Sinya&Siro
異世界からの客人
真夜(シンヤ)は目を開いた。
初めに目に入ってきたのは、眩しいほどの青い空。そして、さんさんと…本当に痛いほどの照りつける太陽の日差しだった。
ただ一言で青い空。とは言っても、それは真夜の見慣れたそれとは大分様相が違う。まず第一に、真夜の知る空はこんなにも真っ青で、深く澄んだグラデーションをしていない。
それから。
これまでに見たことのないような………
それはそれは見事な……………
「…………………………………………………………………砂漠?」
キーンコーンカーンコーン
そんな、非常によく聞きなれた音を耳に捕らえながら、真夜は机から身を起こした。通常授業の終わりを告げるその音は、真夜にとっては目覚まし時計代わりだ。あの音はイヤホンでふさいだ耳にもよく響く。ふわ、と大きなあくびをして、伸びをする。教室にはまだ教師も残っているというのに全く頓着する様子がない。この教師は大丈夫。真夜と友人らの共通して抱く評価だ。勿論、遊んでいい教師かどうか、という評価だが。
一番後ろの席は便利だ。後ろの奴に文句を言われる事がない。
「あークソ…だっりぃ…あちぃ…死ぬ…」
じっとりと汗ばんだ体を起こす。耳で延々と鳴っていた音楽を止めて、全く働かない頭で椅子を斜めにたおしては戻したおしては戻し…とガコガコ鳴らした。ほとんど無意識の行動だが、周りは周りで騒いでいるので特に迷惑もない。
放課後、友人からのカラオケへの誘いを断って、真夜は帰路に着く。別にカラオケが嫌いなわけではないが、野郎共と喉自慢するよりは家にとっとと帰って寝ることを選んだ。
こんな暑い日にカラオケなんてやってられるか。
そうやって、真夜は学校を出た。
人口的な光よりもはるかに強い太陽の光に、眩しそうに目を瞑った。
そして、目を開いた。
目の前に広がる光景は、一瞬前とは全くの別世界。
「…………………………………………………………………は?」
さらさらと崩れる足元の砂。見事に砂しかない空間。はるか遠くまで見ても砂砂砂。そこは…どう見ても砂漠だった。
もう一度目を閉じる。
そして開ける。
やはり砂漠だった。
開けて、閉じて、開けて、閉じて、開けて、閉じて、開けて、閉じて、開けて…そして、はは、と力なく笑う。
「夢だ。や、リアルな夢だ」
ははははははは…乾いた笑い声が乾いた大地に小さく響いた。
真夜が、現実を見つめる事が出来るようになるまで大した時間は要らなかった。
しばらく笑っていたら空気が乾燥しているためか、喉が痛いし、大口開けていた所為で砂が入り込んでいる。ぺっぺと唾を吐いて、あらかたの砂を唾液と共に出してから、制服を脱いだ。
「あっちぃー」
なんせ、暑いのだ。
滅茶苦茶暑いのだ。
夢でも現実でもなんにしろ暑いのだ。
勿論その選択が正しいかどうかを彼が知るわけもない。なんせ彼は砂漠になど来たことがないのだから。
ふと、彼は携帯電話という存在を思いだす。これぞ救い!と、言わんばかりに取り出したが。
「………圏外」
リアルな夢だ。そう呟く。夢だと信じたかった。
真夜は外に出て目を閉じただけなのだ。ただ目を閉じて、開いた。それだけで何故目の前に砂漠が広がるのだ。
あまりの静けさが奇妙に恐ろしく感じ、音楽のスイッチを入れた。イヤホンから流れてくる音楽に安心して、ほとんど働いていない頭で、ふらふらと歩き出す。
歩けば何処かに着く。それを信じて疑わなかった。
そう、今は…まだ。
2006年5月4日
魔法使いの旅路で主人公の一人、シンヤ・K・ザレイウェンの登場です。
本名は『冠 真夜(かんむり しんや)』。
カタカナにしてもおかしくない名前で適当につけて、漢字も適当にあてたのですが、『真夜』と書くたびに『まや』って読んでしまいますuu
絶対教師に名前間違えられたりしてるタイプです。一度はあだ名がマヤちゃんであったに違いありません。
どんまいシンヤ。
ちょっと続いちゃいましたが…uu
次回また彼が登場する事を楽しみにしていただけると嬉しいです。