『ほっぺたの誘惑 〜ナルト〜』
「ナルト」
「ん?」
「好きって言って」
「スキ」
「じゃあ愛してる」
「アイシテル」
「………」
あ、拗ねた。
もともと表情に乏しい能面顔がつまらなそうに引きつってる。
可愛くはないな。
でも、愛しくはある。
なんで女ってのは言葉が欲しいかな。
俺はヒナタ以外に欲情なんてしねーし、ぺらっぺらの告白なんて演技でしか出来ねーってのに。
ああ、でもあんな薄っぺらな言葉でも案外人は信じるんだよな。
うずまきナルトは春野サクラが好き。
演技のときは当然の事実。
―――…。
そうだよな。
人間なんてけっこー馬鹿で、言葉一つに惑わされるもので。
「ねぇヒナタ」
「何」
「その遊び、他の人にもした?」
「するわけないじゃない」
コンマ0できっぱりすっぱり返事が返ってきた。
キバとかにそんなことしたら、あいつ絶対勘違いするだろ。
「なら、いい」
「は?」
あれ?
勘違いしたとこで別に俺に影響はなくね?
ヒナタは変わらない表情のまま首を傾げてる。
ああ、それは可愛いな。
………。
なんかすっきりしない気もしなくもない。
ないのだが、それ以上考えてもつまらない気がしたので、本に戻る。
内容はまぁつまらないもので、人間の行動心理的なものがつらつらと。
あんまり興味はないが、演技のときにぼろがでないためにも読んでおいた方が身のためだろう。
と、文字を追っていたら、横からにょきっと白いものが生えてきた。
頬に柔らかい感触。
頬の全面が張り付くようなもちもちした感じ。
自分よりも低い体温がひんやりして気持ちいい。
要するにヒナタの頬がおれの頬と引っ付いてるってことか。
なんだそれ。
何この状況。
俺誘惑されてる?
「ヒナタ」
「何?」
「これ襲っていいっていう合図?」
「んー」
なんだそのどっちつかずな返事は。
って、耳元で笑うなくすぐったい。
背筋を這う電撃のような震えは意図的に無視。
―――っっ。
この、馬鹿っ。
考えてねーな。確実に。
頬に唇が当たる。
猫がするみたいな甘噛み。
カプリと頬を挟まれて吸われる。
熱い吐息とともに舌先があたった。
ぞくり、と走る快楽の震え。
やばい。
今、確実に、スイッチが入った。
本でヒナタの頭を軽く叩く。
本自体が結構分厚いからいい音がした。
「痛いんだけど」
「ヒナタが悪い」
「えー」
本でヒナタの顔を隠したまま、その頬をつねる。
お前、こっちの気持ちも少しは考えろ。
そーいうことされてばっかりだと身がもたないっての。
本を手放して、ヒナタの頭を固定。
いつも思うけど頑固でまっすぐな、さわり心地がやたらいい髪だ。
距離を詰めて、ヒナタの口を封じ込める。
ヒナタの白い目に、俺がどアップで写っているのを見るのはあんまり好きじゃない。
少ししか開いていなかった唇に、舌をねじ込んで奥まで伸ばす。
初めてのごちそうにがっつく子供みたいに、ヒナタという食べ物を余すところなく味わう。
人間なんて所詮獣と一緒だ。
乱暴に貪って、味わって、交わりあう。
「ん…」
唾液を何度も何度も交換する内に、息は荒くなって、ヒナタの口から零れた音と共に、口の端から唾液が零れ落ちた。
背中を叩かれて、ヒナタから離れる。
乱れた呼吸を整えながら、唾液を拭うヒナタは能面顔とは程遠い。
真っ赤に染まりきった頬は、よく熟れたリンゴのようで、食べられるのを今か今かと待っている。
また、スイッチが入る。
どこまでもどこまでも堕ちる、欲望のスイッチ。
「ナルト、まだ昼だよ」
「スイッチ入れたのはそっち」
ヒナタの目に写る俺は、完全に欲情したオスで。
俺の目に写るヒナタは、完全に欲情したエサだ。
だったらすることはもう一つしかないじゃないか。
まぁどうせ昼は任務は休みだし。
―――おいしく頂きます。
2011年11月19日
ナルト視点で更に甘ったるく。