『約束』






「シカマル」

「…ああ。お前か」

 ひょいと、庭先に現れた女に、シカマルはいつものままの仏頂面を向けた。

 本当はものすごく待ち望んでたりしていたのだが、そんなことは顔には出さない。

 シカマルの仏頂面はいつものことなので、女は気にしない。

「久しぶりだな」

 と、近づいてきたが、唐突にシカマルに腕を掴まれて、不思議そうに眉を潜めた。

「どうだ?」

 シカマルが嬉しそうに目を細めている。

 何が?と言いかけて気付いた。

 目の前の男の顔、昔は、見下ろせるほどだったが、それが少しだけ自分よりも高い位置にある。

「約束、覚えてるよな」

「………」

「俺のほうが身長高くなったら、付き合ってもいいって言ったよな」

 シカマルのそのどこか悪どい笑みに、女は苦笑した。

 頷くよりも先に、ひどく近くなったその顔に唇を落とした。

「テマリ…」

「何だ?」

 くすくすと笑うテマリに、シカマルは仏頂面を更に深めてその唇を奪った。

「俺からさせろ」



 女からされてばっかりじゃ情けねぇっての。



 その小さな呟きに、テマリが笑った。
 
2005年4月3日