*ナルヒナとヒアシ
「ヒナタ」
「はい、父上。…あっ、あの、何か粗相でもありましたでしょうか…?」
じっと見つめてくる父親の視線に、ヒナタは落ち着きなく指をあわせる。
ついさっきまで毅然、とまではいかなくとも、柔らかな雰囲気で泰然としていたというのに、あっというまに昔の自信ない引っ込み思案な少女に戻ってしまう。
それにヒアシはついつい苦笑して、いいや、と首を振った。
「いや、違う。そうじゃない」
「あ、はい…」
ではなんなのだろう、と首を傾げかけ、そんな態度はよろしくないと慌てて正すヒナタ。師走の最後の日となり、散々集った客人の中にいるヒナタは視線の集中砲火を浴びていると言ってもいい。だから、その挙動には日向宗家長女として色々が必要なのである。
「おまえに客人だ」
「え?」
きょとん、として、ヒナタは己が父親を見やる。
こんなに忙しくて大変な年の暮れ。こんな日に改めて紹介するような客がいるだろうか? そもそも日向の親戚や傍流、国の主要人物や繋がりの深い忍の系列には挨拶済みである。
―――もっとも、年が明けたらもう一度晴れ着で回る必要があるのだが。
と、ヒアシが体をずらし、後ろに連れてきていた人物を見せる。
ヒアシが大柄なこともあって、ヒナタは今の今まで気づかなかった。
「よ、ヒナタ」
「あ……」
金色の眩しい髪と。
やんちゃだけど凄く優しい瞳。
―――認識して、ヒナタの頭に一瞬で血が上る。
まるで瞬間湯沸かし器。
ぷしゅーと音が立つような錯覚。幻覚。
カチン、と硬直したヒナタに、ヒアシは苦笑し、その原因となった男は心底慌てた。
「ひっ、ヒナタ?! 顔真っ赤だってばよ! 風邪だってば!?」
「え、あ…っ! ちっ、違うの。その、驚いちゃって…」
「そうだってば? それならまぁ、いいってば。でもさ、気をつけるってばよ! 体調管理も忍の仕事だってば!」
にしし、と笑いながら、保護者っぽくたしなめる。なんせ男がヒナタに何かを教えたり注意する、ということはとても少ない。どことなく嬉しそうに胸をはって、びしっとヒナタの鼻先に指をつきつける。
「う、うん…うん。気をつける。…なっ、ナルト君も、ね?」
それに真っ赤な顔のままヒナタはコクコクと頷いて、にっこりと笑う。その顔は、彼女とナルトがまともに話すようになった頃では想像も付かないようなモノ。
不意打ち気味の慈しむような優しい笑顔に、ドギマギしながらナルトは頭をかく。
照れくさそうに、眩しそうに、ヒナタの笑顔を見下ろして、にっと笑った。
「それじゃ、行くってばよ、ヒナタ!」
「…え? ど、どこに?」
「皆のとこだってば! 年末集合して初詣に行くってば。ヒナタはバタバタしてて皆言い出せなかったってば」
正確には、伝えようにも本当にヒナタは家の準備やら挨拶回りやらなんやらで、任務がないにも関わらず全く掴まらなかった。伝言を頼もうにもツテも何もない下忍中忍上忍はシャットアウト。完全なる門前払い。というか、恐らく忙しくてそれどころじゃなかったのだろう。現に、ヒアシも今日初めてそんなことを聞いた。普段ならどんな小さなことでも耳に入るのだが、彼自身毎日雑務と新年の準備に追われていた。
これが木の葉の旧家日向の威力か、なんてコトを思って撃沈した輩が沢山いる事をヒアシもヒナタも知らない。
「で、でもハナビもまだ」
「大丈夫だってば。おっちゃんには許可も取ったし、それに、綱手のばあちゃんがヒナタとハナビの影をちゃんと準備してくれるってばよ!」
「でも…やっぱりちゃんと自分でしなきゃ…」
生真面目なヒナタにとっては、代理を使って休もうなんてもっての他。けれどその目はいいなぁ、行きたいなぁと言っている。しっかり目で雄弁に語ってるのに、でもやっぱり出来ない、と諦め顔。
しゅん、と落ち込んでいるヒナタの背をヒアシは押す。
「ヒナタ。行ってあげなさい。ハナビもすぐに行かせよう」
その、厳格な父とは思えない言葉に、ヒナタは驚愕する。
厳格で躾に厳しくて、真っ直ぐな父親の見せた優しい顔。
…違う。優しいことは知っていた。
厳しいのと同じくらい優しいのはちゃんと分かってた。けれど、厳しいから、厳格で真っ直ぐだから、実力のない自分が悲しくて、きっと自分なんか見てもらえないのだと思った。実力のない子は日向にはいらないから、真っ直ぐで厳しい父にはいらないから、と。そう、本当に思っていた。
そんなの、父親を信用していないのと一緒だ。
厳しい言葉に隠された裏に優しさはちゃんとあった。
幼いヒナタはそれに気が付かず、ようやく最近分かるようになっただけ。
だから。
「はい!」
