臨時の講師という仕事を請けるよう師匠に勧めたのは私だったりする。
 師匠の休養のために。

 私と師匠はとある目的のために長い長い旅をしている。
 それはもう、長い旅を。
 師匠は時間がないと言って先へ先へと進みたがるが、いかんせん師匠は年。休養が必要である。
 1週間くらいの期間で1つの場所に滞在していれば、良い休養になるんじゃないかと思ったのだ。
 それに、魔法学園に滞在している間の師匠の世話は学園のひとがしてくれる。
 私にとっても、休養になるということだ。



「じゃぁ、また後で」
 そういって私は師匠より先に教室へ入った。
 師匠が臨時講師をしている間、私はこの魔法学園の生徒として編入することになる。
 学校なんていったことがなかったから、すごく楽しみ。






 なんとか空いている席を見つけて、座る。
 講壇が低い位置にある広い教室は人でいっぱいだった。
 魔法学園の生徒だけじゃなくて、先生らしき人の姿まである。

 …みんな、師匠の講義を聴きにきているんだ。
 私はちょっと誇らしかった。




「こんにちは」

 話しかけられて隣の席を見ると、女の子が私に微笑みかけていた。
 ふわふわした明るい茶色の髪にリボンを結んでいてすっっごくかわいい。女の子らしくて。

「こんにちは」

 笑顔で挨拶すると、その女の子はちょっと赤くなった。
 …ああ、いいなぁ。私もこの子の半分くらい女の子らしければいいのに。
 そうすれば、男の子の制服なんて渡されることもあるまい。

「ねぇ、あなたあの魔法使いザレイウェンの弟子だってほんとう?」

「ああ、うん」

「やっぱり!」

 目をきらきら輝かせて女の子は言った。

「ねぇねぇ、やっぱりすごい魔法とか使えるの?魔法使いザレイウェンってどんな人?禁呪のなぞを解明したんでしょ?教科書に載ってるもの。禁呪使ってるところとか見たことある?」

 …師匠って教科書に乗っているのか。

 女の子の質問攻めに圧倒されてしどろもどろしていると、師匠が教室に入ってきた。
 とたんに教室が静かになる。

 …助かった。
 内心ほっとしていると、師匠は教壇の前に立ってオホン、と咳払いをした。

 …ああ、また格好つけてる。師匠は基本的にええ格好しいなのだ。

 生暖かく見守っていると、師匠はまたゴホン、と咳払いをした。

 …もしかして。
 嫌な予感に冷や汗が出る。

 ゴホン、ゴホン、ゴホッゴホッ…

 だんだん咳が止まらなくなる。そしてついに。

 …バタッ。

「師匠ぉ〜〜!?」
 私は思わず駆け出した。 






 その後、意識をとりもどした師匠の話によると、咳払いをしたせいで空気が変なところにつっかえたらしい。
 …こりゃ、臨時講師をしている間でも目を離すわけにはいかないな。

 私は師匠のお守りから解放されることを断念した。
2006年6月4日

何がなんだか分からないお話になりましたが(笑)
これからもしばらく学園生活は続きます。

エイゴンは有名なんだよってことで。
そしてメルナはやっぱり苦労性。