囚われの鳥




「テマリ様」

 声が響く。広い屋敷の中、幾度も、幾度も、繰り返し。

(―――呼んでいる)
「うん。いいの」

 テマリは小さく笑って、空を見上げる。どこまでも広がる、青い空。

「私も、カンクロウも、我愛羅も、ここに囚われている。こんなにも空は広いのに」
(囚われの鳥、か)
「うん。そう。…そうだね」

 暗部になって知ったこと。
 世界は、とにかく広い。カンクロウも、我愛羅も知らない。世界の広さを。
 その広さを、教えたいと思う。こんな陰湿で、じめじめとした身動きも出来ないような空間に居る必要なんてない。世界は広くて、行くべき場所はどこにでもある。
 ただ、その方法を知らないだけ。ここから抜け出す術を知らなくて、抜け出すきっかけも見出せないだけ。
 手を、空にかざす。
 暗部時に比べて、あまりにも小さく、細く、頼りない手の平。
 こんな手では、誰も救えない。
 誰も幸せになれない。

「幸せになる方法。自由になる方法。生き延びる方法。世界を知る方法。まだまだ知りたいことは多い」
(焦っても意味はない)
「うん。知ってる。けど、早いなら早いほどいい。そうだろう?」
(囚われているからこそ、出来る事もある)
「…うん。それも、知っている」

 それでも。
 早く、早く、早く。

 そう思ってしまうのは、自分のわがまま。
 まだ分からない。これから先、自分が、自分の弟たちがどうなるのか。
 
 どうすればいいのか、分からない。
 知りたいことが多すぎて、手に余る。

 力さえ手に入れば、と思っていた自分が情けない。
 力だけで全てうまくいくはずがないのに。

 小さな手のひら。もっと小さな弟たち。
 全部、掴んでいられるように、と願う。

「囚われの鳥は何を考えるのだろうね」
(鳥でなければ分からぬ)

 正論だ。
 思わず吹き出した。
 笑って、空を見上げ、足をばたつかせる。空は広くて、世界も広くて、けれど自分の居る場所はあまりにも狭い。
 だから満足なんて出来ない。
 鳥のように悠々と羽ばたき、世界をまわれたら楽しいだろう。
 一つ、頷いて、今の今まで座っていた屋根の上から飛び降りた。風を切る感覚とか、一瞬の浮遊感とか、もっと長く味わえたら気持ちがいいだろう。

「では、鳥に生まれなかった不幸を嘆こうか!」
(余は人間に生まれなかった不幸を嘆こうか)
「思ってもいないくせに!」
(お主もな)

 くくっ、と笑って、走った。自分を呼び続ける世話役の元に。
 06/1/7
 前々からしたいなーって思っている設定。
 この設定実はサイト唯一のカンテン表記になっている元カンクロウ誕生日部屋の"来訪者"と同じもの。なんで、カンクロも我愛羅も後でスレるのです。

 現在2009年1月なので、どれだけ放置かよく分かりますね。はい。
 このサイト長く続いてるんだなぁ。
 ひたすら100題38番目『囚われの鳥』で書いたものです。