ハロウィンの騒々しい朝
「トリック・オア・トリート!!」
「いきなり何言い出すんだお前らは」
ドアをくぐるなり飛び出したその台詞に、彼は嫌そうな顔をしてそう言い返した。
「いや、10月だろ?10月といえばハロウィン!!」
「俺たちのための行事ってやつだよなー」
「普段の姿で街歩いても騒がれないもんなー」
「なーっ!」
浮かれて騒ぎまくるそいつらは、天井やら壁やら思い思いの場所に陣取って、歌い始めた。
「ハロウィーン♪ハロウィーン♪」
「騒ぐな、騒々しい」
相手をしていたら学校に遅刻する。
彼はそいつらを無視して朝ごはんの準備を始めた。
そんな彼を、ぐるっと取り囲む面々。
「まぁともかく、菓子くれ菓子」
「何言ってんだよ、純正ガイコツのくせして」
彼に話しかけたそいつは肉を持っていなかった。
骨だけ。
「ガイコツ言うな、スケルトンだ」
どこから声を出しているのかは分からないが、喋るたびに顎の骨がカタカタと鳴る。
「同じだろーが」
「微妙に違うんだよ。とりあえず菓子くれ菓子!」
「お前食べる意味ねーだろーが」
骨やらふわふわしたシーツやらで出来た体を持つモンスターに、お菓子が必要とは思えない。
「気分だよ、気分!」
「ともかく菓子はない」
こんがり焼けたトーストを牛乳で流し込む。味気ない朝食だが、一人暮らしの彼にはいつものことだ。
「じゃ、イタズラな」
ぼそっと呟かれたその台詞をとくに気に留めないまま、いつものように仏壇に向かって手を合わす。
ふっと見上げたその目にうつる、ホトケの代わりにジャック・オー・ランタン。
目と鼻と口をくり貫かれたカボチャが彼を見下ろして笑っていた。
「お前らー!仏壇にカボチャを飾るな!宗派が違うだろ宗派が!」
「えー、いいじゃん。お供え物だろ?」
「目と口が開いててしゃべるヤツはお供え物とはいわねぇんだよ!」
言ったそばからケケケッ、という笑い声。
「まぁいいじゃん、かてえこと言うなよ」
そう言うモンスターたちの目はイタズラが成功したという喜びにあふれていた。
昨日の夜中から皆で一生懸命削ったかいがあったというものだ。
「さあ!近所に菓子もらいにいくぞー!」
「おー!」
上がったテンションそのまんま、モンスター達はどやどやと出かけていった。
「やべぇ…遅刻する!」
唖然として彼らを見送った少年が我にかえったのはその約10分後。
慌てて駆け出していく、そんな彼のお家はお化け屋敷。
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