こんなに厳格で真っ直ぐで誇らしい、父親のたまにしか見えない優しさに甘えても良い。 それは何も悪いことじゃない。お互いに一歩下がった状態から抜け出すために必要なこと。
まだまだ父と娘の交流は未成熟。
改良の余地は幾らでもあって、親子らしくなるには色々あるに違いない。
それでも、一歩一歩進んでいるから。
ナルトに手を引かれながら、ヒナタは笑う。
本当に、本当に幸せそうに、嬉しそうに、満開の笑顔で。
だからナルトも嬉しくて笑う。幸せだと笑う。
そんな2人を見守りながら、ヒアシもまた笑う。その目元が驚くほど優しいことに、残念ながら自身では気づかない。
「行って来ます…父上!」
「ああ、行ってらっしゃい」
風の様に竜巻のように、ナルトはヒナタを攫っていく。それを穏やかな視線で見送ってからヒアシは彼らの去った廊下を後にした。
きっと来年は今年よりももっといい年になるに違いない―――。
*サスいのとキバ。
目の前には大きな屋敷。
中にはたった一人の住民がいる、筈である。
ので、キバは思いっきり声を上げる。
ここまで乗ってきた赤丸もぎゃんぎゃん吠える。
よって、思いっきりご近所迷惑公害レベルなのだが、どうせこの中の住民以外に大して人はいない。
「サっスケーいるかー?」
「……キバか」
戸が開く。
寝起き、と言った不機嫌そのものの声。
いつもはぼさぼさ無造作ヘアーながらも、しっかりセットされてる髪型なのだが、今日は全く見事にぼさぼさなままだ。
しかもそれをくしゃりと自分で潰しながら、不機嫌そのものの顔でキバを睨みつける。
端正な顔もそれでは台無しである。
「今日、皆集まるだろ? 色々買ってきたから入れろって」
けけ、と笑って差し出す買い物袋。
主にビールとかのアルコール類にナッツや乾物のおつまみだ。
やれやれとキバを招き入れるサスケ。
黒髪の美男子は、100年の恋も冷めそうな顔で欠伸して、黒のニットパーカーに手を突っ込む。全く気取ったところのない素の姿。
それを目にするようになったのはいつのことからか。
いつまでもくつくつ笑っているキバに、サスケは半眼で薄気味悪そうに身を引く。
「なんだよ。気持ちわりーな」
「いやいや、木の葉アカデミー人気ナンバー1のモテ男の正体がこれか、と思ってな」
「………」
憮然、とした顔でサスケは黙り込む。そう、まさしくその顔こそ、人気ナンバー1を勝ち取ったクールでかっこいいサスケ様。
「んな昔のこと俺の知ったことか。それより、人気ナンバー1のモテ女の正体がそこにあるぞ」
ふすまを開け放って、現状を示すサスケ。
忌々しげな、けれど面白がるような目。
開けた居間には1人で使うには大き過ぎるコタツがあって、その中でぬくぬくと温まってすかーと気持ちよさ気に眠る女。
長い長い蜂蜜色の髪をぶわーっと広げて、大口開けて、それはそれは気持ち良さそうに寝ている。コタツに入っている所為もあって、この真冬の只中にありながら薄着だ。
「っつーか、突っ込むべきはなんでコイツがここにいるのかっつーことだろ」
「知るか。昨日勝手に来てコタツでみかん剥いてたぞ」
「っかしーだろそれ。コイツんちも結構忙しい筈だけどな。新年の花作りとか結構あるだろ」
最早呆れ果てた顔でその寝顔を見下ろすキバ。
確かにまぁアカデミー時代に女子生徒の中心で何をやらせても一つ飛び出て優秀、男子とも気負いなく話す凛としていた少女と同一人物とは思えない。
…まぁ、あの頃も文句は多いし我侭で、幼馴染の2人組を下僕の如く振り回していたわけであるが、それであれだけ人気があったのはある意味凄い。
なんせ美少女街道まっしぐらの春野サクラと並んでも全く見劣りしなかった。顔そのものの造作で言うならサクラの方が美人だろう。けれど、いのはセンスでそれを補っていたし、時折ドキリとるすような仕草を見せた。
サクラも確かに勝気で明るい、いのと同じような少女ではあったが、いの程分け隔てないわけではなかったし、空気が読めないというか、人の嫌がるようなことも割と平気で言うところがあった。いのとならじゃれあいの延長の喧嘩でも、サクラとなら本気の喧嘩になりかねないという、同じ類でも違う類。
もっとも、それが良いというヤツもいたはいたわけだし。
顔だけでサクラが良いというヤツもいたし。
大体あの頃は自分たちだって呆れる程に幼くて、バカみたなコトに一喜一憂していた。
だから、その頃の評価なんてもう全然意味がない。
「間抜けな顔してんなーこいつ」
「くっ。同感だ」
いわゆるうん○座りというやつで、いのの顔を覗き込んでたキバは、落ちてきた声に振り仰ぐ。
