『温もり』 その温もりを感じるようになったのがいつだったのか、シカマルは覚えていない。 あまりにもその温もりが気持ちよくて、その正体が純粋に知りたくて、うっすらと目を開けたら、その温もりは雪のようにはかなく消えてしまった。 それが嫌だったから、シカマルはそれからその温もりを感じても目を覚ますことをしなくなった。 温もりはとても優しくて、シカマルの額や髪をゆるゆるとなぜる。 時に傷跡をなぞり、時に衣服を正してくれる。 今闇月はどんな顔をしているのだろうか。 あの冷たい無表情? 人をなんとも思っていないような見下した表情? 火影に厄介ごと押し付けられて困惑した表情? それとも火影に時折見せる無防備な表情? シカマルの知っている闇月の顔がいくつもいくつも浮かんで消えていく。 闇月が笑っていた。 冷たい冷笑ではない。 柔らかく柔らかく、とても暖かく微笑んでいた。 恐らくは本人すら自覚のないかもしれないその表情。 闇月に頭をなぜられているシカマルはとても気持ちが良さそうに寝ていて、その、思いもしなかった光景に、火影は驚いてつい声をかける。 「闇月」 「っっ………何ですか? 火影様」 慌てていつもの表情に戻し、いつも通りを装う闇月に、火影は吹き出す。 「いや、なんでもないのぉ」 「………さっさと行きますよ」 くつくつと笑いながら、早足の闇月について行く前に、火影は呟く。 「邪魔して悪かったのう」 居心地の良い時間に邪魔されて不機嫌オーラを出しているシカマルに向かって、とても、とても楽しそうに笑いながら。 |