闇の中で白い白い瞳が、月の光に反射して鈍い光を放つ。

 その白き瞳だけが、夜闇にぼう、と浮かび上がっている。

 静かに月を眺めるその瞳が不意に輝いて、頭から足元まで黒衣をを纏う影は、ふわりと宙に身を躍らせた。















「白眼使い」















 闇の中で一方的な殺戮が続く。

 血が空高く舞い、一つの命が消えうせる。

 鮮やかに鮮やかに、月の光の中で血を吸い続ける2振りの刀は、1人の人間の手によって動き続ける。

 命を奪う行為をなんとも思っていないその動きは、どこまでも残忍で、容赦がない。

 幾多もの命を奪い、最後の1人を切り刻むと共に、赤く、どこまでも赤く周囲を染めた血液が、ごう、
と炎へと変わった。

 血、そのものが炎となりて、煌煌と辺りを照らし、燃やし続ける。

 ただの肉片となったものを燃料に、激しく激しく燃え盛る。

 その炎に、魂までをも奪われたかのように、呆、と立ち尽くしていた、2振りの刀を持つ人間は、不意に、
刀を放り投げた。

 その刀は、どこまでも軽く投げられたかのようで在りながら、鋭く、全てを切り開きながら獲物に向かう。

 獲物、は、いつからそこに現れたのか、木上で静かに佇んでいた小さな黒衣。

 その刀は、容易に黒衣を貫く。


 が。


「―――何者だ」

 と、地に沈んだ黒衣ではなく、全く違うところを鋭く睨みつける。

 冴え冴えとした声音は、聞いただけで命すら失ってしまいそうなほど殺気が満ちているが、
視線に導かれるようにして現われた黒衣は、ただ笑った。

 まるで緊張感など見受けられない。

「どうも初めまして。暗部部隊長梓鳳しほう様」

 その声はひどく幼く高い声音。

 その内容は暗部でしか知らされていない事実。

 変化か?と、梓鳳は眉を潜めるが、梓鳳の知らない暗部などいない。

 そしてその暗部のチャクラの質は全て把握しており、それは変化などで誤魔化せるようなものではない。

 第一、本当に暗部であるなれば、最強と味方にすら恐れられる力をもつ自分に、
あれだけの殺気を向けられてこれだけ平静でいられる者などいない。

 梓鳳の表情は、その狐の面に覆い隠され見えないはずだが、黒衣は梓鳳の戸惑いを見抜いたように、
くすくすと声を漏らす。

「ねぇ、梓鳳様。私の瞳を買わない?」

「…なんだと?」

 その、意味不明な言葉に、梓鳳は探るように声を出し、黒衣は相変わらず無邪気に笑いながら、
瞳だけをさらけ出した。

 その瞳―――は…。


「白眼―――」


 木の葉の至宝とも呼ばれる、瞳孔のない乳白色の瞳。

 木の葉一の勢力を持つ血継限界の一族。

 闇の中でオパールのような輝きを放つ白き瞳が梓鳳を映す。

「暗部部隊長梓鳳の所属する暗部第1班メンバーは悠穹ゆうきゅう瀞稜せいりょうの2人。それで3人。
 残り1人のメンバーは決まっていないんでしょう?
 その最後の1人に白眼持ちを1人買わないか。って聞いているんだけど?」