それで、男の顔を見て、一瞬、きょとんとして、次に吹き出した。
「お前、鼻伸ばしすぎ! きも! 気持ちわりー!! つかうける。マジうける!」
「なっ、おま、誰がこんなヤツに!」
「うわ自覚なし!? お前絶対むっつりだろ!」
「んなっっ!!!!! 誰がむっつりだ、誰が!!!」
「うーわーーーーむっつりが切れたーーー!!」
大爆笑するキバに反応したか、外から赤丸の騒ぐ声が聞こえる。
全く持って公害極まりない。
「そーよねーサスケ君ってむっつりなのよー。むっつりだしー奥手のおぼっちゃまー」
寝起きのぼーっとした感じの声。
ぎょっとして組み合っていた2人の男は眠っていた筈の女を見下ろす。まぁ、これだけ耳元で騒げば起きない方がおかしい。
蜂蜜色の睫をバチバチと往復させて、その下に隠れた水色の瞳に光が宿る。
結んでもいない長い髪を振りながら立ち上がった女。成長期を過ぎても伸び続けた身長は今では170近くある。つまりそれはサスケやキバと大して身長差がないということ。
ばさりと蜂蜜色の髪を翻して、にんまりと笑う目。にんまりとつりあがる唇。
「―――っっ!!!!!!!!!!!!」
「………………………おお」
ほんのちょっといのが爪先で立てば、サスケの顔に届く。
ぐい、と引っ張って、その口を乱暴に奪ってから、鮮やかに身を翻す女。呆気に取られながらもマジマジと観察してしまうキバ。驚愕と困惑と柔らかい感触とで一瞬放心状態に陥ったサスケ。
「へへー奪っちゃったー」
どこぞのCMみたいに言って、いのは満開の笑顔を咲かせた。
化粧の一つもしていない寝起きの女がひどく鮮やかで美しく見えるのは、一体どういうマジックなのか。
キバはくっくっと湧いてくる笑いに身を任せる。
いまだ唖然としている男にご愁傷様と心の中で言って、爆発的に吹き出した。
ああもう面白い。
つられるようにいのも笑う。
呆然とそれでも固まりっぱなしだった男の手を取って、その耳元に囁いた。
「初めてじゃないでしょー」
「っっ!!!!!!!!!」
「ふふーん。寝込みを襲うのは感心しないわねー」
「お前、いつから……っっ」
「さぁ? でも大分前よー」
くすくすと笑いながら、女は男の指に己の指を絡める。俗に言う恋人繋ぎとか言うヤツ。キバの冷やかし混じりの笑い声も耳に入らないくらい混乱して、サスケは赤くなった青くなったりを繰り返す。
本気で気づかれていないとでも思っていたのだろうか、といのは笑う。
幾ら油断しきっているとはいえ、眠っている間に近寄られたら気づくし、ましてキスなんてされたら目が覚めるに決まってる。
まぁこっそりと盗み見る男の顔が好きなので黙っていたが、いつまで経ってもそれらしい言葉も行動も見せないのでさすがに焦れていたのだ。
昨日だって必死で仕事を片付けてほとんど不眠不休状態で、サスケの家にもぐりこんだ。
男と女が一つ屋根の下にいるのだから、少しは甘い展開があってしかるべきだろう。
―――だと言うのに、男は相変わらずで。
まぁ、いの自身昨日は疲れ切っていて、サスケを見たら安堵して話もそこそこで寝てしまったのだが。でもまぁこっちがこれだけ必死になってるんだから、少しは甲斐性を見せて欲しいものなのである。
「あー笑った笑った。んじゃ、俺また後で来るから、頑張れよーいの」
「ありがとーキバ。この借りはいつか返すわー」
「期待できねー。胸のでかい女紹介してくれー」
「こんの巨乳好きめ」
「おう。男のロマンよ」
「ロマンのない胸で悪かったわねー…。もう、さっさと出てけっ!」
一通りキバと下らないやり取りをして、犬を払うように追い払う。またそれにキバは大爆笑しながらふすまを閉めた。
「それで、サスケ君ー? 私に何か言いたいことがあるんじゃないかしらー?」
「…っ。お前、色々不意打ち過ぎだ」
「何よー。それもこれもぜーーんぶサスケ君が悪いんでしょー。まったく。私そんなに待てないわよー」
だから、サスケの首に腕を回す。
真っ直ぐ見上げる黒い瞳。その黒い瞳の中に写る自分。
男の目に映るのは自分ひとり。
いのの目に映るのは男だけ。
ああ―――それはなんて幸福。
だというのに、ぎゅぅっと抱きしめられて見えなくなった。体が壊れそうなほど抱きしめてくるから、きっとまぁ心底照れていて、心底混乱しているんだろうと思う。
不器用な人間。
憎しむことに慣れすぎて、愛することを覚えなかった人。
「いの」
「ん、何かしらー?」
「…その…す、好き…だ、から、な」
「ん」
ぼそぼそと呟くその声がおかしくて、おかしくて、幸せでたまらなくて、いのは零れ落ちる涙を堪えなかった。泣き笑いの状態でサスケの胸に頭を押し付ける。
