うちは家次男と蛇のあやかし
『蛇』
「あらー意外。そこそこ強いのねー」
あやかしをいくら斬っただろうか?
普段ならば調伏するのだが、今はその暇もない。
ただただ一心にあやかしを斬りつづける。
次から次へと現れては襲ってくるあやかし。
いい加減にきつい。
笑いながら自分を観察する蛇のあやかしを睨みつけて、肩で息をする。
この女の手ごまもいい加減少なくなってきているはずだ。
これは体力勝負。
うちは家の男としてあやかし相手に引き下がるわけにはいかない。
ギン、と睨みつけた蛇のあやかしは、淡い金の髪をさらさらと流してにっこりと笑う。それはまさしく魔性の笑み。
「ねぇ辛い?苦しい?疲れた?」
くすくすと笑いながら、女は右腕を上げる。小さな水滴が手の平の上に幾つも浮かび上がり…弾けた。
否、砲弾となりて襲い掛かってきたのだ。
ほとんど見ることも出来ないようなそれらを交わそうと一瞬考えるが、無謀と思い刀を構える。うちは家の人間は戦闘に優れ、魔法がかった能力を扱う事が出来るが、それには時間が必要だった。今はもうその力を使う時間も力も残ってはいない。
「っつ!!!」
幾つかの砲弾を刀で弾き飛ばし、けれども多量の弾はサスケの体を貫く。
「前に、うちはの男と戦ったことがあるわー。貴方とそっくりの、男」
笑いながら、歌うように話す蛇のあやかし。
うちはの男。自分に似た男。
小さな符丁に、サスケは青ざめた。
―――まさか。
「あの人、よりにもよって蛇のあやかしを従えていたわー。ピンク頭の、可愛いー可愛いー女の子」
間違いなかった。
薄い、桜色の髪をした、可愛らしい蛇のあやかし。一途に主人を慕っていた、サクラ、という名の…。
「あの子、うちはの男にべったりで、面白かったわー。気高い蛇の身でありながら、あそこまで堕ちた女がいるなんてねー」
くすり、くすり。
笑い声が、悪意をもってサスケの体に突き刺さる。
もう、体が動かなかった。
「貴方なら、知っているんじゃないのー?あの2人ー」
「…………な、んで…」
「ふふ。あんなに楽しい戦いは初めてだったわー。もう一度くらい、戦いたいじゃないのー」
「……し、らない…」
―――そうだ。
こいつは、知らないのだ。その男とあやかしの行方を。だから自分にこうして聞いてくる。
それは、こいつと戦って彼らが行方知らずになったということ。
それは、こいつと戦って彼らが死んだというわけではないこと。
(…むしろ…こっちが知りたいくらいだ、ってーの)
膝が地についた。ついで、肩から崩れ落ちる。
限界だった。
「…遊びすぎちゃったかしらねー。怒られちゃう」
女の声が、耳に纏わりついてうるさい。
けれどそれすらすぐに聞こえなくなって…。
サスケの意識は完全に暗闇の中へと埋没した。
2006年08月09日
サクラは最初何も考えてなかったけど、ま、いのと一緒で蛇でいいかなーと思って。
うちは家長男と行方不明中。