『風の行方』








「…行った?」
「行ったよ」
「…見送らなくて、良かったの?」
「…うん」
「会えると、いいね」
「…そうだね」

 視線はそらさず、2人は小さく笑った。
 思い出すのは、砂色の髪を持つ人。
 嘘が得意で、里が好きで、家族が大切で、自分達を見守ってくれた、とても優しくて強い人。

「会えて、嬉しかった…」
「俺も」

 里を抜けたとき、もう二度と会えないだろうと覚悟していた。
 けれど何年もの年を経て、彼女はまるで風のように自然に、当たり前のように、決まっていた事のように村を訪れた。
 本当の名前で、昔の事を語る事は出来なかったけど、昔から変わる事のない笑顔を向けてくれた。楽しそうに、旅の最中の出来事とか、薬についてとか、自分達の生活の事とか、色々な事を話して、笑っていた。
 それを見ているだけで、自分達も、幸せだった。
 自分達ばかり逃げて、あの人はまだ昔と同じ場所で戦っていた、その後ろめたさはあったけれど。

「イタチと、テマリ、こんなんだったら、もっと早くに会えれば良かったのにな」
「…そうだね。でも、まさか2人がそうなるなんて思いもしなかったよ」
「それは俺も…なんか、でも、すっげー良い雰囲気だったよな。お互いそこにいるのが当たり前ーみたいなさ。なんか通じ合ってる感じ」
「そうそう。やっぱり、長男長女のテレパシー?」
「あーなるほど?」

 よく分からない事を言いながら首を傾げて、2人で笑い合った。
 心配事の種が一気に解消して、2人ともかなり喜んでたりするのだ。
 イタチはナルトとヒナタの事ばかり気にして、自分の事には全く目を向けようとしなかったし。
 テマリは今幸せなのか、元気にしているのか、砂里はどうなっているのか、全然知る術もなかったし。

 笑って、笑って、多分頬に流れる涙は嬉し涙で、ああ、幸せだと、2人は笑った。

「会えるよね」
「うん。きっとね」
「多分、だね」
「うん。だって、風の行方なんて、誰にも分からないもの―――」

 笑った少女に答えるようにして、あたたかな風がふきつけた。
2007年5月15日