ああ、幸せだ。
だから来年は今年よりももっと私は幸せで。
来年はもっとサスケも幸せになればいい―――。
*砂兄弟とシカテマ。
「―――っっ。ちょっと待て我愛羅、まさかとは思うがこっちの書類…」
「―――そのまさかだ。年が変わるまでに片をつける必要がある」
「ああ、心底聞きたくなかったな。その言葉」
「…すまない」
「いや、いい。私達の責任もある」
心底嫌そうに書類を机の上から取り、勝手に持ち込んだミニ机に置く。現在折りたたみ式のミニ机は2台。言わずもがな、テマリとカンクロウの分である。
そもそも風影たる下の弟はようやっと人事やら政治手腕やらのなんたるかを弁えてきたようなそうでないような状況。とにかく人見知りする上に、ポーカーフェイスなのは良いが愛想笑い一つも出来ない厄介な風影を補助するのは、その表情の微細な変化に逐一気づける姉弟くらいしかいない。
全体的に砂は人手不足なので、本来必要のない雑務にまで風影やら、風影のご意見番たる姉弟2人が呼び出される。
はっきり言って自分で自分の予定がよく分からない混乱振りであるが、それでもまぁ何とかなっている。自分たちの師であるバキもひたすら走り回ってくれているし、なんでだか一線を退いた相談役のエビソウも積極的に手を貸してくれる。
そんなわけで、雑務はやけに上手くなった風影なのだが、書類整理ははっきり言ってつたない。
それはまぁ戦闘手段しか教えなかった上層部や、父親の責任だと認識している。逆にテマリやカンクロウは我愛羅のあれやこれやの不始末の処理に追われる時代があったので、そういうのは結構得意だ。でっち上げたり、誤魔化したりとか、そういうの。
だから役割分担的には、テマリとカンクロウがひたすらに書類わけして、我愛羅がひたすら印をつくということになる。
「うーぁーあーテマリー我愛羅ー…もう俺限界じゃーーーーん」
風影の執務室の扉を開くなりばったりと倒れふすカンクロウ。
青白くなった顔でずりずりとはいずって、それで、扉をチャクラの糸で閉める。
カンクロウは、彼ら兄弟の一族の親戚の集まりやら政治的繋がりのある会合やら、風の国のトップ周辺との対談やら、とにかくもう政治やらなんやらの部分をこなしまくっていた。
その顔には隈取などどこにもなく、父親たる4代目風影とよく似た面差しがある。その温かな濃茶の髪といい翡翠の瞳といい、カンクロウは本当によく父親に似ている。だからこそ、カンクロウが外交に一番適しているのだ。
そんなわけでカンクロウは今忍スタイルではなく、きっちりと決めたスーツ姿だったりする。忍の里でははっきりと浮きまくっている。
「こらカンクロウ、折角の一張羅を汚すな」
「っつーか肩が凝るじゃんよ! スーツとか最悪じゃん!」
「馬鹿お前、そのスーツ一枚でクナイ何本分だと思ってるんだ!」
「いやいやいや、テマリの振袖に比べたら全然安いもんじゃん!」
「なっ、風影の姉が安物の素材なんか使ってたらみっともないだろ!」
「それでも高すぎじゃん!」
「だからちゃんとリサイクルして質に入れてるだろ! 着物は同じの着てるとバレバレなんだよ! その点スーツは洗えば使えるんだぞ!」
「クリーニング出さないで洗うのも大変じゃん! それに着物はすぐに売るとテマリが着てたって知名度が上がんないから質に入れるの待ってって言ったじゃん! ちゃんとお披露目して見せて回ってから売るじゃんよ! 相場の2倍はふんだくれるじゃん!」
「着物着るたびに街練り歩けるか!」
「じゃあ写真撮らせろじゃん!」
「写真だってちゃんと撮ると高いだろ!」
「インスタントでいいじゃん! テマリの写真欲しいやつ一杯いるじゃん!」
「あーそういう人の恋人安売りするような真似は止めろ」
「「はぁ!?」」
声が重なる。
唐突に割り込んできた声は、ここにあってはならないもので。
思いっきり声の方を振り向けば、そこにはめんどくせーと今にも言い出しそうな顰め面。おなじみの黒い髪に黒い瞳。それで、慣れ親しんだ忍装束ではなくて、ザックリしたトレーナーにジーンズというなんともアバウトな格好である。今のカンクロウには羨ましすぎたりもする。
部屋の端と部屋の中央で舌戦を繰り広げていた姉弟を無視して、男は風影の前で膝を突く。
「ノックしてたんすけど、返事がないので失礼ながら勝手に入らせていただきました。失礼をお詫びします。風影様」
「ああ、奈良シカマルか。火影から話は聞いた。ゆっくりして行ってくれ」
「はい。それで、そいつはいつ空くんですか」
