日向家長女と狐のあやかし
『ナルト』
「ナルト、おいで」
呼び声に、くるんと1回転して、駆け出した。
大好きな人。
名前をくれた人。
真っ黒な髪の毛。
乳白色の特殊な瞳。
「ごしゅじんさま」
金色の髪、隙間からのぞく獣の耳。
きらきらと輝く澄んだ青い瞳。
ズボンに隠れたふわふわの尻尾。
がば、っとヒナタに抱きついて、そのふくよかな胸に頭をうずめて、ぬくもりを感じて大満足。
抱きつかれて、受け止めることが出来なくて、倒れこんで、金色の髪をなぜる。
「私はヒナタ、って呼びなさいと言わなかった?」
「いった!」
まだまだ獣のあやかしとして子供なナルトは、言葉がつたない。
「なら、どうして?」
「ねこのおねぇちゃんが、しかまるをごしゅじんさまっていってた」
だから真似してみた。
シカマルが呼ばれて笑ってたから。
シカマルは日向ではないが、あやかしを使役する奈良という特殊な家柄の人間だ。
日向は導きを与える。
奈良は使役する。
「私はナルトのご主人様じゃないからヒナタでいいの」
「ひなた」
にっこりと笑ったナルトが可愛くて、長く伸びたままのナルトの髪をくしゃくしゃにする。
ぎゅう、と抱きしめたら、とても嬉しそうに抱きついてくる。
「ひなた、だいすき!」
「………」
赤くなったヒナタの頬を、ナルトが不思議そうに見て、ぺろんと舐めた。
白い牙がちらりとのぞく。
「っっ!!ナルト!?」
「あかいとあつい」
だから冷やすの。
あっけにとられていると、今度は反対側の頬を舐められた。
くすぐったくて、笑ってしまった。
「ナルト、大好き」
ナルトの言い方を真似て、言ってみる。
今度はナルトが赤くなって、ヒナタを見上げた。
おや珍しい。
「なんかあつい」
うん。真っ赤だもの。
金色の子供。
携帯のあちら側から連れてきた小さな狐のあやかし。
可愛い可愛い私の迷い子。
2005年10月10日