『プライド』
彼女のプライドはバカ高い。
プライド選手権なんてあればダントツの高さだろう。
そんなことを笑いながらヒナタは思う。
笑うとどうやら自分は気配がうまく隠せないらしいので、少しだけ気をつけて。
もっとも、お姫様以外にはばれないみたいだから全然かまわないわけだけど。
一時は反省したものの直ぐにヒナタは笑い出す。
今の状況はヒナタにとってとても面白い。
隣にいる紅のお姫様は全くお気に召さないようだったが、ヒナタは現状を心底楽しんでいる。その気持ちのままに笑っていれば、とうとう怒られた。
鋭い視線が飛んでくる。
「何笑ってんのよ!」
「ああ、ごめん。楽しくて」
「何が楽しいのよ。こんな地味な任務、早く終わらせて帰るわよ!」
超危険区域での薬草の採集と彼女にしてみれば、とても地味らしい。
言うだけ言って特攻型のお姫様は先に行ってしまった。笑いながらその後を追う。
地味で楽しくないと言う割りに任務自体を断らないのは、内容が最終的に命を救う任務だからだろう。
彼女の忍としてのあり方はとても不安定だ。
誰よりも命を奪いながら、誰よりも命を惜しんでいる。
一人で戦うのだってそう。
自分と組んだ仲間が死ぬのを見たくないから。
下忍を演じていることだって、あの子供たちの誰かを失いたくないからなのだろう。
だけど、プライドが高いから、そんなことは口に出さないのだ。
薬草を摘みながら、ヒナタは笑う。
プライドの高いお姫様のあり方に、どうしても笑ってしまう。
「サクラ」
「何よ」
「サクラのプライドは素晴らしいね」
「はぁ!?」
わけ分からん、という顔に、ヒナタはまたも笑った。
プライドはどこまで高いのだろう。
どうしてそんなに高くなったのだろう。
何をすれば打ち砕けるだろう。
―――そのプライドを壊したら、どんな顔をするだろうか。
ひょっこり出てきた考えに、それも楽しそうだ、とヒナタは笑い。
笑いながら、笑いながら。
ヒナタは手の中で潰した薬草をサクラから見えないように捨てた。
2009年10月04日