そいつ、と立ち上がったシカマルが示すのはただ1人。きょとんとしたまま見上げてくる砂色の髪の女。それと全く同じきょとんとした顔で見上げる男。
その表情の相似ぶりが面白おかしくて、ふつふつと笑う。
いい年してこの2人のやり取りはまるで子供そのものだ。ひたすら印を押していた我愛羅の方が余程大人。
もっとも、こうして戯れる相手がお互いしかいないこと前提であるからの結果だ。2人とも我愛羅相手だとどうしてもお姉ちゃんお兄ちゃん気質が前に出てくる。
「……年内に終わるように努力する」
「あーんじゃ、手伝いますわ」
呆然としたままのテマリとカンクロウを置いて、シカマルはミニ机へと向かう。そこにはまさしく仕分けを必要とする書類たち。
「ば、馬鹿! 木の葉の忍に見せられるか!」
「んだよ。いいだろ? どうせ来年からは砂の忍だ」
「「は?」」
再び姉弟の声が重なる。
さすがに我愛羅もおかしかったのか、ジワリと笑う。それらをどこか悪戯の成功した子供みたいな目で眺めて、シカマルはにやりと笑った。
「砂の忍になる許可がようやく下りた。しばらくは木の葉と砂の調停官だな」
木の葉と砂は良好な関係を築いている。
以前に比べてその国交も豊かだし、行き来も自由になっていた。
砂に木の葉の親善大使を、木の葉に砂の親善大使を、そんな話が出たのも当然だったのかもしれない。
もっとも、親善大使と言えども忍は忍。いつ裏切るとも知れぬし、互いの国の情報を流すとも限らない。
それで、彼らは本当にその里の忍となり、そこから祖国を思う。勿論そのために秘術を行い、絶対の契約を決める。かくして砂の忍は木の葉の忍に。木の葉の忍は砂の忍になるという寸法。互いに自分たちの国と戦いたくなければ、必死になって仲良くすればいい。彼らがそこにある限り決して戦争など起きぬように。
それになったのだと、シカマルはなんとも軽く言う。
「…ちょっと待て、私は聞いていないぞ、そんなこと」
「聞いたら反対するだろ。テマリは」
「当たり前だ! お前には家族も仲間も大事な弟分もいるだろ!」
「でも、このままだとテマリと結婚できないだろ。それでお前は別れるとか言い出しそうだったからな。先手を打たせてもらった」
「方法なら他にだってあっただろ! 私がそっちに行くかも知れないじゃないか」
「それはない。テマリがこっちに来ることは絶対ない」
はっきりと断言する。その表情は確信に満ちていて、テマリは混乱する。
シカマルはテマリが好きだ。
テマリはシカマルが好きだ。
それは今更確認するまでもないし、その気持ちだって負けず劣らずだって思っている。
だから、シカマルには出来るがテマリには出来ない、なんて言い方されても納得できる筈がない。
けれど、シカマルには確信があった。絶対にテマリには砂を捨てることが出来ないのだと。
その道を選ぶくらいなら自分と別れる道を選ぶ、と。
「なんで言い切れる…っ。私だって…」
「テマリがカンクロウと我愛羅を置いていけるわけねーだろ。それくらい俺にも分かる」
「―――っ!」
「それに、お前はクソ真面目だしな」
だからシカマルが来たのだ。反対されまくって、それでも無理言って通した。
最終的に頷いてくれた火影にはどれだけ感謝しても足りない。背を押してくれた人たちにも感謝しきれない。
「ほら」
そう言って、シカマルはテマリの腕を引いて立ち上がらせると、その左手の薬指に指輪をはめる。
木の葉のクリスマスシーズンに買った。どの道クリスマスは会えないと知っていたので、今日のために。散々仲間に冷やかされし、笑われた。趣味悪いとか貶されたりもした。でも、結局はアドバイスを散々くれたし、ちゃんと自分に任してくれた。
きらきらと輝く小さなダイヤモンドが一つ。それを両側から翼のように繋ぐリング。ダイヤモンドのカットは見事で、その色はほんの僅かに黄色を帯びている。それはまるで日に透けたテマリの髪のよう。
「結婚して欲しい。テマリ」
「―――ぁ、ば、馬鹿おまえ、こんな…ところでっ」
「カンクロウと我愛羅は大事な兄弟になるわけだからな。ちゃんとしたいだろ」
ま、めんどくせーけど、と付け加えて、シカマルはそれはそれは楽しそうに笑って見せた。その眉間の皺すら取れてしまったかのような、すっきりとした笑顔。
いつのまにかカンクロウは我愛羅の机に腰掛けて、我愛羅は椅子から立ち上がっている。姉の大事な瞬間を見逃すまいと言うように。
その目がやたらとにこやかなのは誤魔化しようがない。
真っ赤になって、テマリは指輪を撫ぜる。
迷ったのだろう。悩んだのだろう。それでもきっと、この指輪を買うコトを選んだ。