「―――!!!」

 くすくすと笑みを絶やすことなく、黒衣は暗部の中でも一部しか知らない情報を述べる。

 まるで梓鳳の驚愕を楽しむように。

「戦闘なら悠穹にも瀞稜にも負けないと思うし。情報収集能力は今言ったとおり。
 何よりも貴方達とは気が合うと思うし」

「…自惚れんなよ?」

 確かに戦闘面において、悠穹及び瀞稜は自分よりも劣る。

 だが、悠穹の情報分析力と解析力は誰よりもずば抜けているし、
瀞稜の天才的な技の発想とその繊細なチャクラコントロールは自分でも及ばない。

 それだけを抜き取るなら彼等は確実に暗部1の力を持っており、
第1班とはそれだけ個々の能力が飛びぬけたチームなのだ。

「そちらこそ舐めないでくれる?私の情報収集能力を。分かっているでしょう?
 暗部を探るという事がどういう事か」

 勿論分かっている。

 暗部を詮索するという事は、下手をすれば消されかねない事だ。

 第一下手に探ったとしても出てくることは無に等しい。

 暗部の情報は、全て厳重に厳重に隠匿されている。

 例え暗部であろうとも、その封印と結界の前では挫折しかねない。

「それに」

 すっ―――とその瞳に真剣な色をにじませて、笑いが止まる。

 同時に、黒衣の周囲から梓鳳の周囲までの空間の温度が、一気に下がった。

 その言葉は、梓鳳にとって予想すらつかなかったもの。


「"うずまきナルト"や"奈良シカマル"、"犬塚キバ"が…裏では暗部第一小隊で活躍していますよ。
 なんて私にばらされたい?」


 冷たく。冷たく。

 全てを見透かすオパールの瞳は、梓鳳の…うずまきナルトの心の動きすら見逃さない。

 ぴくりとも動かなかったナルトだが、周囲の空気に動揺が表れている。

 彼にしかありえない不可思議なチャクラは乱れ、ぐるぐると回っている。

「なん…だと…?」

 絞り出した声に動揺の色は濃い。

 それに、黒衣は笑う。

 梓鳳の驚愕すら嘲るように哂う。


「だから言ったでしょう?私の情報収集能力を舐めるな、と」


 木の葉の里で、火影しか知りえぬ情報を掴む事が出来るほどの能力。

 それは、それだけを言うなれば、まさに火影すらも越すほどの能力だ。 

「お前…何者だ…」

「暗部最強とも謳われていながらまだ分からない?」

 そう言って、黒衣は―――初めて顔の大部分を覆う黒衣を取り払った…。

 黒衣の下から現れたその顔、は―――。


「日向…ヒナタ―――」


 白き木の葉の至宝をその目に抱く、一族を追放されかねないほどにおちこぼれと名高い少女。

 つい最近ナルトと同じ時に下忍になったばかりだ。

 常に周りを伺い、大人しく、優しく慈悲深い性格である筈の彼女は、
驚愕のままに零れ落ちたナルトの言葉に、くすりと笑った。

 その笑みは、ひどく冷たく、その表情は彼女で有りながら彼女では有り得ないもの。

「鈍いよ。ナルト君」

 そう言う少女の声は、どこまでも冷ややかで、それでもどこか楽しそうだった。





「―――っく。っっははははは!!!!」 

 なるほど、だから"気が合う"―――か。

 同じ下忍でありながら、その火影に近しいほどの力を抱き、それらを全て演技の中に隠し通す。

 自分達と彼女はまるで同じ。

 同じアカデミーで学びあい、卒業してからは合同任務やら何やらと幾度も接触しといて、
気付かなかったなんてどうにも滑稽だ。

 大体キバなんて同じ班だろう。少しは気付けってんだ。

 全く笑えて笑えて仕様がない。





「いいよ。ヒナタ。木の葉の至宝の白眼使い、1つお買い上げだ。それではヒナタ殿、金額はいくらでしょうか?」

 ナルトは、その面を外して梓鳳の姿でにやりと笑う。

「そうね。私を満足させるだけの任務と知識。それに休める事の出来る居場所でいかが?」

 ヒナタは、その白き瞳を輝かせてくすりと笑う。






「―――かしこまりました。それでは暗部第1班最後の1人は白眼持ち、
 という事で火影様に話を通しておきましょう」












 暗部最強と謳われた暗部部隊長"梓鳳"

 暗部一の情報分析解析力をもつ"悠穹"

 暗部一の技の技術士と言われる"瀞稜"


 個々の能力が非常に特出した暗部第1班。

 それら秀でた能力にてS級ランクの任務をもっとも確実で最短にこなす者達。

 暗部の中でも特殊な彼らの班に、暗部一の情報収集能力をもつ"黒蝶こくちょう"と言う名の忍が加わり、
各国の手配書に載るのはそう遠い事ではない―――。











 初めまして。
 今回から参加させて頂く事になりました空空汐です。

 祝詞お題「瞳」なのですが…あまり主旨に沿っていないですね。
 瞳、と言えば白眼。白眼と言えばヒナタ。
 たまには白眼を嫌っていないヒナタを書こうと思って書きました。
 別に好きでもないけど、便利なので使う、って感じです。



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