『我慢の限界』
「…っっ!!バカっ!!!き、嫌いっ…大っ嫌い!!!!」
そう言ったっきり顔を真っ赤に染め上げて、脱兎の如き勢いで…当然の如く下忍の速度を越えた速さだったりする勢いで、愛する少女の姿は見えなくなった。残された人間は、ぽかんとそれを見送って、やがて、ぎこちなく原因となる人物の元へ視線をよこす。
その原因たる人物…うずまきナルトは、少女の言葉に激しいショックを受けたようで、呆然と、自分の手を眺め見た。ついさっきまで、少女の温かで柔らかな手を握り締めていたその手の平。残された温かさが今はただ空しい。
そりゃあ―――悪かったと思っているさ。
心の中で、そう毒づいた。
でもさ。俺だって男だし?可愛い可愛い大好きな少女が他の男に触られたりしてんのは無茶苦茶ムカつくし?そりゃあ演技のためには必要以上にうずまきナルトとの接触は出来ないだろうけど。そんな"うずまきナルト"を見るたびにキバとかシノとか紅とかの後ろに隠れたりしなくったっていいじゃないか。大体ここ最近暗部任務も一緒じゃないしさ。下忍任務も暗部任務も滅茶苦茶忙しくて毎日毎日ふらふらだってのは分かっているけどさ。
「…ふ」
「…ナルト…?」
どこか凄みのある笑顔を浮かべた少年から、下忍仲間は全力で後ずさった。
「やべぇ…アイツ…切れやがった…」
「あーやっぱり?」
「ま、気持ちは分かるけどねー」
こそこそと囁きあう3人の下忍。10班メンバー及び暗部班第3班のメンバーは呆れた息をつく。
「なんだよ。別にいいじゃんかヒナタのケチ。ヒナタのバカ。俺だってヒナタに触りたいし独占したいし滅茶苦茶にしたいし…………だから」
なにやら不穏なことを言い始めたナルトに、10班メンバーは顔を見合わせて強力な結界をはる。
だって、もう無理だ。
こうなったコイツはもう止められない。
ぴりぴりとした気迫が結界を揺さぶった。何も知らなかった下忍達は、呆然としてナルトを見つめる。
「…………だからキスするぐらいいいじゃん」
「「「それが2人っきりのときならなっっっっ!!!!!!!!!!!」」」
3人の突っ込みはありがたくも聞こえなかったようで。
木の葉の森が一部がごっそりとクレーターになったその事件は、そうして引き起こされたのだった。
「………んで、何がどうなってるわけ」
「………さぁ」
「とりあえず、誰かヤツを止めたほうが…」
「だよ、な?」
呆然と呟く下忍4人を10班メンバーはげっそりと見て、止めれるものならとっとと止めているとか、っていうか後始末めんどくせーとか、色々考えたらしいが、それはそれとして。
「だから、ヒナタが相手にしてくんないしさ、ずっと会えなかったしさ」
だからだからとさっきから繰り返す金色の少年に、日向ヒナタは大きな大きなため息をついた。
「あのね、ナルト君。私だって寂しかったし凄い会いたかったし…さ、さわりたいっ…とか思ったし…でもだからってあんな人前であんなことしないでもいいでしょう?」
顔を真っ赤にして怒る少女に、ナルトは上機嫌全開の笑顔で迫った。
「あんなことってこんなこと?」
「…っっ」
息を呑んだヒナタの唇にナルトの唇がピッタリと合わさって、一瞬真っ白になったヒナタの動作は完璧に止まって、その隙にナルトが思いっきり体を抱きとめていたりとかして。
「ほら、人前じゃないし?ヒナタも俺にこうして欲しかったんだろ?」
口の減らない少年に、ヒナタは呆れるだけ呆れて、その抱擁を受け入れた。
「…人前なんだけど」
「ナルト、絶対気付いてるわよねー…」
「ナルトだしねぇ…」
その声を聞くものは、世を儚んで意味不明の言葉を呟いている4人の下忍しかいなかった。
2006年6月3日
勢いしかないスレナルヒナ。
ジブリ版ハウルをようやく見た後、原作ハウソフィサイト様を巡ってたらなんとなく出来ましたuu