テマリにとっては突然のことでも、シカマルはずっと前から覚悟を決めていたに違いない。
だったら、その気持ちに応えることになんの躊躇いがあろうか。
ここまで覚悟を決めて自分を選んだ相手に対して、引くことなんて出来る筈もない。
「全く。…本当に呆れたやつだ」
「そらどーも」
「…ちゃんと幸せにしろよ?」
「ああ、当然だ―――」」
そっと、もたれてきたテマリを抱きしめて、シカマルは笑う。幸せを噛み締めるように。
パチパチという音。
我愛羅とカンクロウの拍手の音だ。
姉の幸せを祈って、2人の弟は手を叩く。
これまでどれだけ彼女に救われてきたのか分からない。どれだけ彼女に頼ってきたか分からない。
その全ての感謝を込めて、2人は手を叩く。テマリに、そして彼女を誰よりも幸せにしてくれる、奈良シカマルという男に。
大事な姉と、姉を預ける男に、最大の拍手を持って今年を終えよう。
来年はまた新しい日が始まるのだから―――。
*カカシと紅と子供。
ふっ、と庭先に現れた気配に紅は顔を上げる。
覚えのある気配、というよりも親しい人物のもの。
外に出迎えには行かず、少し待つ。
気配は何故だかほんの少し躊躇して、それから近づいてくる。
「―――よっ」
「ええ。久しぶりね、カカシ」
珍しい客人に笑って迎える。
「…ん。寝てるけどヘイキ?」
「このぐらいで起きるほどやわな子じゃないわ」
そう言って、紅は子供の額を撫ぜる。
まだまだ幼くて言葉も拙い子供。
猿飛アスマが紅にたった1つ残した大事なもの。
くせっ毛の黒髪。赤い瞳。
その顔立ちこそ紅のそれだが、性格は似ても似つかない。
やる気があるんだかないんだか、子供らしいと思えば子供らしくない。我が子ながら掴みにくい子であるが、アスマの小さい頃もそうだったのだろうか、と思えば楽しくなる。
「シカマル、行ったんだって?」
「ええ。未練たらたらだったけどね」
シカマルが最後まで気にしていたのはこの子の事。
家族よりも、友人よりも、幼馴染よりも、敬愛した師の息子の事をずっと考えていた。
「後悔を残した男なんて最高にかっこ悪いわ、そんなヤツ、この子の見本にはさせないわよ。なんて、ね」
「そりゃ行かざるを得ない、か」
くすくすと笑う紅に、なるほどとカカシは頷いた。
その目はひどく穏やかに友人の残した宝物を見守る。
「それに、シカマルが木の葉と砂の橋渡しをしてくれるなら、絶対に戦争は起きないわ」
「…ま、そうかもね」
「そうかもじゃなくて、そう。だって最高にかっこいいと思わない? 2つの国の平和を守る男よ?」
穏やかに笑い続ける紅に、それもそうかとカカシは頷く。
生き方そのものを誇れるような、そんなカッコイイ男にシカマルはなるのだ。
「それでカカシ、あんた何しに来たの?」
「ああ」
忘れていた、と、取り出したる一升瓶。滅多に手に入らないと有名でありながら幻の一品。
「任務先で頂いたんでね。一杯だけ付き合ってよ。どーせこれから行く場所に持っていったところで味わえないでしょ?」
紅は子供が生まれてから殆んどアルコールを口にしていない。朝から晩から子供の事に付きっきり。ゆっくりする暇など殆んどない。
驚き、目を瞬かせる紅に、一升瓶ごと差し出す。
焼酎好きの紅としては、喉から手が出るほど欲しかったものだ。
「いいわ。一杯だけ、ね」
くすりと笑って、紅はお猪口を取ってくる。2人分注いで、まるでグラスのように合わせる。
「何に乾杯?」
「シカマルの未来と、この子の未来に、でしょ」
「―――ふふ。そうね。そうだわ。ああ、それと、来年もよろしくね、カカシ」
「ああ、こっちからも頼むよ。紅」
そうしてお猪口を離して、最高の美酒を味わった。
*キバとサクラ
両手に荷物を掲げて歩く。マフラーでぐるぐる巻きにして首は温かいが鼻頭が寒いったらない。
雪でも降るんじゃないかと思って、空を見上げたら、あるまじきものが見えた。
空ではなく、木の上。
「キバ、あんた何してるの?」
あきれ果てた声に、キバは木の上から飛び降りる。木の下で待機していた赤丸が小さく鳴いた。
「おーサクラじゃん。シノの奴探してんだけどよー、見なかったか?」
「見てないわよ? っていうか、匂いで分かんないわけ?」
「シノの奴は無臭。ってか、蟲が居過ぎて蟲の匂いしかしねー」
「ああ…」
なるほど、サクラはしみじみと頷く。シノの生態は未だによく分からない。
その両手には布包みと買い物袋。
「お、もしかしてサスケんち行くところか?」
「え。…ああうん。その前にサイと合流する予定」
「へぇ、あいつと? あいつ未だに俺掴めねー」
