『修羅場』







「…テマリ…手馴れてるな」

　ナルトの緩やかに動く手に応えながら、テマリは何でもなさそうに首を傾げる。
　梳いた髪が緩やかに揺れた。

「そうか？まぁ年上だからな」
「そう言うこと聞いてんじゃなくてさー…。分かってるだろー？」

　ナルトはひどく無邪気な笑みを浮かべて、テマリの頬に口付けを落とす。

「…お前は殺しに行きそうだからな」
「分かってんじゃん。何？殺されたくないってことは親しいやつら？」
「…まぁ親しかったな」
「かった？」
「ああ。まぁ、もういいだろう。教えてやるよ」
「だれだれ？」
「風影だ」
「………………………はっ？」
「我愛羅とカンクロウの父親で、私の父親でもあるな」
「………」
「私に忍の全てを仕込んだのは風影だ。色もそのうちの一つ」
「…………そ…っか」
「何だ？そんな顔をするな。別に死ぬほど嫌だったわけではない」
「………それはそれで複雑」
「そうか……手馴れた女は嫌いか？」

　指をナルトの頬に滑らせて、人差し指で下顎を支える。
　ナルトはそのテマリの手を掴んで、にっ、と笑う。

「まさか。テマリはテマリだ。手馴れてようとそうでなかろうと好きに決まってる」
「…お前…女殺しだなー」
「テマリにだけだって」
「惚れっぽいくせに」
「一番はテマリだって」
「一番…か。だから浮気はするのか？」
「……………………………はぁぁぁ!?」
「"うずまきナルト"は"春野サクラ"が好きなんだろ？」
「だっっ!!!っちゃ〜〜〜〜〜。誰がそんな事を!!!!」
「シカが言っていた」
「あ……んにゃろ〜〜〜!!!!!」
「たまにはお前も修羅場を味わいやがれ、という事だ。ヒナも咬んでるぞ」
「―――――ヒナ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…!!!!!」

　深い深いナルトのため息に、テマリはにっ、と笑う。

「味わったか？修羅場ってヤツだ。これが」
「………お前……なんでそんなに冷静なんだよ……」
「ふふん。お前の居場所は此処だと知っているからな」

　勝ち誇ったようなその笑顔。

「………テマリは男たらしだ」
「いいカップルだろ？」
「ああ―――…そうだな―――」

　にっこりと、互いに笑んで、２人、温かに身体を合わせた。