『謎は謎をよび謎のまま終結』










「大蛇丸。愚か者めが…」

 風影の格好をした大蛇丸は、にぃ、と唇を歪めて。
 その、次の瞬間。

 金色の髪が走って。
 黒色の髪が舞って。

 それに付き従う淡い金の髪と桃色の髪が揺れて。

 一瞬にして、大蛇丸という存在は存在しなくなった。

「愚か者めが…」

 火影の言葉は、誰にも聞かれる事なく、風に散った。



 時が凍ったように思えた。
 カカシ、アスマ、紅。
 サスケ、シカマル、チョウジ、シノ、キバ。
 この者達だけが、何故か起きて、その現場を、見ていた。

「ナルト…サクラ…?」
「いの…?」
「…ヒナタ」

 その言葉に、彼らはあっさりと首を振った。

「「私たちは漆黒。2人合わせて漆黒という暗部の人間」」

 にっこりと、ヒナタとナルトは声を合わせる。
 足元に転がる、大蛇丸の死体には目もくれなかった。
 ついで、サクラといのが名乗ろうとするのを、あっさりと止める。目にも止まらぬ速さ、というのを実践して、少女二人の首に刀が突きつけられる。

「それから、こっちがピンク」

 と、ナルト。刀が示すのはサクラ。

「こっちはキンキン」

 と、ヒナタ。刀が示すのはいの。

 刃を首に突きつけられたサクラといのは、何とか口を挟もうと必死。

「ち、ちがっ!」
「せ、せい」

 何とかそれだけを言って、けれどもナルトとヒナタがにっこりと振り返ったのを見て、あっさりと諦めた。

「ううう…暗部第2班所属のピンクです…」
「…同じく…キ…キ、キ、キンキン…です…」

 笑いをこらえているのはナルトとヒナタ。
 はぁ?と口をあけたのは下忍と上忍たち。
 馬鹿笑いしているのはなんと火影、それに何故か砂の三姉弟。
 なんとも間抜けな自己紹介に、カカシが気が抜けた顔で呟いた。

「…き、聞いたことがある」

 誰もが振り返る。

「暗部に…でたらめな名前をしているくせに最強の力を持つ者達が居ると…」
「でたらめ…」
「確かに…」

 思わず頷く上忍下忍のメンバーに、サクラといのが絶望そのもの、といったような表情で、膝をついた。

「うう、あんまりだわ…こんな仕打ち…」
「サクラー…私たち…一生こんな馬鹿みたいな名前背負っていく運命なのかしらー…?」

 涙目で、というより泣いて悔しがる2人に、突きつけられた刀よりも冷たい声が響く。

「「文句、あるなら聞くよ?」」

 大蛇丸の血を吸ったばかりの2本の刀は、無慈悲な輝きを放っている。

「ピンクもキンキンも諦め悪いじゃん。こいつらに出会ったのが運のつきじゃん」

 腹を抱えながら言い放ったのは、カンクロウ。
 
「ピンクにキンキン!全くいつ聞いても笑えるな!」

 くくっ、人の悪い笑みを浮かべるのはテマリ。

「諦めの悪い…」

 堪えつつ、堪えきれずに横を向いて噴き出しているのは我愛羅だ。

「ほっほっほ。全く持ってその通りじゃの」

 最後に止めを刺したのは火影。
 サクラといのはますますうな垂れる。

「さて、中忍試験の結果発表じゃ。うちはサスケ」
「は?はい」
「不合格じゃ。力は充分なものだが、常に全力では守れるものも守れん。精神面においても未熟じゃ」

 一刀両断され、サスケはサクラやいのと同じようにうな垂れた。

「奈良シカマル、お主は合格じゃ。人を率いるのに充分な素質を持っておる。ただし、持久力、チャクラ量にはまだまだ改善の余地あり」
「ご、合格ぅ!?」

 思わず声を上げて、ずり下がったシカマル。その顔は露骨に面倒そう。

「油目シノ、お主は不合格。コミュニケーション能力に欠ける。ただし諜報部に入れ。今から鍛えてもらうのじゃ」
「………」

 シノはただ頷く。その顔は相変わらず何を考えているのか分からない。

「砂三姉弟、お主らは現状維持。お主らもじゃ」

 火影が示したのはナルト、ヒナタ、サクラ、いのの4人。
 ただ賛同の意を彼らは示した。
 もっとも、サクラといのは未だ涙目で、テマリとカンクロウは笑いが収まってはいなかったが。

「それでは解散」
「OK・事後処理」
「それじゃあ行きましょ」

 ナルトとヒナタは軽快なフットワークでサクラといのを持ち上げた。
 と、同時に、素晴らしい脚力で地を飛び立つ。
 そして、響き渡るピンクとキンキンの叫び声…。

「いやーーーーーー!!!!!」
「私は行きたくないわよーーー!!」

 彼女らの木霊も消え去らぬうちに、

「では、火影様。我ら三姉弟、里へ帰らせていただきます」

 笑いながらテマリとカンクロウ、我愛羅は頭を下げ、下忍では有りえない速さで消えうせた。


 それらは本当に一瞬のことで。
 唖然、としたまま、上忍と下忍は残される。

「えっと…火影、様?」
「驚かせたかの?」

 そりゃあ大いに。
 色々と引きつらせたままに、彼らは頷いた。
 驚きの連続過ぎて、頭がついていっていない。

「ま、そういうことじゃ」

 何が?
 実は中々にアバウティーな火影様。
 どうやら説明が面倒だったのでこれで終了という事にしたようだった。


 そうして、大蛇丸による木の葉の侵略活動は終わりを告げた。








 多くの謎を残して…。
適当な火影様が好き(笑)