「結構いい奴よ。ムカつくけど」
「ムカつくのかよ。…んじゃ、俺もそろそろ行くかな」
「え? あんた何も持ってないじゃない」
「ああ、置いてきた」
「はぁ?」
何それ意味わかんない、と雄弁に語る目をごまかして、キバはふと思ったことを単刀直入に聞く。
「おまえさ、もうサスケのこといいのか?」
「―――…あんた、最悪」
「はぁ!? なんでそうなるんだよ」
「あーもう。最悪。どーせ私はいつまで経っても独り者よ! お母さんには結婚しないの? とか言われるし、友達は結婚しちゃってたりするし! シカマルは結婚しちゃうし! どーせ私は彼氏の一人も出来ないわよしゃーんなろー!!!!!!!」
「………」
地雷を踏んでしまった、とキバは身を引く。
というか、一つ年上のネジたち三人組だって全然結婚とかそういう気配ないし、別にまだいいだろ、とか思う。
それに、キバの姉もまだ結婚してない、というかする気がないというか何というか。
キバにも定まった恋人の一人もいないわけだし、忍には結構結婚願望が欠けている気もする。
サクラのいう友達だってとっくに忍を脱落した者達だ。
「キバ、あんただってヒナタはどうしたのよ」
「あのバカップルに割り込むつもりはねーよ」
それはキバにとって至極当然のことだから、言葉に淀みはない。
キバがヒナタを好きだったことは、同期のほとんどが知っている事実だ。それだけキバの態度はわかりやすくて、そしてそれ以上にヒナタの態度は分かりやすかった。見事なまでの一方通行は、いつしか変わってしまって、キバだけが残された。未練は山ほどあった。気持ちすら伝えられなかった。それでも、あの2人の笑顔には勝てなかった。あの笑顔を曇らせたくないと思ってしまったから、その時点でもうキバは負けだ。
けど、サクラの場合は違う。サスケが帰ってきてからもしばらくは果敢にアタックしていたようだったし、未だにサスケと聞くと反応する。
「おまえはどーなわけ?」
「サスケ君? ふん。もっといい男なら幾らでもいるから拘んないわよ! それに、振られていつまでも想い続けるほど女々しい女じゃないわよ私は!」
あんまりにもそれがあからさまな強がりだったので、つい笑った。
それにしてもいつ振られたのか、全然知らなかった。
もうサスケといののやり取りは終わっただろうか?
終わっていなかったらとんでもない修羅場になりそうだ。
「サイとはどこで待ち合わせだよ」
「…あんたムカつく。サイは途中で拾うわ。今日の参加者って私、サイ、あんた、サスケ君、いの、シノ、ナルト、チョウジの他はどうなってるの? 詳しく聞いてないんだけど」
「あーヒナタとハナビはナルトと木の葉丸次第だな。シカマルは来ないだろ、カカシと紅せんせーは微妙だな。ガイ先生だけは勤務だと。あとネジさんにテンテンさん、リーさんは来るって言ってた。木の葉丸チームも参加。後は…あーとりあえずカンちゃんは来ねーな」
「というか砂は無理に決まってるでしょ。何? 木の葉丸も日向に行ってるの?」
「ん、なんか木の葉丸がハナビに一目惚れしてアタックを繰り返しているとか何とか」
「何それ」
「あれは笑えるぞ。下忍時代のうずまきナルトと春野サクラそのものだ」
「げ」
心底嫌そうに顔をしかめたサクラに、キバは笑う。
あの時代はいろんな意味で思い出すも恥ずかしい。
それはキバも同様。笑ってしまうほどに粋がっていた時代。
恥ずかしいけど、それでもあの頃は本気だった。一所懸命だった。必死だった。
「あーあー皆幸せそうでいいわねー。全く、今年のクリスマスときたらむなしいにも程があったわ」
「あーあれな。空しかったな。独り者の集まり」
「来年は、絶対良い男捕まえてやるわ…!!!」
断言して拳を握るサクラ。
その握力で捕まえたら死ぬから止めておけ、とはさすがに言わなかった。誰だって命は惜しい。
相手のいない2人組はそうして自然空を見上げる。
遠くに待ち呆けるサイの姿があった。
その姿が妙に子どもじみていて、自然笑った。
「初詣の願い事は、彼氏が出来ますようにに決定だな」
「あんたは、彼女ができますように、でしょ」
口で言うほどサクラは焦っていないのだとキバは知っている。
キバもそこまで焦っているわけではない。好きになるときは好きになるだろうし、それから考えればいい。
とりあえず、独り者同士集まって騒ぐのもそんなには嫌いじゃなかったりもするのだ。口には出さないけど。
来年はまぁ、彼女彼氏が出来れば文句はないわけだけど。
サイを回収後、サスケの家の前に立ちながら、そうキバもサクラも笑った。
*オールキャラ?
サスケの家の中はまぁものすごい惨状である。
結局日向のお嬢様2人組もやってくることが出来て、広い部屋は食べ物が散乱している。皆が皆持ち寄りだったので酒もつまみも料理も何でもありだ。おにぎりとから揚げが以上に多いがあっという間に売れていった。なんでかケーキとかチョコレートとかお菓子も散々ある。甘い匂いとアルコールの匂いがプンプンしている。誰か吐いたのか微妙にすっぱい感じ。まだアルコールを飲めない未成年者たちがこの惨状にかなりびびってる。まぁこればっかりは飲めるようにならないと分からない楽しみである。
アルコールに弱い者達は既に屍のごとく。
一番最初に潰れたのはリーで、その際散々暴れてくれたので集団で押さえつけた。いい組み手になったと満足げなアホが数人。
サクラも暴れるだけ暴れて即効で寝た。見事な潰れっぷりである。
何でかご機嫌だったサスケがアルコール度の強い焼酎をパカパカあけていて、半眼でぶつぶつ言っていたが既に屍と化した。
満面の笑顔でそれにいのが落書きしてたりとか、ナルトが加担してたりとか、まぁすごい状況。
チョウジは何故かネジ相手にシカマルの事を語っている。シカマルが結婚するのが寂しいらしく、酒を飲んでそれがものすごく前面に出ている。多分誰に絡んでいるか分かっていない。そしてネジも、誰に絡まれているのかさっぱり分かっていないに違いない。
テンテンは紅やカカシに絡んで、連れてこられた子どもにほろ酔い状態で占いをしていた。
木の葉丸はチームのメンバーと共にハナビにすごい勢いで絡んでいる。まるで酔っ払いの一員だ。
ハナビは素っ気無い態度だが、どうにも満更じゃないところが昔のナルトとサクラとは違う。ハナビには同世代の友達があまりいないのだと、ヒナタが言っていた事があるから、それも関係しているのだろう。
シノは一人無言で飲んでいるが、時折乱闘になりかけているのを止めたりしている。まさしく年長者の風情である。こういうときに一番騒ぐガイがいないのは幸いだったのだろうか。
サイが酔っ払った挙句にいろいろなところに直接落書きしているので、サスケの目が覚めたら真っ先に被害にあうだろう。その次はナルトだ。なんせ今のサスケの顔すごいし。
ヒナタはふらふらして目もとろんとしているがなんとか意識を保っている。
だから。
「ヒナタ、幸せか?」
なんとなく聞いておきたかったことをキバは聞いた。
応えは分かりきっていた。
分かりきっていたけど聞きたかった。
気持ちを伝える事もできなかった。
好きだと想い続けた気持ちはそのままここに残っている。それはもう、恋などと激しいものではなく、慈しむような、ただ一心に注ぐ愛情。おそらくそれはシノも同様だと思う。これはきっと保護者が注ぐような、恋愛とは違う愛情。大事な大事な仲間にそれを用いるのは少し違うが、きっと下忍第8班はそういう関係だった。ヒナタを守る事が大事で、それが中心で、俺とシノはただ彼女と居たくて、そのうち彼女を取り巻く全てが好きになった。
眠たそうな目を何度か往復させて、ヒナタはキバの言葉にゆっくりと頷いた。
「うん。幸せ。皆が、いて、すごく、すごく幸せなの。だから、だからね、ありがとう、キバ君」
ああ。
それは、何よりもありがたい言葉だ。
シノにも伝えよう。
紅先生にも伝えよう。
そう。幸せだ。
彼女だけじゃない、俺も、俺達も、あいつらも、砂の奴らも、誰も彼もが幸せなのだ。
だから願おう。
来年は彼女に、そしてこの気のいいヤツらに、もっと多くの幸があらん事を―――。